古宿スマラナ
ヘルディの案内の下、モノマキアの街道を人間を轢かない様に気をつけながら進み、途中から整備されておらず人間がいない街道を進んで到着する。
パッと見は古ぼけて整備も碌にされていない建物の様に思うのだが、庭や外壁、客室らしき場所の窓は丁寧に整備されている様に見える。
「此処か?」
「はい、此処っすね。見た目は凄いっすけど」
「ふむ...やっているのか?」
「やっている、はずっす。多分」
「………まぁ、入れば分かるか。馬車は何処に?」
「あそこっすね。案内するっす」
やっているかどうかとか中身に関しては入れば分かるだろうと判断して、馬車を停める場所に進むヘルディの後を追いかけて歩いていく。その間に気配を探ってみるが、付近に人間の気配をあまり感じない。宿の中にいる一人を除けば..1、2km程度離れた場所に感じられる人の集団の気配が一番近く、それ以外となるとこの宿に行くまでに通った街道を越えた先だな。
………あとは、人間の気配の少なさの割にはネズミや虫といった小さな気配も少なすぎる様な気もするな。
「此処っすね、クルスとアウロの大きさ的に手前のどっちかじゃないと入らないっすけど」
「あぁ...クルス、アウロ右側の方に入れるか?」
『『ブルル』』
「ならよし...馬車から切り離したから入れるぞ。ヘルディそこの扉を開けてやってくれ。グレイス、ラビ助馬車から降りてくれ」
「了解っす」
「分かりました」
『キュ!』
馬車を停める場所、宿に比べれば整備されていると思われる馬房の前に到着し、入る場所を決めると各々に指示を出して動き出したのを確認してから、俺も動き出す。俺たちが乗っていた場所を魔法で収納してクルスとアウロに色々と魔法を掛けていく。
「
『『ブル?』』
「ん? あぁ、お前たちが襲われた時のためにな。そう易々とお前たちが殺されたり傷つけられたりするとは思わんが、態々手出しさせる理由もないし無闇にお前たちに手出しされるのは気分が良い物ではないからな。前もってお前たちを守らせてもらう事にする」
『『ブルフゥン!!』』
「……よいしょっと。クルス、アウロ、扉を閉めるっすから顔をそこから引っ込めるっすよ」
『『ブルル』』
「そんな不貞腐れた顔をしないっす、横から出せる様にしておくっすから」
『『ブルル』』
「分かってくれたのならなによりっす」
『ブルフゥン!』
『フゥン!!』
「それじゃあ引っこめておくっすよ...よし。それじゃあ鍵は開けてあるっすから、此処からいつでも顔を出せるっすよ。また後で会いに来るっす」
「………あぁ、また後で会いに来よう」
『『ブルフゥン!!』』
……………どうしてヘルディはクルスとアウロの言葉を理解している? というか表情まで読みとっていなかったか? 流石に俺もあんな即座に表情を読み取れないんだが.....後で、聞くか。
取り敢えず、今は宿の中に入ることから始めよう。
「じゃあ、行くぞ」
「了解っす」
「分かりました」
『キュイ!』
────────────────────────
「うん? あぁ? 客か?」
「そうだ。部屋は借りれるか?」
「ほーう? ……良いぜ、何部屋借りる?」
「大部屋はあるか? 大部屋があるなら一部屋、無いなら二部屋借りたい」
「大部屋? あるぜ、階段の裏にある部屋が大部屋だな。掃除はしてるんだが、大部屋なんてしばらく借りられてねぇからな、埃が隅の方に溜まっている可能性があるが...それでも構わんか?」
「あぁ、問題ない」
「はいよ、それじゃあこれが鍵だ。無くしたり、壊したりしたら弁償してもらうぞ。あと、聞いてるかもしれんが此処は飯も出ねぇし、風呂も付いてねぇぞ」
「あぁ、把握している」
「ならいい。一応食事は蓮池広場に料理屋があるし、風呂に関してはこの宿を出て真っ直ぐ進んだその途中に大浴場があるぞ。中々に綺麗だし、男ならば夜空を眺めながら酒を飲めるサービスがあるぞ」
「ほう? 結構滞在させてもらうから、いつか訪れさせてもらおうかな…………あぁ、そうだ。俺たちのところにはウサギがいるんだが、大丈夫か?」
「うん? 問題ねぇよ。毛並みとかが汚れたりするかもしれんが、その時は表か裏の庭で洗ってやりな」
「そうか、助かる。宿泊料金はいくらだ?」
「あーー、出て行く時に請求するよ」
「ん? そうか? なら、まぁ前金というか担保代わりに受け取っておいてくれ。山程あるし、結構長い時間此処に宿泊するし、おそらく面倒事を掛けるかもしれんからな」
「…………お、おぉ。担保にしても白金貨十枚は多すぎるな。一枚でも多いくらいだな」
「そうか? まぁ受け取っておいてくれ」
「………………よし、受け取っておく。だが、必ず宿を出てこの街から離れる時に声を掛けてくれ。確実に釣りが出るから、それは返させてもらう」
「ん、あぁ分かった。それじゃあ、世話になるぞ」
「おう、ゆっくりしていってくれ」
宿の中に入ると、カウンターらしき場所で頬杖を突いて退屈そうな風にしていた男に話しかける。部屋の鍵を借りて、ラビ助が一緒に泊まってもいいか許可を取り、宿代を渡して男の前から離れてグレイスたちと合流する。
「行くぞ、大部屋を一つだが、大丈夫だったか?」
「問題ありません、行きましょうか」
『キュイ!!』
「……あ、はいっす。全然問題ないっすよ」
「……本当に大丈夫か? あれだったらもう一部屋借りてくるぞ?」
「大丈夫っすよご主人様、異性と宿の同部屋に泊まるっていう経験が無かっただけっすから」
「ん? そうか、それならば良いが」
問題ないかと聞けばグレイスとラビ助からはすぐに問題ないという返事が返ってくるが、ヘルディからは少し遅れて返ってくる。問題でもあるのかと思い聞き返してみると、異性と泊まるのが初めてと言う返事が返ってくる。それの何が問題なのかよく分から...ぁぁや、分かった。貞操云々の問題か、そりゃ確かに気になるし気にするな。グレイスとは普通に二人で寝るし、なんなたらお互いの裸を見たことも洗ったこともあるから一切気にしていなかったが、そうか普通は気にするな。申し訳ないことをした。
寝る時は可能な限りヘルディから離れた位置で寝るようにしよう。あとヘルディが寝たら俺は近づかない様にしておこう。その方がいいな。
「此処だな、開けるぞ.....意外と、というか普通に広いな。奥で自由に作業も出来るな」
「そのようですね、綺麗に掃除されているみたいですし部屋の空気も悪くはありませんね」
『キュイ! キュキュ、キュイキューイ!!』
「………こんな広い部屋があったんすねぇ...」
────────────────────────
ドラコー→異性との同衾は流石に気になるか
ヘルディ→ウチの処女は此処で散るんっすね(覚悟)
グレイス→気にしてないし、抱かれるのも悪くない
ラビ助→一時的とはいえ新しい巣に大喜び
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