第7話

 パラセコルト王国。

 その王城に二人の男女がある。

 薄暗い、しかしながら、いつ何時も目を刺激する豪勢な私室。

 寄り添うようにソファに腰を掛ける二人。


 男の名はラーテン。次期において国王の位を賜る事が約束された身分である。

 その男の胸に頭を傾ける者、ルーイン。白く薄い身形と肌に差す紅で彩られ、蠱惑の美を以ってラーテンの視界に華を与え、媚匂が脳を揺さぶらせる。


「ラーテン様、わたくしは貴方をお慕い申しておりますのよ?」

「ああ、俺もだ。お前を愛しているとも」

「嬉しい。ならば、この小娘の願いを、

その大海の懐を以って叶えては下さりませんか?」

「もちろんだとも。この俺ならば、これ以上ない程に君を喜ばせられるというもの。神がそう告げているのだ、二人の仲に祝福を与えるとね!」

「ふふ、神様は愛に寛容であらせられますのね。

では、その厳かなお耳をお貸し下さいませ」

「可愛い子だ。さあ頼みなさい、俺に君の望みを与える権利をくれ」


 観客もいない部屋で、二人だけで演じる肥えた芝居。

 促されるのは失笑か否か? 二人だけの世界、舞台。


 ラーテンはその耳を、女の口元まで寄せた。

 女の唇が開き、その愛らしい声で囁く。

 願いを聞き、満足な笑みを浮かべるラーテン。……これ以上の言葉は不要だろう。


 数分の後、部屋の蝋が溶け消えた。

 ベッドに眠るは、男が一人。しかし女は……。


 蝋燭の火が放つは明かりだけでは無い事に、気付ける者はいない。




 知っている者がいるばかりだ。

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