第十四話  漢たちの廊下階段下

 あれ、六場が階段の端に座ってる。珍しいな。

「こんなとこで、なにしてるの?」

 僕もその隣に座ることに。横並びになるとあれだと思ったから、下の段、というか踊り場だけど、腰掛けて壁にもたれた。

「……負けた」

「なにに?」

 部活のことなのか、ミニプリントのことなのか、奥茂とゲームでもしたのか。

「……若稲に」

「ウッウッ」

 そのことかっ! って、えっ?

「六場も負けたの!? 腕相撲とか、指相撲とかで?」

「ああ」

 うわー……それで六場、こんなとこでちいちゃくなってたのか……。

親父おやじくらいにしか負けたことなかったのに、女子に負けた……」

 僕は父さんとは腕相撲、やったことないなぁ。

「ま、まぁ、僕なんて瑛那にも負けたしウッウッ」

「そうか……」

 ウッウッ。

「……オレも告白。してみるか」

「ウッウ……ぇ?」

 今なんて言いました?

「ごめ、六場。ちょい確認。今、なんて……言った?」

「オレも告白。若稲にしてみようかと思う」

 なん・だっ・てぇーーーーー?!

「うえええ!? 矢鍋に続いて六場もかぁー?! え、えっ、本気マジ!?」

「ああ」

「うおあぉぉ~…………」

 なんだなんだ中三中学三年生ってそんなにこくぅはあくが乱れ飛ぶ学年なのかぁ?!

「あ、ゆっきーちゃんだぁ。なにしてるのぉ?」

「あ、京香ちゃんだ」

 京香ちゃんこそ、ここでなにしてるんだろう? 一年生の教室は遠そうだけど……?

「一年生?」

 六場が京香ちゃんの上靴を見て確認。

「こんにちは~。ゆっきーちゃんの友達?」

 後ろ手に組んでる京香ちゃん。雪道を歩くときは、ポケットに手を入れるのとかだめなんだよな。僕なに言ってんだろ。

「ああ、そうだよ。六場徹人。京香ちゃんは菊嶋京香ちゃん。淋子の妹さんだよ」

「そうか。よろしく」

「よろしくお願いしまーす。ってだーかーらゆっきーちゃん、こんなとこでなにしてるのってばー」

 京香ちゃん元気だなぁ。やっぱりかぜひいたときとか、淋子がお世話するのかな? ってだから僕はなにを……。

「なにって、別にー……なぁ?」

「ああ」

 そう。ちょっと告白の話を聴かされたくらいで。すごいね。

「ふーん。ゆっきーちゃん、今度久しぶりに遊ぼうよ~。お姉ちゃん夏弱いから、今日はパスぅ~ってばっかりなのー」

 逆に京香ちゃんが淋子をお世話するパターンだった。

「いいけど……淋子、そんなに夏弱かったっけ?」

「夏休みの間とか、結構ぐったりしてるよー? エアコンエアーコンディショナーつけてアイスアイスクリーム食べて寝てるー」

「それひょっとして、エアコンつけてアイス食べて寝てるから、ぐったりしてるんじゃ……」

「さぁー。今週じゃなくて、その次の土曜日遊ぼ! デパート行こうよっ」

「フードコートの改装が終わったんだっけ。いいよ、来週の土曜日だね。ああ何時にどこで待ち合わせ?」

「そそ! 十時半に駅前にするぅ? あ、もう行かなきゃっ。じゃねゆっきーちゃーん」

「じゃっ」

 終始元気な京香ちゃんだった。でも女子友達じゃなくて、僕と? ま、まぁ確かに最近、遊んでなかったなぁ。

「……女子と話すの、慣れてるな」

「は? そ、そう?」

「ああ」

 あいや、六場の存在忘れてたなんてことないからうんうん。

「どうして慣れてる? コツはあるのか?」

「コツって言われてもなぁ……」

 ちょっと考えてみたけど、たぶんその質問に対しての答えは……

「……慣れ、かな?」

「そうか……」

 結依ちゃんがいっぱいしゃべりかけてきてくれるからね!

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