第6話 振り返りと再挑戦


  進は、帰りの車の中、ほぼ今朝、書いた小説通りに事が進んだ一日を振り返った。


――ああ、本当に逢えた上に芽衣子さんに密着までしてもらっちゃったよ。凄いなあ、リアスト、本当なのか? いやいや待てよ。小説を朝、書いて、その通り自分で行動しただけでは? うーん、そうかもしれない。芽衣子さんがあの病院にいるかもしれないことは薄々分かっていたし、偶然、芽衣子さんが靴を履く時、手伝ってくれたことが当たっただけじゃないか?

 

進はまだ全然半信半疑だった。

 車で家まで帰った進は、芽衣子に再会した感動もそこそこに、またリアストを書くことにして、スマホのアイコンを確認した。今朝よりもどことなく実写に近くなっている気がしたがあまり気にせずにアイコンをタップし、リアストの原稿用紙を開いた。


―― うーん、リアスト、本当かどうか分からないなぁ。起こりそうにないことを書いて実験してみよう。そうだ、トトビッグを当てて6億円と書いてみよう。いや、そんな欲を出したらたいていだめなんだよなぁ。でも、実験だし、だめ元で書いてみよう。


進は、サッカーくじのトトビッグをインターネット銀行を介して買って、それが当たって心臓がはじけそうになる話を書いた。そして実際に現実の中でトトビッグを30口購入し、結果が出る日を待った。

――そんな、6億円も当たるわけないやんなぁ。こんなんで当たるんだったらみんなリアスト書いてビッグ買うよなぁ。いや、みんなはリアスト持ってないのか。ぼくだけ? アプリ入れてる奴が他にいるかもしれないなぁ。誰かに聞いてみるか。


  進は、夢と現実の境目がどこだったのか少しあやふやになっていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る