第8話 僕の姉さん




       僕の姉さんは62歳

       毎日元気に過ごしている


       独身で結婚歴もなく子供もいない

       体調が良い日にだけ仕事をする


       仕事に行く日にだけお弁当を持ち帰る

       働けない僕のためのお弁当を


       僕が冷たくあしらっても

       いつも笑顔だったよね


       メールする相手がいないからと

       しつこいくらい僕にメールしたね


       独りは寂しくないのかと聞くと

       独りのほうが気楽で良いと話したね


       本当は寂しいくせに


       僕は知っているんだ

       部屋で独り泣いている事を


       生まれ変わりがあるのなら

       お金持ちの子供に生まれるように

       僕は姉さんのために祈り続けよう






*~*~*







 僕の姉は真面目だけが取り柄の、面白味の無い女性です。


 仕事も休みがちなのに、生涯現役で仕事をするのだと言います。姉も僕も身寄りが無いので、老後は福祉に頼らなければ、生きていけないでしょう。


 僕が孤独で寂しいと言うと、私がいるじゃないのと、笑顔で答えます。


 生まれ変わりを信じていて、お金持ちの、仲の良い両親の家庭に生まれたいと祈っています。生きるのにひたむきなのです。


 姉がこの世を去るその日まで、僕は死ねないのでしょうね。

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