第15話 トラップと隠し通路
魔物には大きく分けて2種類ある。
魔力が凝縮されると魔石が生成されるが、その魔石をコアとして肉体が形成される魔力凝縮型が1番多い。
もう1つは魔物が自然交配し、メスが妊娠して出産する形で生を受ける生体型だ。
前者は死ぬと魔石を残し体は霧散するが、後者は死体が残る。
今回は霧散したので前者だ。
しかし、後者は厄介だ。
通常の個体より能力が高く、群れのリーダーとなったり上位のジョブに就いている個体が多くなる。
勿論、前者と比べると遥かに強力だ。
3人は役割を自主的に分担し、警戒しつつドロップを拾ってくれた。
何故のほほんとドロップを回収しているかと言うと、この先お金が必要になるから!という訳では無い。
魔物を倒せられる実力がある者が、この場で魔物と戦闘を繰り広げた!そういった痕跡を残さない為に行っている。
争いの跡だけなら、獣が魔物に襲われた程度に思うだろうが、魔石が落ちていれば話は別だ。
だからリスクを承知で痕跡を消していく。
息も整い痕跡を消し終わるとゴブリン達が来た方向へ進んだ。
すると・・・あった。
蔓等に埋もれているが紛れもなくダンジョンの入り口だ。
「あそこが目的のダンジョンだ。ここを通って行けば隣国との国境近くに出られる。皆大丈夫かい?」
「はい。ライについて行くわよ!」
シーナに続きリリア、アリスも頷く。
ギギギギ・・・
古びてはいるが扉は健在で、蝶番から軋み音がするも見た目に反しほとんど力を必要とせずに開いていく。
早速ライトの出番だ。
スキル【光】の付随能力で松明の代わりになる。
「わーい灯だ!これで松明は要らないぞぉ!」
場違いな口調でおどけてみせたが、3人は固まってしまった。
何か言ってよ!
これじゃあ痛い子じゃないか!
自虐的に言ったんだよ!
この場を和まそうとしたんだよ!
「わーい灯だね!って何言っているのよ!私達がビクビクしているのにふざけないで欲しいわ」
通じなかった・・・
「あっ!ひょっとして私達を和まそうとしてくれたんですか?」
リリアのツッコミにシーナが返してくれた。
「そ、そうなんだ。こういうのは慣れていなくてさ」
「ライ・・・かわいい」
アリスにかわいいと言われてしまった。
「コホン。ここは魔神とか魔王の類が封印されているはずだから気を付けるんだ。頼むから何も触るなよ!触らなかったら何も起こらないから」
特にリリアに告げた。
リリアの方を向いて告げたが口を膨らませ拗ねていた。
途中壁に手を付き体の負担を減らそうとするので、そのような動きが見える度に休憩をした。
地上や地下でもなくダンジョン内に城があり、条件を満たすと城の入口が地上にも出るんだ。
このダンジョンはもう機能しておらず、今ではダンジョン跡だ。
今では昔の河川跡が隣国の国境近くを通っている事は知られていないが、俺はゲームの知識として知っていた。
本来城や付随する抜け道を出るだけなので大した時間がかからない距離なのだが、警戒しつつ進む必要からかなり神経を使いつつ歩くのでどうしても遅々としか進まない。
30分で城に辿り着いた。
ゲームで何度も来たから場所は頭に入っているので迷う事はなかった。
「将来の為にひと仕事しなきゃなんだ。ここで待つかい?」
「一緒に行く!」
「一緒に行くに決まってるでしょ!」
「連れて行って下さい!」
即答だった。
「ここに戻るまで緊急事態以外、ひと言も喋るなよ!」
3人が頷いたので城の中へと進む。途中魔王はこちらと矢印を扉や壁に付けていく。
魔力を持った人間になら見えるが、魔族や魔物には見えない特殊なインクで書いていく。
ご丁寧に最終ボスキャラがいる部屋の入り口には弱点や攻略法を書いておく。
そしてボスキャラが封印されているところに来た。
床に穴を開け、そこに途中拾った剣の柄を差し込み封印されている体を動かした。
封印が解けると同時に剣が刺さるようにだ。
裏技だ。
バグ技らしいが、ネットであったのだ。
ゲーム初期にボスキャラが封印されているところに行き、拾った剣でトラップを仕掛ける。
すると封印が解けると同時に体が床に挿しておいた剣に刺さるといった具合だ。
魔力で体表強度が強化されるまでのコンマ何秒かの間に倒す事が可能になる。
やった事は無いが、ストーリーが進まずエンディングがおかしな事になるそうだ。
エンドレス化するのでは?と言われたが、やった者の話しだと段々ゲームが重くなりそのデータではカクカクとしか動かなくなるので途中で止めたらしい。
しかしここは現実だ。
違うと思う。
トラップを仕掛けた後、壁に落書きをしておいた。
へのへのもへじを書いてやったのだ。
「よし、終わったからここを出るよ」
不安そうにしていた3人の顔が明るくなった。
2時間ほど城にいたが、今の段階においては情報通りだった。
俺は別に封印が解けた最終ボスを倒そうとは思っていない。
そう言えば、ラスボスの正体って何だったのだろうか?
城の主のようだから、魔王?
まあ良い。
俺の望みは俺別にTUEEEをしたい訳ではない。
転生した後の数年間は、ゲームのプロローグに出てくる理不尽に死んでしまうキャラを救い、その後は自由きままに生きる!だった。
ボスキャラなんてどうでも良い。
まあ、これは行き掛けの駄賃ってやつかな。
先日まではシーナと2人で年老いて死ぬまで暮らしたいなだったけど、リリアとアリスの2人の事を考えなければならなくなった。
自由に生きて行けと言うにしても、奴隷から開放しなきゃなんだ。
当面の目標は3人を奴隷から開放する!だ。
その後の事はその時に考えよう!
そんな事を考えながら1時間ほど探索していたが、何とか隠し通路に辿り着いた。
場所自体は分かっていたはずだが、転生してから10年近く経っており、その為に記憶が曖昧になっていたからだろうか、思ったより時間が掛かった。
これまで封印が解ける前に来た事がなかったから分かり難かったんだ。
途中ネズミ等の小動物がうろついており、物音がする度に戦闘態勢に入っていたりした。
タイル地の壁を押すと、人がなんとか通れる大きさの入口が開いた。
そこが開くと分かっていないと先ず見つからない。
特殊な配列で置かれている燭台からどれだけの場所にその隠し扉があるのかを覚えていたから辿り着いた。
そこは河川跡だった。
正確には水路だった。
今は途絶えてしまったか、堰き止められていて水が流れていないが、ゲーム終盤には水が流れて来た。
というか水攻めのトラップが発動されて苦労したもんだ。
取り敢えず隠し通路をやり過ごして少し進んだ後、そこを人が通った痕跡を僅かに残して隠し扉に戻った。
それから痕跡がない事を確認し、隠し扉から通路に入った。
それと扉を元の状態にする事も忘れない。
5分ほど進むと休憩する事にした。
「3人共頑張ったね。この後この水路を抜けるまではひと安心だと思う。まずあの隠し通路は見付からないから」
「じゃあなぜライは知っているの?」
リリアが突っ込んできた。
「いずれな。今はまだ聞かないでくれ。知ったら俺の事を軽蔑するかもだからさ」
「そう。分かったわ。まだ秘密を打ち明けるまでの信頼を勝ち得ていないって事ね」
「そういう訳じゃないんだけどさ、短時間でうまく説明できなくて。長くなるからまた今度な」
「さあ皆さんお昼にしませんか?携帯食ですけどね。まだ1日は進まないとなんですよね?」
「アリスありがとう!うん。お腹すいたわね!」
本当はもう少し進みたかったけど、体力、気力共に彼女達の限界が来ていたので、少し早いがお昼休憩にした。
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