社畜の俺、ドラゴンに懐かれたのでペット配信を始めます〜夢は田舎でモンスター牧場!〜

こがれ

1章 ドラゴンとペット配信

第1話 ちびっこドラゴンとの出会い

「疲れた……もう働きたくない。田舎でのんびり暮らしたい」


 牧瀬丈二まきせじょうじはふらふらと街を歩く。

 時刻は午前1時。

 残業を終えての帰宅途中だ。


 もう働きたくない。

 その呟きを繰り返すのは、仕事をはじめてから何度目だろうか。


 ストレスの溜まる仕事内容。

 理不尽に怒ってくる上司。

 終わらない残業。


 明るい未来を夢見て入った会社だった。

 だが以前の社長が病気によって急死。

 息子が後を継ぐことになった。


 そして社長が変わってから、会社も変わってしまった。


 今ではお先真っ暗。

 会社は真っ黒。


 なんども辞めようと考えた。

 だが辞めてどうするのか。

 次の仕事は見つかるのか。

 見つかったとして、その会社が今より良い環境な保証もない。


 そう考えるとズルズルと退職を引き伸ばしにして、現在は26歳。

 周りからは老け顔だとよく言われる。

 ストレスのせいだろう。


「……なんだ?」


 ふと、動物の鳴き声のようなものが聞こえた。


 動物は好きだ。

 寝る前には犬猫の動画を見るのが、丈二の日課になっている。

 その時だけが癒やしの時間だ。


 鳴き声は苦しんでいるように聞こえる。

 ケガでもしているのだろうか。

 丈二は心配になって、声を追いかけた。


「うお! なんだアレ……」


 外灯に照らされた場所。

 そこに居たのは、猫くらいの大きさのトカゲだった。

 背中には翼が生えている。

 ドラゴンだろうか。


「す、スゴイな。本物のモンスターだ」


 何十年も前に、日本にダンジョンが現れた。

 その後もダンジョンの数は増えていった。

 今ではダンジョンから資源を持ち帰る『探索者』は、わりと一般的な職業だ。


 モンスターは、そのダンジョンに現れる怪物だ。


 基本的にダンジョンは保護されているため、外にモンスターが出てくることはない。


 だが、生まれたばかりのダンジョンからモンスターが出てきてしまう事故もある。

 今回もそれなのだろう。


「か、噛まれたりしないか?」


 丈二は恐る恐るドラゴンに近づく。

 やはりケガをしているようだ。

 何かに噛まれたのだろう。

 お腹のあたりに、いくつもの穴が空いている。


「ぐるぁぁ!!」


 威嚇された。

 丈二に気づいたドラゴンが唸り声をあげる。


 怖い。

 野生の動物は何をしてくるか分からない。

 カラスがこちらをジッと見てくると、襲われるのではないかとビビることがある。

 それを何倍も怖くした気分だ。


 だが放ってもおけない。

 放っておけば、この小さなドラゴンは死んでしまうだろう。

 それは気分が悪い。


「怖いことはしないから、だから攻撃してこないでくれよ」


 ドラゴンを怖がらせないように、ゆっくりと近づく。

 そして回復魔法を使った。


 幸いなことに回復魔法は学校で習った。

 戦闘技術や攻撃魔法はダメダメだった。

 だが、回復魔法の成績だけは良かったほうだ。

 これくらいの傷なら治せるはず。

 

 ドラゴンの傷がふさがっていく。

 ドラゴンも回復されていることを理解したのか、大人しくなった。


 完全に傷がふさがると、ドラゴンはソレを確認するようにお腹をなめた。

 猫みたいな感じだ。


「くるるるる!」


 ドラゴンが甘えたような声をあげた。

 そして丈二の手に、頭をこすりつけてくる。


「はは、可愛いな」


 頭をなでてやると、嬉しそうに目を細める。

 ドラゴンを抱き上げる。

 キョトンとした顔で、丈二を見つめてくる。


「ドラゴンって拾ってもいいのかな……」


 法律とかで禁止されてるのだろうか。

 丈二がつれて帰るか悩んでいると。


「アオーーン!!」


 狼の遠吠えが響いた。

 それと同時に、丈二の前に3匹の狼が飛び出してくる。


「うわ!? 狼のモンスターだ……!」


 早く逃げなければ。

 丈二に戦闘能力など無い。

 だけど走って逃げ切れるだろうか。

 いや、無理だろう。

 狼の脚力には勝てない。


 丈二が絶望していると、


「ぐるぁぁぁ!」


 腕の中のドラゴンが吠えた。

 そして、その口から光がもれ出る。


「え、なに? 何するつもりなんだ?」


 結果はすぐに分かった。


 ズバン!!

 ドラゴンの口から閃光がほとばしる。

 それは狼の体を引き裂き、一瞬で絶命させていった。


 残ったのは3匹の狼の死体だけだ。


「え、つよ!?」


 小さなドラゴンだから、あまり強くないのかと思っていた、

 丈二は見開いた目で、ドラゴンを見る。


 ドラゴンは『ほめてほめて!』と言うように、丈二の胸に頭をこすりつけていた。

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