第36話 タニス戦
次はメイス部門で、その次はいよいよタニスだ。
開始前に声を掛ける。
「タニス、スキルを使っても良いからね。くれぐれも攻撃魔法だけは使うなよ」
「セル様、誰に言っているんですか?私がそんなミスする訳無いでしょ?ちゃんと見てくれなかったらすねますからね!ハーニャもメイヤも頑張ったし、私も行きます!あ、あのね、セル様、勝ったらハーニャみたいに撫で撫でして欲しいなぁなんて・・・駄目ですか?」
「勿論OKだよ。でも決して無理はしないように」
そうしてタニスを送り出した。
対戦相手は北斗の拳で出てくるようなモヒカン野郎だった。
「うおおおお!ラッキーだな!こりゃあ寝技で決めなきゃな!ぐへへへ。姉ちゃんよお、俺と賭けをしないか?」
「ゲスが。でも今の私は機嫌が良いから聞いてやるからいうだけ言ってみなさい」
「俺が勝ったら1発やらせろ!いや、俺の女になれ!」
「はあぁ。で、私が勝ったら?」
「俺が勝つに決まってっから、言うまでもないぞ!」
「馬鹿なの?それじゃあ賭けにならないでしょ!私の純潔は高いわよ!」
「ラッキーだな!マジモンの初物かぁ!なら負けたらお前の奴隷になってやるよ!」
「良いでしょう。私は奴隷の身分だから、あそこにいる私の主人の奴隷になりなさい。それで良いわね?」
「良いぞ良いぞ!でもなぁ逃げんじゃねぇぞ!」
「私は魔法使いにして真言系の魔法持ちよ。つまり契約魔法が使えるの。それで縛れば賭けは成立よ。宜しくて?」
「勿論だぜ!宜しいぜ!くくく」
「相手のモノになる期限はどうするの?」
「ああん?そんなの死ぬか売るまでに決まってんだろうが!」
「分かりました。契約内容を言うから魔法陣に手を付き、自分の名と共に同意すると言いなさい。私が先に宣誓するから、自分の名前に置き換えて言いなさい」
「じゃあお前が俺の奴隷になると言う事だな?」
「そういう事ね。少し待ちなさい」
タニスが審判に少し話をし、俺の方を見て審判共々に手招きしており、良く分かないも取り敢えず俺はタニスの元に向った。
「・・・と言う訳で、契約は奴隷の主たるセル様にして頂くしか無いのです」
「感心しないが、君はそれで良いんだね?」
「構わしねぇよ!どうせ俺が勝つ!」
司会も面白そうに実況している。
「これはとんでもない事に!奴隷の少女が自分を賭けたぁああ!なんと、お互いがお互いの奴隷になる事をだあぁ!いま来ているのはタニス選手の主だぁ!ああ!契約魔法だぁ!これでどちらも逃げられないぞおおお!」
イレギュラーなイベントに会場が沸いた。
この大会そのものが刺激を求めたエンターテインメントだからか、このような事も【有り】なようだ。
実況までされており、もう断る事が出来ないようになっていた。
こんなむさ苦しく、臭そうな奴なんていらん!と思うが、どこで役に立つか分からない。
まあウルナさん達の工房の警備をさせるってのも悪くない。
「・・・は勝てば奴隷たる私タニスの主人となる。負ければ我が主セルカッツ様の奴隷となる。期間は死ぬか売り払うまで。引き渡しはこの武闘大会終了時。同意するならば2人は宣言せよ!」
タニスがスキルを使った。
契約魔法の1つで、口約束がクソみたいな世界で拘束力を持つので、かなり重宝されるスキルだ。
「私セルカッツ・フォン・ダイランドはここにタニスとミジックルの奴隷を賭けた勝負に伴う契約に同意する!」
「俺ミジックルはここにタニスとの契約に同意する!」
俺とミジックルと言うこの相手の首に光が輝き、やがて左手の甲に小さな魔法陣が浮かび上がった。
審判に確認して貰い、害はないとされ試合続行の許可が出た。
俺はそのままリングサイドの付き人と一緒に見届ける事になった。
「お待たせしました!それでは格闘部門、トーナメント準々決勝を始めます!開始!」
ミジックルは俺より握りこぶし1つ大きい。
知らなかったが、この格闘部門の優勝候補だ。
賭けのオッズもタニスが1番高く、ミジックルが低かった。
勿論ウルナさん達にお金を託し、俺達の優勝に賭けている。
俺達は見た目や予選での勝ち方から予想屋の評価は低かった。
だからオッズが高く、誰か1人が優勝すれば問題なく稼ぐ事が可能だ。
ミジックルは両手を掲げてタニスを捕まえんと駆け出したのだった。
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