第3話 ~エピソード0~ 1

 見渡す限り白い雲と青い空の広がる庭園ガーデンで、唯一緑の葉を青々と茂らせ天高くそびえ立つ大樹『リン・カ・ネーション』。大樹は、一年中蕾をつけていて、一日に一つ、ベルの形に似た白い大きな花を咲かせます。


 未満天使であるNoelノエルたちは、このベルの花から生まれてくるのですが、ベルの花から生まれるNoelノエルの体の大きさは、決まっていません。下界人げかいびとのように、皆が赤ん坊の経験をするわけではなく、赤ん坊であったり、子どもであったり、成人であったり、老人であったりと、Noelノエルとして生まれ落ちるときの姿は様々。子どもや成人の姿で生まれたNoelノエルの中には、その後、下界人と同じように体が成長し、歳を重ねていく者もいます。


 Noelノエルの見た目は下界人とほとんど同じです。わたくしたち天使には、下界人がイメージする通り、羽根があり、金の環が頭上で輝いておりますが、それは、立派に天使へ成長した証。未満天使であるNoelノエルにはそれがありません。


 見た目は下界人と変わらないNoelノエルですが、彼らと下界人とでは、大きく異なるところもあります。それは、Noelノエルには感情がほとんどないということです。怒ることも、楽しむことも、悲しむこともありません。ただ、喜ぶことはほんの少しだけあります。


 感情のほとんどないNoelノエルたちは、お互いに干渉しあうことはほとんどありません。それでも、日々新たな仲間を迎え入れることは、彼らにとって、静かで穏やかな喜びなのです。


 大樹の花が開く時間には、いつでも静かで穏やかな喜びがNoelノエルと大樹の周りを包んでおります。


 しかし、本日の開花は少々違いました。

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