行き場のないヒーロー

うすしお

プロローグ

プロローグ

 結婚できて、娘を授かって。それだけで俺は、かなり幸せな人生を歩んでいるのだと思う。だけど、俺の小さい頃は、恋愛しか目の前に見えていないような青春が嫌いだったな。


 なんてことを、俺はシャカシャカと妻に頼まれた皿洗いをしながら思う。はあ、と俺はうんざりしないでもない。まあ、休日は暇だったし、時間あるからいいんだけどさ。


 皿洗いをしながら、俺はリビングでソファにちょこんと座っている娘に目をやる。俺のかわいい自慢の娘は、今は絶賛美少女戦士にはまり中。テレビに吸い込まれてしまいそうなほど、画面に集中している。


 娘は結構、美少女戦士のアニメだけではなく、ヒーローものだったりバトル漫画にもハマっている。そういうところは、俺と似ているのかもしれないなと思う。


 娘の集中っぷりを見ていると、俺はだんだん昔のことを思い出していく。


 君は知らないと思うけどね、俺も、テレビの中のヒーローみたいに戦ってたことがあったんだよ。と、俺は心の中で娘に呼びかけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る