従姉と妹の三人で幸せになりたい「終わりから始まりに繋がる起業」~ホリゾンタルとヴァーチカルは永遠に交わらない

神無月ナナメ@カクヨム住人(非公式)

プロローグ「おバカちゃん注意報?」※韓流ドラマは無関係

 深夜に響く電話なんてろくなもんじゃない。あれは誰に聴いた言葉だっけ?


 充電中のスマホから鳴るのはデフォルト音。ついでに布団もシンクロした。

スヌーズ着信……無意識で右手に強く握った。画面表示を見ながら戦慄する。


「はい新田です。なんか緊急の要件?」ほぼ同時に耳元で呻く女声がヤバい。


『定刻に確認したら病変です。205室の狩野さん意識不明なんですけどっ』



 ほらあれだよ不幸の電話。あぁ在りし日のお母ちゃんが嘆いた言葉だっけ。

お母ちゃんの父ちゃんであるお祖父ちゃん。亡くなった時刻が真夜中なんだ。


 お母ちゃんの事故は真っ昼間だよ……そんな韜晦するような状況でもない。


 病院勤務の従姉に誘われた転職だ。決意して事務に伝えた退職が難航する。

有給消化辞退と引き換えに無理強い。新人教育込みの連勤でも仕方なかった。


 日中の十五連勤と前後に無償残業。三連続で夜勤明け日勤が最終勤務日だ。

未経験歓迎なんて言葉は大嘘だから。ちょっと待ってよ。どこかおかしくね?


 結局のところ事件性は微妙すぎた。退職の後だから詳しくしらないままだ。



 勤務先の老健は役職者を総入替え。指定の取り消しと施設の業務改善命令。

監視カメラの映像と業務実態に矛盾。死亡女性は親族がなく事故で終結した。


 お爺さんの施設長はセクハラ三昧。バツイチの副施設長とアヤシイ関係だ。

痰吸引について昨今の基準は厳しい。若くない新人夜勤者はマジで資格持ち?


 公表しない約束で退職金を割増し。実働に応じる形で5年分の和解金かな。

本来と意味合いまで違うんだけどさ。納得したから終わりよければ総てよし。



 もちろんこの国はそれなりに広い。ちゃんとした運営の施設も少なくない。

時代の流れで増え続ける後期高齢者。昨今教育の場に発達障がい者も数多い。


 揶揄する意味があるかもしれない。一番かんたんな国家資格の介護福祉士。

高齢介護と障がい福祉の複合資格だ。実働者が圧倒的に不足する業界になる。


 実務三年と六割正答率に実技試験。変更されて講習時間まで義務化された。

それでも医療業種の資格は八割正答。需要供給の関係と定着率の問題がある。


 犯罪すれすれの法人も少なくない。高齢者施設はケアマネージャーが必須。

障がい対応と高齢の介護は別ものだ。院内の介護は医療優先でこちらも違う。



「病院勤務の介護士は肉体労働だよ。それでも経験値と勉強時間が倍になる。

看護師仲間で夜勤中教育してあげる。収入下がるけど寮と待遇なら悪くない」


 従姉からの誘惑は甘すぎるミツだ。囚われたわたしに逃げようもないから。

結果論としてタイミングに恵まれた。おバカに足りないモノすべてがあった。


 高難易度試験にも一発合格できた。長くない人生だけど報われた気がする。

あんまり会えない妹を身近に感じた。毎日会えるのに従姉は心の位置が遠い。



「ゆうこりんあれマジ? 赴任したばっかの偉いさんと電撃結婚するウワサ」

 病院を駆け巡ったネタ。短期入院中にスパダリからプロポーズされた従姉。


「ハッハッハそれがねユリちゃん。アタオカ同然の初恋なんだけど聴いてよ」

 三歳も年長になる従姉は可愛い。ゆるふわソバージュにモデル体型なんだ。



 ここだけのナイショにして欲しいけど初めて恋したヒトそれがゆうこりん。


 もちろんカミングアウトどころか態度にできないよね。特殊な性癖だから。

昨今マイノリティとしてLGBTに対する理解が進んだ。地域性によるけど。


 水平はホリゾンタルで垂直がヴァーチカル。クロスさせると十字架になる。

ちょこっとだけ旧約聖書から有名な文。引用すればこんな感じになるのかな?


 もし人が死にあたる罪を犯し殺され。あなたがその死体を木にかけるなら。


 翌朝まで死体は木上に留めおいてはならない。必ず死体をその日のうちに。

埋めてしまわなければならない。木にかけられた者は神に呪われた者だから。


 あなたの神である主から賜わる地を汚してはならない。申命記21章引用。



 わたしは病棟の勤務だけど看護師じゃない介護福祉士。お世話がメインだ。


 ケアマネージャーの資格が生まれた当時。状況や経緯を皆さんご存知です?


 2000年4月スタートした介護保険制度。介護支援専門員が正式になる。

成立前は措置制度と呼ばれる時代。当時は障がいを役所がまとめて差配した。


 高齢者は老人ホーム。障がい者の自立支援。すべて役所の担当で認定する。

もちろん問題ばかりの制度。国税で管理される選択の余地もない時代だった。


 団塊世代から少子高齢化の到来。財源確保のため介護保険制度に移行した。

介護保険で選択肢は増加する。それからサービス提供の競争化も始まったよ。



 クオリティ・オブ・ライフは利用者の立場。生活の質を向上させる制度だ。


 要介護者と家族視点で適切なサービス。その提供を目標にして始められた。

ケアマネージャーが契約制度を加速させる。自己選択の実現にもなるQOL。



 大阪では南東側になる名門私大。付属中の進学先その選択が始まりだった。

時代が令和に変わっても女性優位。そんな組織として頂上に君臨する業界だ。


 受験の必要もない中学三年当時。仕事中に発生した事故で母親が他界する。

二歳年少の妹は軽度知的障がい者。町工場経営者の父と三人暮らしになった。


 中学の成績はそれなりだったよ。専門性が高い公立校に潜り込めるぐらい。

近所の親戚になる従姉は看護志望。二人で妹の面倒を見ながらバイト生活だ。



 国家資格卒業で介護施設に就職。従姉に請われ大学病院に常勤転職できた。

そこで父まで心臓発作で他界する。借金は自宅で相殺できたのが救いだよね。


 妹は当面の障がいサービス利用。日中は働きながらグループホーム生活だ。

障がい者雇用制度と卓越した技術。大手の手芸店に就労できたのは幸運だね。


 わたしも同業でスキルアップだ。勉強してケアマネージャーは取得したよ。

親の死から流されるだけの毎日だ。その終わりは唐突だったのかもしんない。



 マイノリティはマジョリティの対義語になる。そのまま一般人の少数者だ。

社会的な立場と価値観で大多数の人たちに属さない。差別される対象なんだ。


 あらゆる意味で人間が平等のはずもない。地域と性別に環境で能力は違う。


 そもそもがLGBT。レズとバイセクシャルがイマイチ自分でわかんない。

旧態依存的な社会構成。男性優位の国なんだ。同性婚は未だに認められない。


 それでもダンジョン誕生から澱んで停滞した世界は再稼働を始めたらしい。

もちろん物語上の本筋と無関係だ。我が道を往く未来しかない先にある起業。

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