第13話 両思いは勝ち取るもの!?

 現在、二人の女性の好意に板挟みになっている男である古都のことが好きな喜美は、自分は好意に気づいてももらえていないのにという疎外感を感じていた。


「ちょっと良いなって思ってた。」


 自制が利かず、つい口走ってしまったと同時に、「しまった!」と喜美は内心慌てた。


「え・・・?」


 古都が驚いた声をはっすると、喜美はどう取りなすか案も浮かばず、


喜美「あっ!違います!違うっ、今のはちょっと待ってください、間違えました!」


「あーっと、そうじゃなくて、、良いなって言うか、まぁ、古都さんは私から見ても魅力的だって意味で、、」


「そう!なんなら!そんな面倒なことになってるならじゃあ私にしたらどうですかって、、、いや、違うな、、ああっ、ごめんなさい、忘れてください!」


 絶望的に自滅していく喜美。電話越しだからこそ、目の前にいない分余計なことを口走ってしまいやすかった。必死に言い訳する喜美に対して、


古都「いや、大丈夫わかるよ。励ましてくれてるんだよな?ありがとう。」


喜美「え、いや、本気に取られないのもなんか、ちょっとそれは・・・」


 ごにょごにょっと喜美が不満を漏らす。好きな男が自分のあからさまな好意を優しさだけで言ったのだろうと言い放ったことに腹が立った。 


「あーもう、そういうところなんじゃないですか?もっとスパッと言わないからそんなことになってるんですよ!」


古都「うっ、、ごめん。。」


喜美「古都さん、言っておきますけど、私は今日話を聞いてなかったらそれなりに古都さんのこと本気で好きになってたかもしれないですよ?」


「でももう古都さんは彼女さんがいるわけだから、私はなーんだってくらいであきらめられますけどね??幼なじみさんにはちゃんとはっきり言わないとダメです!」


古都「そうだな・・・わかった。」




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「ということがあったんですよ。」



 そう言うと、大きなため息をついてテーブルに顔を突っ伏せるのは喜美。


 翌日、喜美は仕事前の慎也を捕まえて、職場近くのカフェで愚痴を聞かせていた。


慎也「はぁ、なるほどな。」


 がばっと体を起こして、喜美は慎也にふくれっ面をして見せた。


喜美「慎也さんが言った言葉、やっと意味がわかりましたよ。私でも古都さんを落とせるって意味。あの人はとんだ優男です。優柔不断で煮え切らない・・・ああ、もう!」


慎也「そうそう、そういうこと。それでもお前が良いならなって言ったろ?」


喜美「ですねですね、よおくわかりました。」


慎也「で?もう諦めがついたか?」


喜美「ふんっ、全然わかってないですね、慎也さんは。そりゃ、ただの優男だってよくわかりましたよ。だからって、好きな気持ちがなくなるってもんじゃないんです。。」


慎也「はー?そうかよ。なんであんな男がそんなにモテるんだろうねぇ。」


喜美「女はああいう清潔感があって優しそうでおとなしい人が好きなんですっ

!がさつじゃないし、馬鹿みたいに騒がないし、周りの男子とは違うんですよ。。」


「で、慎也さんこそ、その幼なじみさんのこと本気で狙ってくんですか?」


慎也「ああ。俺は昔から仲が良かったわけじゃないけど、佳奈ちゃんのことは知ってたし可愛いなくらいは思ってたんだよ。久しぶりに会ってみたらすげえ綺麗になってたし、馬鹿なあいつがやってることを聞いたら、なんかこう、、俺がって気になったっつーかさ。」


喜美「ふぅん、、そういうのを聞くと、古都さんより慎也さんのほうが良い男なんじゃないかってちょっと思いますね。」


慎也「お?だろだろ?あはは、乗り換えるか?俺に。」


喜美「そんな簡単に乗り換えられたら苦労しませんって、、大体、乗り換えようがどちらにしても私は茨の道じゃないですかっ!」


「もーなんなの!?私ってそんなに脇役キャラですか!?」


慎也「いやいや、お前は十分可愛いよ。タイミングだろう。で、どうすんの?一応彼女できたみたいだけど、古都は。」


喜美「そうですねぇ、、1ヶ月・・・、いや、3ヶ月であんな調子の古都さんがフラれるなんてこともありそうだし、、強気で攻めてみるって考えられなくもないですが、、うーん、でもそれって言い換えれば、私が仮に古都さんと付き合えたとしても、他の女に取られる不安をずっと感じそうってことですしねぇ、、。」


慎也「相手の気持ちに振り回される男って感じなんだよな。自分がないって言うか。」


喜美「要観察です。慎也さん、古都さんの彼女との話は聞いたら全部私に共有してくださいね!」


慎也「は、やだよ。俺は佳奈ちゃんのことで忙しいんだ。」


喜美「なんだよぅ、、やさしくしろよぅ、、こちとらフラれてんだぞ?」


慎也「フラれたっつーか、そもそも土俵に上がってなかったってだけだろ。ま、諦められそうになかったら押すしかないんじゃないか?」


喜美「うぅぅ、、内心けっこう傷ついてるんですよ?押す気力がでるかちょっとわからないです。。。」


慎也「・・・俺が慰めてやろうか?体で。」


喜美「は、はぁ?なに言っちゃってんですか!?」


慎也「男は好きな女がいたって、可愛いと思ってる女なら抱けるんだって。」


喜美「だからって、よくそんなこと言えますね!?嫌ですよ!」


慎也「お前さ、もし俺とこれからホテル行って、俺がものすごく優しく抱いてさ、お前のこと大事にしたらどう思う?俺のこと少しは好きになると思わない?」


喜美「そんなこと、、、ない、と思いますけど。。。」


慎也「ほら、ちょっとはあるんだろ?情っていうかさ。さっきのは冗談だけど、きっとお前にも俺にもそういうところはあるんだよ。古都が優柔不断すぎるだけでさ、俺たちだって多少はあるよ。」


「俺はさ、これから佳奈ちゃんのそういう心の隙間に入っていこうとしてるわけ。佳奈ちゃんが古都にフラれるの知っててだよ。きたねーもなにもねーよ。お前も古都の隙間に入り込むのはもっと簡単だと思うぞ?」


喜美「たしかに、、そうですけど・・・。」


慎也「だから、とりあえず様子を見るにしても、前より仲良くなっておけば良いんじゃねーか?恋愛相談から始まる恋とかってあるだろ?」


 慎也がポンッと喜美の頭に手を置いた。


慎也「じゃ、俺仕事行くから。そろそろ行くぞ。」



 でも、彼女がいる人につけ込むのと慎也さんが佳奈さんにするのとは違うじゃん。。


 そう思いながらも、黙って席を立ち、二人は外で別れた。







 


  

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