第62話 春の嵐

 嵐の訪れは、突然だった。


 元々、来ることは分かっていたし、大宮の防衛は完璧だったので、二ノ宮としては安心していた。

 大宮のガードライヴに回る予定のバンド編成も四十番目まで決まっており、都市防衛の為に一組当たり五分から三十分のスパンで、防衛に対応する設備がそろっている五つのライヴハウスを使い順番に演奏して、ファージ誘導による音響障壁を展開する。これにより、流動的に変化してゆく肉嵐を手堅く丁寧に防ぎ、自動防衛では手の届かない細かい部分もコントロールしてゆく。

 迫りくる何千万トンもの肉の津波を音響障壁だけで受け流すのには限界がある。ショゴス自体が光合成による酸素や水素を含む為、住民がいる地域での爆撃による殲滅は非常に危険だし、かといって市街地付近で毒物は論外なので、結果”物理で殴る”で殺して動けなくして、嵐が過ぎ去った後に安全な状態で順次焼却、という非常に原始的な処理が必要となる。元は菜食主義者による人災とはいえ、もう大規模自然災害だ。


 今回の肉嵐は赤道から春一番によって吹き寄せられた大きな群れが赤城山山頂付近で元々停滞していた大きな群れと合流し、溢れ出た肉たちが陸と空から押し寄せるて来るというとんでもない大事になっている。

 上下を肉の壁に挟まれた地域では高さ千メートル級の肉竜巻がいくつも発生し、全てを飲み込み、喰いつくしながら南下が始まっていた。

 推定質量二千六百八十万トン。酸素や水素を含んで膨張している部分もあるから、容積はもっと大きい。大宮の周辺に埋設用の穴を掘ってはいたが、当然潰しながら入れても全く足りない。東京ドーム二十個分は余裕であるんじゃないか?

 全部こちらに流れてくれば、たとえ都市を守れたとしてもエヌアールへのダメージは計り知れない。復旧にかかる時間は年単位となってしまう。

 なので、既に大穴が開いている赤堀付近で追い込み漁をかけて、群れの後ろの方を出来るだけ砕いてしまう。前を砕かないのは、結局餌になってまた群れの養分になり、二度手間だからだ。完全に殲滅できる部分だけ、爆撃可能な範囲内で丁寧に殲滅する。

 熱分解で蒸発させてしまえば良いと思うが、通常の音響障壁だけでは過熱が不得意なので無理だし、核を使っても難しいし、タンパク質が大量に蒸発したからって、消えてなくなる訳ではない。低高度で爆発させれば核汚染も深刻だし、拡散される核の灰は天文学的な量になり、環境や天候に与える悪影響は匙を投げるレベルになるだろう。


 因みに、ウルフェン・ストロングホールドはエントリーすらしていない。


「現状の最高効率のやつはまだ未検証だから、肉嵐への効果測定はしたいけどねー。ランキング組の実地データだけで事足りるし」


 気象データに目を凝らしながらつつみちゃんがコーヒーを啜る。

 これが王者の貫禄か。


「夕方から雨になりそう。時間が重なったら音が消えるから厄介」


 今日の金属袋はビーフジャーキーをモゴモゴしている。

 隙間から口が見えそうで見えない。もどかしい。


 俺は、肉嵐のライブ映像を視ながら公共ニュースを追っている。

 今、時間的には仕事中なのだが、肉嵐の所為で警戒レベル五が発令されている。肉嵐の時の避難は通常の災害時避難とは違い、逃げ場がない時は一か所に集まると大きな餌場と認識されて危険度が増すことから、防衛力がある施設への分散避難が推奨されている。

 音でのファージによる筋肉への働きかけは、絶大な効果が有る事は、身をもって体感している。

 ファージコントロールのやり方には、音波、電波の他に、絵画やオブジェクト、勿論自然現象も効果がある。基本、なんでも有りなのだが、音が一番扱いやすく、研究も進んでいる。ジャミングかけながら迫ってくる肉津波に対して、その場でチンタラ対応プログラム組んでられないもんな。

 音波も電波も雨の中だと阻害や減衰により制限が多少かかる。

 基本的な対策としては、迫ってきた肉の山に、あっちに行ってください、とか、ここを通らないで下さいとか、指示出しして、被害の出ない場所とか焼却できる場所まで誘導する。細かい物は後で個別対応でなんとかする。

 俺がシャワーの為に二酸化炭素で焼いた時みたいなやり方だ。

 街ごと押しつぶされ、何もかも喰われるのだけは避けたいからな。

 筋肉だけなら、反射を利用して簡単に動かせるのだが、脳や腸が形成された個体を含んでいたりすると狡猾になるので、騙したり殺したりする必要も出てくる。

 奴らにも生存本能は備わっている。

 自我が有ったら嫌だよな。

 ショゴス保護団体とかがこの世界にいないだけマシか。


 ライブ映像で、赤城山の麓、前橋の東側から爆撃が始まっている。

 群れの最後尾、地上部分を爆発の衝撃波で粉砕している。

 雨雲より低高度で浮いている部分に引火すると文字通り迫ってくる火の海が出来上がるので、繊細な作業になる。見たところ、全体像は肉で出来た積乱雲だ。赤城山からじわじわと南に迫ってくる。

 地表と上空の肉の隙間に撃ち込まれるグライダーミサイルと、積乱雲の頂上より高高度からのピンポイント爆撃のセットで、確かに減らしてはいるのだろうが、見た感じ変わっていない。台風にヨウ化銀撃ち込んだ方がまだ効きそうだ。多すぎだろこれ。大丈夫なのか?

 予報では大宮は直撃ルートだ。

 太田の西にある不毛地帯を抜け利根川を渡り、行田、上尾、大宮と一直線に来るらしく、該当する都市の防衛はガッチガチに固めてある。

 大宮から先は浦和を抜け東京湾にそのまま抜けていくらしいのだが、東京湾付近は人があまり住んでいないので、さいたま都市圏を抜ければ、後はほぼ放置だ。


「なぁ、これ大丈夫なのか?」


 見ていると、かなり激しい爆撃だ。やり過ぎじゃないのか?

 誘爆による延焼も何度かしていて、竜巻を伝って上空に火が届きそうになった時もある。消火用のガス弾もかなり撃ち込んでいる。

 進路は徐々に西へとずれていってるクサイ。


「伊勢崎と太田の間はファージ汚染が酷い空白地帯だからねぇ。でも何か変な進路だね」


 一緒に見てるノリユキが頭を捻っている。

 本社の第五会議室、ウルフェンのレコスタの隣の部屋に、俺はソファーセットを持ち込み各基地局から流されるライブ映像を四画面くらい使って壁一面に表示させている。

 なんか皆がレコーディングの気分転換に駄弁りに来てしまっている。

 避難指示が出て暇だからと、ソフィアも遊びに来ていた。

 メタルザックが菓子を凄い勢いで消費しているので足らなくなりそうだ。

 こら、ポテチは流し込むもんじゃないんだぞ!


「あら?こっちにいたのね」


 スミレさんが秘書軍団を引き連れてご来訪だ。


「隣にいなかったんで探したわ。ファージ遮断されてて気付かなかった」


 どんな影響があるか分からないのでこの部屋のファージは切ってある。

 因みに、メットは背中に格納してあるが、アトムスーツも着ている。

 何故ここまで怖がるかというと、大量のショゴスが近づくとファージの影響で人間がショゴス化してしまった例があるというオカルトニュースを見たからだ。

 遺伝子の中に変態を誘発するトリガーを持っていると、一定確立で発症。一度ショゴス化してしまうと治療は不可という恐ろしい病気だ!

 つつみちゃんに話したら笑われたが、俺は一般常識が通じないスリーパーだ。念には念を入れておきたい。

 あの天を突く肉の塊を見ると、何でも起こしそうな気がしてくる。


「リョウ君、ヒマリが怯えてるの。付いててあげてくれない?」


 俺か?


「あ。後、皆ライヴの準備しておいて。進路変更で西に大幅にズレてる。このままだと熊谷辺りを抜ける事になるわ」


「爆撃の指揮はどこが執ってるんだ?」


 俺が質問すると、秘書軍団がピリッと強張る。


「やっぱ分かる?あざと過ぎるのよね」


「ボス。それどういう事?」


 巨乳の方のドラマーが眉を寄せる。

 いやだってさ。何か。見てて、無理矢理過ぎだろこれ。


「これよ」


 スミレさんはライヴ映像を一つ消して、文字だけのファイルを表示させた。

 爆撃計画の最新通達書面だ。


「今回のルートが、エヌアール沿線の主要都市総舐めだから、さいたま都市圏議会が難色を示してね。強引にルート変更かけてるの」


 気持ちは分かるが。


「それって、変更後のルートに位置する防衛とかはどうなってんだ?」


 皆がスミレさんの顔を見る。


「勿論、全く間に合ってないわ」


 バカじゃねーの。


「都市圏内の要所は、ある程度対策はしてあるけど、完璧にはほど遠いわ。二ノ宮としては、資金拠出可能な都市から要請が来たらウーファーパイルを撃ち込む予定よ」


「この辺りであれの金額払える街って、羽振りの良い熊谷と籠原しか無いだろう」


 マッチョドラマーの声久々に聞いた。


「あたしあいつら嫌いなのよね。金に目が眩んで大宮ごと切り捨てようとした奴らじゃない」


 ソフィアは嫌いなものが多い。

 熊谷にも籠原にも思い入れはあるが。

 今回の話は俺には関係ないな。

 つつみちゃんに音声通話出力だけオンにしてもらって、一人最下層へ行く事にした。上にサワグチも呼べれば良いんだけど、まだそのレベルでは無いらしい。見た感じもう問題無さそうなんだけどなあ。保安上の問題もあるのだろうが、メンタルの問題は難しい。


 ソフィアはバンドメンバーでは無いのに、一番ブーブー言っていた。

 二ノ宮の社員では無いし、親友のつつみちゃんが貧乏くじ引かされるとなると黙っていられないのだろう。スミレさんに喰ってかかって、つつみちゃんが止めてる感じだ。

 スミレさんもガス抜きの為か、好きに言わせていた。大人だ。


 サワグチのいる階層に降り立つと。二重エアロックの窓越しに、小庭の椅子に腰掛けてパネルを二人で覗き込んでいるのが見えた。

 俺が来たのに気付き、一人が中に入っていく。お茶の用意でもするのだろう。


 同じパネルを俺も見せてもらう。上で見ていたライブニュース映像だ。立ってテーブルに手をついて見てたら、椅子を半ケツどいた、座れという事か。外見が少女のつつみちゃんと違って大人の女性なので少し躊躇する。

 今日のサワグチズは、だぼっとした厚めの部屋着上下で、中に白いシャツを着ている。サワグチは巨乳ではないのだが、胸元が大きく開いているので膨らみの上の方が見えてしまっている。白く透き通った肌が眩しい。

 胸元に目がいってしまったのに気付いたのか気付いてないのか分からないが、真剣に動画を見ている。

 俺がよく来るのに、何でいつまでたっても椅子が二つしか無いんだ?


「こっちに来なそうね」


 そうか。サワグチには情報が来てないのか。

 スミレさんに教えて可か連絡を取ったら秒でオーケーが出た。


「圏議会が進路変更させてるって言ってた」


「ああね」


 サワグチは俺の顔をチラ見して鼻で笑う。


「圏議会も被害想定額試算して頭が痛くなったんでしょ。だったら事前準備もっとキバれば良かったのに。あ~あ~。また燃えそうになってる・・・」


 時速二キロで進む粘菌状の群れは、遠くから見たところほぼ二分されていた。

 地表を流れる三割程は本来のルートを進み、他の大部分は上空の巨大な巣と共に新田を超えた辺りから真南に進路を取り始めた。

 何で上の雲肉は予報ルートを追わないんだ?

 市街地がもう近いので爆撃は終わり、動けずに死にかけたショゴスの撤去は前橋東周辺から既に始められている。

 素人目だと、進路的にはこのままいくと籠原ジャンクション直撃から、秩父の山沿いを抜けていくルートになりそうだ。

 アンカーは深谷か籠原の北に撃ち込むのだろうか。


「面白そうなの聞いてるんじゃん。あたしにも聞かせてよ」


 俺が垂れ流していた会議室の話に気付いたサワグチが有無を言わさず共有を迫ってきた。

 俺の首元へ手を触れて、接触型接続から強制介入だ。デリカシーの無い女だ。


 ウーファーパイルの撃ち込みはやはり熊谷か籠原に決まったが、予算的に五本しか契約できず、ギリギリまで判断を保留したいらしい。

 二ノ宮としては、早めに撃ち込んで現地でウーファーとライヴ会場を有線接続しておかないと只のカカシと化すので”早く決めろ”とせっ突いている。

 同時進行で、大宮のガードライヴ待機組後番の奴が一口嚙ませろと乗り込んできて、その場で交渉始めて、カオス状態だ。




「決めるなら早くして。ショゴスの雲が到達したら、パイルは撃ち込めても現地入りしてライヴは不可能」


 珍しく金属袋が苛立っている。


「わたしたちは別に行かなくても良いのに。行きたい人に譲ればいい。現地のバンドはエントリー無いの?」


 つつみちゃんは投げやりだ。


「ほら、本人たちもこう言ってる!あたしらに任せてくれ!」


 やたらデカい声の下品な服装の女がスミレさんに詰め寄って、秘書組と押し合いしていた。

 声もデカいが背もデカい。身長はサワグチより高そうだ。

 良く通る爽やかな声だ。

 軽くウェーブのかかった長髪は髪色がプリンで、ノーブラで下乳が見えそうなピンクのチビTシャツにケツが見えそうなデニムショートパンツで、小麦色の肌を惜しげもなく晒している。まだこの時季、外を歩くのが寒そうだ。

 トランペットとのツインユニットという珍しい組み合わせだ。

 小柄なペット使いの性別は分からないが、黒スーツでペットのケースを持って後ろに控えていた。


「熊谷市役所としては、ウルフェンに是非頼みたいそうよ」


「ボス~。あいつら、この間の件で信用マイナスだから、どうせ点数稼ぎしたいんだろ?パイルアンカーだけ撃ち込んで放っておけよ。あんな奴ら」


 巨乳ドラマーはご立腹だ。


「僕は雨の中移動するの嫌だから、行くなら早く現地入りしておきたいなぁ」


 駄犬は別の心配をしている。


「警備も只で全面的に担当するとか言ってるけど」


 との一言に皆一斉にブーブー始まる。

 片手を上げて皆を黙らせるスミレさん。


「”大宮の警護じゃないと引き受けない”とは既に言ってあるわ」


 ウルフェンの皆は、当然だと頷いている。

 実際、何されるか分からないしな。

 混乱に乗じて今度こそ止めを刺しにくるかもしれない。


”スミレさん、二ノ宮が保持してるウーファーパイルってどんな感じの奴なの?”


”公式データだけで、所持個数とか場所は教えられないけど。データベースにアクセスして良いわ”


 太っ腹。いや、違う。スミレさんにその言葉は失礼だ。


 別に、許可なんて取らなくともアクセスはできるのだが、世話になってる会社の企業秘密勝手に覗けば心証も悪くなる。

 可能な部分だけ見せてもらう。


 二ノ宮の所持しているウーファーパイルは静止衛星軌道上に置いてある小惑星に格納されている。太陽光発電をメインエネルギーとして自律建設される無人宇宙ステーションで、付近のデブリや小惑星から資源を調達して地上からの供給は最低限で可動するそうだ。

 現在、人を宇宙に送るのはコスト面で不可能だが、ロケット打ち上げは資金力のある企業なら割とスタンダードに行っているらしく、二ノ宮もその中の一つだ。

 資源不足により全世界衛星通信網を構築するまでには至っていないので、もどかしい。

 その宇宙ステーションで作られたウーファーパイルは、全長五十五メートル、直径四メートルの六角柱の形状で、メインフレームは炭素繊維複合材で出来ている。それを、大気圏突入に耐えられるように気化目的の遅溶性金属でコーティングし、地表へ向けて重力加速度のみでピンポイントに撃ち込む。

 百メートルから五百メートルの間隔で撃ち込んだウーファーパイルは文字通りウーファーの役目を果たし、入力した音を増幅して無風状態で二キロ先までのファージコントロールを可能にする。

 今回のような緊急時で、防護壁や避難誘導が間に合わない場合、ファージを使って肉の流れを変更出来るので非常に効果的だ。

 只、使用用途がショゴス対策となった場合、色々問題が出てくる。

 無線接続にすると当然、ショゴスからのファージ介入やテロのハッキング被害に遭うし、有線接続するには当然、撃ち込んだ後繋がなければならない。

 あの規模の群れだと、ショゴス側からのファージ介入の規模は人間が太刀打ち出来るレベルではないので、有線一択。

 都市防衛の要として使うのなら、早く落として繋がないと使用不可で無駄になる。

 肉嵐の被害対策はどこの自治体もそれなりにしているが、あくまでも”それなり”で。直撃したら住民もろとも街ごとすり潰されて餌になり、更地が出来上がる。

 音響設備があれば、自動演奏である程度耐えられるが、手変え品替え侵入してくるショゴスを完全に防ぐにはやはり細かい駆け引きへの対応が必要となる。

 そこで、音楽家たちの腕の見せ所という訳だ。

 パフォーマンスも含め、効果的にファージコントロール出来る人材は引く手数多だ。曲も歌も良ければ、札束の風呂に入る生活も夢では無いので、大きな被害が予想される地域には命知らずのバンドマンが夢を求めて集結する。


 熊谷も、籠原も、急激な拡張でまだ都市防衛設備が整っていない。

 いくら命知らずな奴らでも、自分の曲を奏でられる環境が整っていない所へ命を捨てに行く気は無い。

 因みに、熊谷と籠原にいたエントリーチームたちは進路変更を知って即逃げ出したらしい。相当貧相な設備しか無かったんだな、肉嵐が到達したら逃げられないし、泥船と一緒に沈む気も無かったのだろう。

 折角拡張して明るい未来が見えていた街づくりも、防衛計画を後回しにしていたお陰でおじゃんになる訳か。


”熊谷の壁ってまだ完成してなかったのか?”


 あの壁があれば余裕で防げそうな気はする。


”星川の裂け目の所がスカスカなの。全部抜けてくるわね”


 あのエルフのいた割れ目か。なんとまあ。


”見た目だけ立派な防壁なのか”


”市街戦の防衛ラインとしては普通に使えるんだけど。ショゴス対策後回しにしてたのが裏目に出たわね”


 スミレさんがあのまま開発を主導してれば、なんとかなったのだろうか、文字チャットだけだが、少し悔しそうに感じる。元々、春には赤城山から肉嵐が来るって話じゃなかったのか?春一番と合体したから巨大過ぎて対処不可になったのか?


”投下から防御開始までどのくらいかかるんだ?”


 もう、ショゴスの南下組たち、先頭が利根川超えて妻沼に来てんぞ?

 時速二キロなんだろ?上空の雲はもっと先行している。


”落下に三十五分、冷却に五分で設置作業直ぐ始めたとしても、トータル四十五分が最速ね。リョウ君何とかしてくれるの?”


 はぁ!?ケーブル敷設間に合わなくね?

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