ずっと隠してきた妖精眼、月の王子様にバレてしまいました。
碧空
第一章 事の始まりとやら
やってしまった。
とうとうやってしまった。
今まで必死で隠してきたのに。
正直大した能力でもないけど、それでもこの身に宿る恩恵は本物だから。家族にすらバレないようにひた隠しにしていたのに。
なのに、なのに。
「あなたはもしや、精霊の加護を受けておられるのですか。」
私の目の前に立っている、銀…じゃなかった。髪も目も服も真っ黒な美しい青年は、私の目を嫌になるほどまっすぐ見てそう言った。
これは、まじでやっちまったという奴ですわ。
私はその感情に支配され、頭が真っ白になった。
事の発端は、私の過去へと遡る必要があるだろう。
まずは数時間前、ツァレストゥラ公爵家のひとり娘である私、ステラ・ツァレストゥラは我が国フーガ王家主催のパーティへと参加する為足を伸ばしていた。
私の瞳は我が家特有の美しいサファイアブルーであり、銀色の長いストレートヘアを
私が悩み抜いて選んだ、夜空を思わせる濃い紺色のAラインのドレスには、星を思わせる小ぶりの宝石が派手にはならない程度に縫い付けられている。
うん、我ながら悪くない趣味だと思う。
そして、派手ではないが美しいこのドレスは、周りに清廉な印象も与えてくれるだろう。
そう、私は私の婚約者であるこの国の第一王子から別れを告げられる事を目的として、このパーティに参加したのだ。
さて、ここから少し長くなってはしまうが、まあ聞いてほしい。
私には公爵家の令嬢としてフーガ王家に嫁ぐ責務があった為、王妃教育を幼い頃からそれはもう厳しく受けてきた。
教育を始めたての私は正直優秀とは言えなかっただろうが、16の今となっては…というかある機会を境に、塵も積もればなんとやら。と言うことですっかり貴族言葉に貴族マナー他にも様々な知識がみっちり体に頭に詰め込まれている。
私はべつに王妃になりたかったわけではなかったため、マナーやら興味のない教育やらが嫌で嫌で仕方がなかった。
この世界は貴族も平民も、魔法を使うことが当たり前の世界である。幼い頃──8,9歳頃だったろうか。
家にあった本をパラパラをとめくりながら自己流で行った【測定】を見る限り、私はおそらく魔道士としての才を強く持っていた。
属性は"風"と"光"。前者はともかく、後者の属性はあまりにも珍しいものだ。
火、水、風、土の四大元素と、光、闇の原初元素でこの世界は構成されているといわれている。
殆どの人間はは四大元素の素質を持って魔法を使うことになるのだが、原初元素はそれよりも高度な素質がなければ扱えない。
要は、光と闇の素質を持つ魔法使いは、それだけで天才だと言えるのだ。
そして、その時私は理解した。私が周りの人間に見えているこの"色"は、光─精霊の加護によるものだったのだと。
私は昔から、ある意味で空気を読むことが得意だった。
というのも、人の周りには色がまとわり付いていて、その人となりがそこの色から感じ取れたからだ。
穏やかな人はひだまりの色。
熱心な人は明るい炎の色。
恨みつらみを抱えている人は深い深い暗紫色。
感情によってもやや変化が起こる。
例えば普段以上に不穏な色をしている人間の差し出した紅茶はこれは飲んではいけないものだ、と悟り、家の執事に「あの人なんかいつもより暗い(色をしてる)ような気がするからちょっと怖い。あの紅茶、調べてほしい!」と、こっそり話していろんな意味で処理をしてもらった。なんてことがあった。
そして【測定】する為に持ち出した本によれば、
『魔法を使うという事は、その土地にいる精霊の力を借りるということである。
魔法を使う者の中には精霊に深く愛されたものがおり、その者は日常的に不可思議な力を使用してしまう事もあるだろう。
例えば炎の精に愛された者は周りの気力を高めたり─────光の精に愛された者は、真実を見抜く目を持つなどとも言われている。』
いやもう完全にこれではないだろうか。色という曖昧なものではあるが、なるほど真実を視る。そうとも取れるだろう。なるほどなるほど。
出る杭は打たれる。
もしくは嫌というほど搾取される。
嫉妬深く欲深い周りの大人たちを見て、幼い頃からそれを理解していた私は、風と光の魔法──特に後者の才能は黙っている事にした。
それでも風の魔法が使えることは悪くない。遠くにいる人への連絡手段、そして風を起こして空を飛ぶことにより、短時間で移動することもできる。
王妃が使うものではないと言われれば、まあそれまでなのだが。
まあそんな訳なので、それとなく我が婚約者殿に、魔法の勉強、したいな〜という意図の話をしてみたのだ。
が、しかし、私の婚約者である王子はと言うと。
「…お前、何を言っているんだ?そんなことしてる場合じゃないだろう?私とともに王妃になる人間なら、まずは今やらなければいけないことをやるべきだろう。」
ぐう正論だった。本心から言っているのも"色"からよぉく分かった。
まあ
少し悔しかったが、やるべきことができてからもう一度聞いてみようと、そこはひとまず引き下がった。
そして数年が経過。
同い年よりも何百倍もの努力を重ね、王妃教育もとんでもない速度で進めてもらい、13歳にして素晴らしい淑女としての泊が押された少女が誕生した。
公爵家の皆は泣いて喜んでいた。
そして私は、王立学校に入学する15歳の春になる前に、もう一度お願いをしたのだ。
「どうか王妃になる前に、私に魔法を専門的に学ばせてはいただけませんか」と
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