〈破〉愛
僕には、愛する女がいた。
容姿や性格が良いのはもちろんなのだが、それ以上に、本能を刺激するような「かわいらしさ」というのがあった。言うなれば、「守ってあげたい。」そう思わせるような魅力があった。
その女は体が弱く、さらに喘息も持っているというので、長期にわたって学校を休むことがあった。僕がその女に惚れたのはこの頃だ。
その病弱さは、この女の「かわいらしさ」と掛け合わせることで、「守ってあげたい。」そう思わせるのには十分過ぎるものになった。
僕はこの女の力になりたかった。それはただ純粋な気持ちで、このとき、下心などというものは微塵もなかった。
そんな気持ちから、僕は、その女が休んだ日の授業の僕のノートを見せるという、初歩的だが、重要な役割に就いた。最初のうちは僕の方から連絡をしていたが、二日、三日ほどすると、女の方から「見せて欲しい。」と言われるようになった。このとき得た、えも言われぬ達成感は今でも憶えている。
それからというもの、僕のこの女への愛はどんどん大きくなった。それに伴い、僕にかかる呪いもどんどん大きくなった。
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