秋の章
第45話 秋の章(1)
《十一月二十四日 月曜日 曇りのちしとしと雨》
怒涛の夏が過ぎ、日に日に肌寒くなってきた此の頃は、花壇の花たちよりも樹木の色付きに目を奪われることが増えた。
学校をぐるりと囲うように植えられているイチョウの木は、目を見張るような黄金色になり、校内では、紅葉が燃えるような赤に染まっている。そのコントラストが美しい。
通学路にも紅葉やイチョウの木があり、それぞれに秋の色合いを見せているのだが、学校の樹木の色付きに勝るものはないと、目にするたびに誇らしい気持ちになる。
こんな素敵な景色が見られるのは、
それでも、少しは私も手入れを手伝っている。まぁ、
早く
最近ようやく、園芸鋏から細い枝を切るための鉈に使える道具が昇格したくらいなのだ。まだまだ先は長い。
そんなことを思いながら肩を落としつつ、切り落とされた枝をゴミとして袋に入れるためにさらに短く切っていると、背後から軽快な足音が近づいてきた。
「おーい。白野」
振り返ると、青島くんがこちらへと駆けてきていた。作業の手を止め、息を弾ませている彼へ向き直る。
「どうしたの?」
「うちのじーちゃん、いる?」
「
少し先の脚立が立てかけてある大きなイチョウの木を指し示すと、青島くんは、そちらの木へ歩み寄り、少し声を張り上げた。
「おーい。じいちゃん。母ちゃんが急用できたから帰って来いって」
青島くんの声に応えるように、木の上で作業をしていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます