洋楽好きと繋がりたい【短編集】
yokamite
...Ready for it?
1-10
Oasis - Champagne Supernova
──How many special people change?
──How many lives are living strange?
──Where were you while we were getting high?
「おいおい、記念すべき第1作目にしては選曲が独特すぎやしないか」と思ったそこの貴方。ブラウザバックはもう少しだけお待ちくださいな……!
『Champagne Supernova』の生みの親であるOasisは、前身となったThe Rainが結成された1991年から解散を迎えた2009年まで、凡そ20年間にわたって一世を風靡したイギリス・マンチェスター発の伝説的ロックバンドです。その破天荒っぷりから
そんなOasisが1995年に発表した2ndアルバム『(What’s the Story) Morning Glory?』の12曲目──ラストを締め括る楽曲こそが、この『Champagne Supernova』である訳なんです。
「それでは、早速ですが楽曲の歌詞の翻訳と行きましょう!」──と、言いたいところなんですが、ひとつお伝えしておかねばならないことがあります。当該楽曲の作詞・作曲者であるOasisのギタリスト兼ボーカリスト・Noel Gallagher本人は、なんと『Champagne Supernova』の歌詞について「意味は分からない」という旨の発言で、歌詞に込められた意味は特にないことを認めてしまっているんですね。
あ、ちょっと待って。折角ここまでお読みくださったんですから、もう少しだけお付き合いください……!
でもね、僕は作曲者が歌詞の意味を必ずしも理解しているとは限らないし、その必要もないと思うんです。現代のネット社会に氾濫している日本のアーティストによる、ありとあらゆる楽曲を掻い摘んで聞いてみても、何のことをテーマに歌っているのかわからなかったり、この曲の歌詞に意味などあるのかと疑わしくなったりすることは、結構あります。だから、それぞれの曲に込められたメッセージ性が聞き手に届くことなど、むしろ稀有な現象だと思ってるんですよね。──共感できなかったらすみません。僕の感受性が乏しいだけかもしれません……。
だからこそ、この『Champagne Supernova』という曲のアンニュイな雰囲気や独特の歌詞が人々を魅了することができるのかもしれないと、僕はそう考えています。楽曲は7分を超える長さで、聞き手によっては
冒頭三行は、イントロをはじめ、楽曲中に幾度となく登場するフレーズです。
「どれだけの特別な人々が変わっていった?」
「どれだけの人生が奇妙な暮らしを営むのか?」
「俺たちがキマってた間、お前らは何処にいたんだよ?」
うーむ。確かに謎深い歌詞ですよね。察するに、飲酒や薬物によってハイになっているときのぼやけて纏まらない思考を表現していると思われます。いやいや「作曲者本人が歌詞に意味はないと言っていたんだろう」って? 僕はそれでも、無意味から意味を見出すのを諦めたくない業突く張りなのかもしれません。
でも、そう考えるとこの意味のない歌詞にも説明が付きますよね。酒や薬によって冒された脳内の混乱によって垂れ流された妄言だとすると、作曲者Noelにはそういう経験があったのでしょうか。僕も彼らと同じ表現者の端くれですが、音楽アーティストの苦悩は想像もつきません。ちなみに、当該楽曲のボーカルを務めているLiam Gallagherは、なんとライブ中にドラッグを使用していたことがあるらしいです。──なるほど、ぶっ飛んでますねぇ。
サビ前のフレーズはこの通りです。
「ゆっくりと広間を闊歩しよう」
「されど砲弾よりも速く」
「俺たちがキマってた間、お前らは何処にいたんだよ?」
謎いですねー。ゆっくりと歩く、されど弾丸のように速く。この支離滅裂な感じが、本当にハイになった人のぐずぐずとなった頭の中を見ている感じがして、実に面白いです。
続いて、サビパートに入っていきましょう。ゆったりとした口調で語り掛けるように歌われるサビですが、ここに来て曲名にもなっている『Champagne Supernova』という単語がたくさん登場します。直訳すれば「シャンパン色の超新星」ってとこですかね……? 僕の残念な英語力では詳細まで理解することはできませんが、一先ず、大体の意味は次の通りです。
「いつかお前らは俺を見つけるんだ」
「土砂に埋もれちまったこの俺を」
「空に浮かぶシャンパン色した超新星で」
「いつかお前らは俺を見つけるんだ」
「土砂に埋もれたこの俺を」
「空に浮かぶシャンパン色した超新星で」
「シャンパン色した超新星でな」
何だか、世間の荒波に揉まれながらも、いつの日か陽の目を浴びたいと願う誰かが、数多くの人間の中から「俺を見つけてくれ!」と願う気持ちが表されているような気がします。でも、空に浮かぶシャンパン色の超新星なんて、多分誰も見たことはありませんよね? だから「そんな日は永遠に訪れないんだぞ」という非情な現実を突きつけているような、そんな意味が込められていたならなんかエモいなーと勝手に解釈しておりました。以下、繰り返しになる部分は省略して紹介します。
「夜明けに目覚めて、彼女に
「夢想家は何故不死の夢を抱くのかって」
「今は君の目にたまる涙を拭い去ってやることしかできない」
んん……? 何だか場面が急転したような気がしますね。
"She"だの"her"だのと、何やら女性が登場したようですが、ここで言う「彼女」が何者なのか、その代名詞が本当に人を指しているのかなど、僕には理解し切ることができませんでした。この辺りは和訳というよりかは、もはや僕個人の一見解、独自の解釈だと思って受け取ってもらえると助かります。この後、先程のサビフレーズを一頻り繰り返した後、曲調は次第に激しくなっていき、クライマックスを迎えます。
「誰もが信じ切ってる」
「夏の間は逃げれば良いと」
「でも俺とお前は、ここで生きて死ぬ」
「それでも世界は回り続ける」
「俺たちが理由を知らずとも」
はい、僕の大好きなパートです。サビの終わりを惜しむように、わーいわいわいわああーい(?)と叫ぶところは、カラオケで歌っていて一番気持ちいいところでもあります。この特徴的なフレーズのおかげで、僕がカラオケでこの曲を歌うと同席していた友人は必ずこの曲とOasisという存在を覚えて帰ってくれます。だからこそ、この曲を第1作目に紹介しようと思ったんですよね。
話が逸れましたが、この曲の歌詞の美しいところは、その語呂の良さというか、詩的で繊細な語感が感じ取れるところだと思います。クライマックスの数フレーズには、その特徴がより顕著に表れていると、僕個人は感じました。
歌詞はこれで全てではありませんが、この後は全て既出のフレーズの繰り返しとなりますので、翻訳は以上になります。いやぁ、改めて音楽の歌詞と向き合うというのは、こんなにも楽しく、奥深いものなのですね。僕はたった今、7分半にもわたる『Champagne Supernova』をループ再生しながら、作曲者Noelの実弟であるLiamの美声に酔いしれ、合唱しながら本稿を執筆しております。
このように、素晴らしく味わい深い楽曲を多く世に輩出してきたOasisですが、全てが順風満帆という訳ではありませんでした。むしろ、バンドメンバーの確執は業界の内外問わず有名で、Gallagher兄弟を中心としたメンバー同士の諍いは絶えず、Noelによる本国イギリスで開催された大型フェスの出演拒否騒動に始まった2009年のバンド解散も、それが一因だったと言われています。メンバーの脱退も多く、かつて事実上の解雇通告を受けた初代ドラマー・Tony McCarrollsは報酬の未払いを訴え、Oasisとの訴訟騒動に発展した過去もあります。
そんな、名実共に破天荒なGallagher兄弟ですが、Oasisの解散後もそれぞれが独自に音楽活動を継続中です。また、Oasisの活動期は『Champagne Supernova』以外にも、魅力溢れる伝統的なUKロックを多数生み出されております。もう知っている人も、まだ知らなかった人も、この機会に是非Oasisの楽曲を聞いて、もしよろしければ、皆さんの感想を共有していただけると嬉しいです。
さて次回は、そんなOasisとも確執が噂されたあのバンドから紹介しましょう!
──えっ、多すぎて分からない? でも、それは次回のお楽しみに!
†††
※本作における冒頭三行及び改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はOasis - Champagne Supernovaから引用しております。
※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。
※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。
※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。
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