第11話 中級パーティーとの共同クエストそして衝突(2)オークキング

 「レト! 特大のを!」


「ミリ!やってちょうだい!」


 やっと何か作戦らしい作戦があるのかと思えば、これまでより格段に大きい爆弾を取り出しただけだった。


ドッゴーン 


 強力なものらしく威力は地面が抉れるほど高かったが、肝心のオークキングは相変わらず無傷だ。


「くっ、レト! もう一個!」


 何個追加したって意味ないだろう。それより、急所を的確に突くなり、黒魔導士のレトとアサシンのシマで敵を混乱させながら少しずつ体力を削る方がいいというものだ。


 「爆弾ではダメージが少ないようですっ。いかがいたしましょうか!?」


 本当は少ないではなく皆無だったのだがそれを言うと確実に本人たちが爆発するので状況を読んで指示を煽った。


「お黙りっ! 分かってるわよ!」


ミリが苛立ちながら叫ぶ。


「魔法攻撃に切り替えるわっ!あんたは何ができるの?!」


 それは出発する前に確認するべきだろう。


「剣と魔法全属性使用できますっ!」


「シマ!私と一緒に前へ出て!レト、不細工、従者は後衛!」


((何でそんな配置の仕方をする))


 盾役がいないから攻撃の主力が前に出るしかないのだが、この場合ルキウスとシギがパーティーに加わっているので主力がミリではなくルキウスになる。後衛になるとルキウスは剣が使用できなくなるため魔法攻撃しか使用できない。剣と魔法を使った付与魔法攻撃であれば遠距離からの攻撃も可能だが、付与魔法攻撃をする人が初対面の人やパーティーの後衛になることは少ない。更にパーティーの命綱、回復はミリが担っているため守りが薄い先頭にいられると倒される可能性が高くなる。もし倒されると誰もパーティーの回復ができなくなるためパーティー自体が全滅する可能性がある。シマも戦闘スタイル的に前衛ではない。野ばらのパーティーとの連帯がとれないため味方の背後からの剣による付与魔法攻撃など危なっかしくてできない。下手したら前衛を切る可能性もあるのだ。更にレトが急にしゃがんだと思ったら調合を始めたのだ。


((なぜ今!))


 本来なら調合済みの物を仕込んでくるものだ。そして予備のすら尽きた時点でようやく現地調合になるのだ。現地調合は大きな隙になる。ただでさえ回復をしている間は回復役に人員を割かなければならないのに調合中の護衛もすれば攻撃役がいなくなって防戦一方になる。野ばらのパーティーは不測の事態に弱く連帯も本人たちはとれていると思い込んでるだけで全くとれていなかった。


ズッドォォォォォン


 ミリは開始の合図も何もせずいきなり魔法攻撃を打ち込んだ。


((作戦は?!))


「何やってんの?!早く魔法攻撃打ち込んでよっ?!」


 ミリは焦ったような顔でこちらを振り向いて叫ぶ。


「魔法攻撃は使えます!ですがこれでは付与魔法攻撃がっ…」


「打ちなさいよっ?! 付与魔法攻撃もっ!」


「前衛に当たりますっ!」


「私たちを馬鹿にしてるの!?それくらい避けれるわよ!」


「くっ、正面に三つ続けて飛ばしますよ!炎斬、水斬」


 ルキウスは剣に炎魔法を付与した魔法攻撃をオークキングに飛ばした。炎がオークキングに纏わりついた瞬間、水で炎消して煙を発生させる。


「土やっ!?」


 目くらましがあるうちに槍で貫いてオークキングの体を縫い留めようとした瞬間、シマが煙の中に飛び出した。慌てて詠唱を止めたが下手したらシマが串刺しになっていた。


「何も見えない…。斬れない」


((当たり前だ…))


 何のために目くらましをやったと思ってるんだと呆れる二人。せっかくの合図も忠告したのに、このままでは無駄な時間を過ごしながら煙がはれてしまう。


「シマ様!お下がりください!」


「…私に命令しないで…」


「この不細工!誰の許しを得て私に逆らってシマに命令…をっ?シマァ!!」


 煙が少しずつはれていき、その中から振り上げた腕が見えた。


「盾!」


 シギがとっさに水の盾でこぶしの直撃を防いだが衝撃自体は防ぎきれずシマの体は吹っ飛び地面に打ち付けられた衝撃でまたはね飛びながら少し転がって動かなくなった。本来のシギなら余裕で防ぐが中級精霊を持つ従者という設定なので魔法もそれに合わせている。


「なっ、もっと丁寧に張れないの!?」


 そこまで重症ではないが間違いなく打撲だけではないと思われる傷がある。本来なら仲間が倒れることは防ぎたいがこの場合逆にもう好都合としか思えない。


「シマ!今回復するから待ってて!」


 途端にレトにより始められる調合。全てが無駄すぎるあの鎧の跡は使い込まれたためのものじゃなくて爆破するのが彼女らのやり方ならその爆破の跡なのだろう。


「不細工!従者!時間を稼ぎなさいっ!」


「もう一回正面に三つ飛ばします。」


 先ほどと同じ作戦を試してみるが既に見破られ炎は振り払った大腕で消し去られた。


「見破られています!作戦変更します!動かないで下さい、土槍!」


 煙幕で視界をふさぐことはあきらめてまだ見せていない土槍で手足を縫い留めて、その間に相手を攻撃する作戦を立てる。


ズブッ


 鈍い音とともに地面から突き出た土槍がオークキングの手足に刺さる。


「そのままシマを回復するまで待ってて!」


「嘘でしょうっ?槍にはかえしも何もありません。今すぐ攻撃を打ち込まねば!」


「口ごたえするんじゃないわよ!手柄を奪う気!?」


 とてもいいとは言えない手際で調合するレトが顔を上げて吠える。


 手柄どころか連帯は最悪で全滅する可能性もあることに全く気づいてない。もしかしたら自分たちが全滅するとはかけらも思っていないかもしれない。


「申し訳ありません!」


 ルキウスにとってこれは初陣、持っている作戦は少ないからこの機会を逃したら安全に攻撃をする時間はもうつくれないかもしれない。


「炎斬!」


 オークキングの顔めがけて真一文字に炎を飛ばす。炎の量を抑えて全身に纏わりつかせるような炎ではなく確実に顔、特に目を焼き潰しにいく。目を潰されたオークキングが痛みに叫ぶ。目が利かないと分かり、無茶苦茶に手足を振り回し、手足に突き刺さった土槍が抜けるその瞬間、


「シギ」


「水打」


 シギの魔力で作った小鳥が水をまといながらオークキングの頭上まで飛んだかと思えば背中めがけて急降下する。急降下する間にもまとう水の量が増え、オークキングの背中との距離が一メートルになるまでには小鳥はまるで水の柱をひこうき雲のように尾羽から伸ばしていた。距離が三十センチをきった瞬間、小鳥は身体を反らし尾羽をオークキングの背中に向けて突き出した、と同時に水の柱がオークキングの背中に直撃。背後から殴られた衝撃でそのまま土槍に先ほど以上に深く突き刺さった。この間、わずか五秒。顔は下、前にいるルキウスたちにも充分背中が狙えるくらい前のめりに倒れこみそうになったところをすかさず攻撃する。


「炎斬!」


「光弾!」


「水袋」


 ある程度シマを回復したのだろう攻撃に参加したミリが光の弾をルキウス同様オークキングの頭部めがけて飛ばす。シギはオークキングが起き上れるぬよう重い水の塊を背中にのせる。そのまま攻撃し続けること十分、頭部を完全に破壊した。荒く息をしながらミリがオークキングの鼻をそぎ落とす。


「依頼完了ね。帰るわよ。」


「足、引っ張られた…」


「シマ、後でなでなでしてあげる!」


「今じゃ…ダメ?けがも…させられた…から」


「シマったら」


「甘えるのが上手ねぇ」


回復したとたん聞き捨てならないことを言うシマにルキウスとシギはため息をすんでのところで我慢してボロボロのまま五人は帰路についた。

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