メイドな隊長戦記 ~異世界に転生してメイドしてたら、隊長と呼ばれて戦うことにもなりました~

桜梅桃李

第1巻 メイドな隊長、誕生!

序章 メイドな隊長

第0話 転生したら、メイド服な隊長でした

『転生の準備が整いました。

 ステータスは次の通りです。

 ※注意:転生後は、ステータスを確認できません。間違っても「ステータス!」とか叫ばないように気を付けましょう


 能力

  筋力 :B

  体力 :D

  知力 :A

  精神力:S

  素早さ:B+

  器用さ:F

  魅力 :A+(補正:対女性+++)


 固有スキル

  前世継承:前世の記憶と経験を継承

  妖精語 :妖精を認識し、意思疎通が可能。また妖精と契約した魔法を行使可能


 一般スキル

  指揮官リーダー :チームの士気と連携に+補正

  統治者ルーラー :統治能力に+補正


 転生しますか?(Y/N)』




   ■■■




「……あのときYESを選んだ結果、こんな人生になりましたとさ」


 メイド服の小柄な少女が、空に向かってつぶやきつつ、村の中を歩いている。

 いや、少女と言っては悪いかもしれない――彼女は一応、今年成人の儀を済ませているのだ。


 彼女の名は、レオナという。

 もちろん、してからの名前だ。

 転生前は成人男性で、今もその記憶を残している。

 おかげで、たまに転生時のことを思い出しては、溜息をいていた。


「たしかに、性別はステータスに表示なかったけどさ――あんな補正付いた『魅力』だったら、イケメンでハーレム! とか思うよね……」


 でも、女だった。


「その上、あんなスキルついてたらさ――前世の記憶でチートして、魔法剣士として勇者一行パーティを率いて魔王をたおし、最後は国王! とか思うって、普通」


 レオナは、歩きながら道に落ちている小石を蹴る。

 真っ直ぐ転がるよう蹴ったつもりだが、小石は途中で跳ねると、脇の草むらに飛び込んでいった。


「でも現実は、こーでした……っと」


 胸元をつまんで軽く引っ張る。


 メイド服だ。

 頭にはホワイトブリムだ。


 この服は、レオナの仕事の制服として支給されたもの。

 そう。レオナは『メイド』なのだ。


(さらにね……)

 

 腰に目をる。

 両側に、小振りの双剣を帯びていた。

 素早さを武器に、妖精魔法を駆使して双剣を振るう――そんなレオナの実力は、本物だ。

 そう。レオナは部隊の『隊長』として、今ここにいる。


 でも、メイド服。


(つまりは……)


 そう! レオナは『メイド兼隊長』なのである!!


「――ってなにそれ? さすがにこんな人生、予測できないって」


 どこで、こんな人生に迷い込んだのだろうか。

 そう思ってしまう。

 思ってしまうが。


「でもまあ、この人生も嫌いじゃないけどね――みんなも好きだし」


 レオナは青空に浮かぶ白い雲を見上げ、運命の小石が跳ねた、あの日のことを思い出していた――。

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