4. とりあえず平謝りしてみる
…………何とかする方法、何とかする方法。
ワタクシは二日間みっちり使って――カエには上の空で話を聞く様子を心配されましたが――対策を考えました。しかし、結局思いつかず。
「クレア・シャフィーレ。お前との婚約は破棄する」
貴族学校ドセ・ワコレールの集会場、その壇上にて、ワタクシの目の前に居る王子、容姿端麗の金髪美男子シグニ・スマニースが、ワタクシに対して”再び”宣言しました。あとやっぱり父母は逮捕されました。
「…………も」
ワタクシは黙りこくって、必死に考え、そして。
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁっ!!」
ワタクシは全てのプライドを捨てて土下座しました。ジャパニーズシャザイ。頭を床に擦り付けてうえんうえんと泣き叫びました。勿論事前練習のお陰であり、自分が悪いとはこれっぽっちも思っておりませんが、しかし泣き落とししか無いと思ったのです。
「え、う?きゅ、急にどうした」
「ワタクシの父と母の件や!!ゼシカさんに対するワタクシの行動!!全て!!全てワタクシ悔い改めました!!とんでもないことをしてしまったこと、深く!!深く謝罪致しますうううううううううううう!!!!!!」
おでこが赤くなるくらい平頭しました。
「今シグニ王子から宣言された瞬間に漸く気付くことが出来ました!!ワタクシはなんと愚かだったのでしょうか!!ありがとうございますシグニ王子!!ワタクシ貴方の言葉ではっきりと自覚致しました。ワタクシはクズです!!人間のカスです!!」
「あ、え、う、うん」
そこはせめて否定して下さいまし!!と言いたくなりましたがグッと堪えます。
「ワタクシのような人間は牢獄に繋ぎ止めて頂きたい!!」
咄嗟に思いついたのは、牢獄に逃げることでした。牢獄は地下の深くに作られているので、ある種のシェルターとして利用出来そうだと思ったのです。加えて、せめて追放だけは勘弁して欲しいという思いもございました。
「ろ、牢獄、か……うむ……反省を促すにはそれもいいか……」
先生方の何人かが「えー」「もう準備してるのに」という顔をしているのが、這いつくばった状態でも窺い知ることが出来ます。が、知ったことではございません。そんな努力より大切なのはワタクシが生き延びることです。
「……分かった、よし、この女を牢屋に連れて行け!!」
その宣言と共にワタクシは学園の地下にある(なんであるんでしょう)牢獄へと引き摺られて向かうこととなりました。
「およよよよ……」
数年前のリアクションで反省している様子を見せつつも、ワタクシは内心ほくそ笑んでおりました。これで今回は助かるかもしれないと。
牢獄に繋がれて数時間が経過しました。冷え冷えとした石造りの格子は座り心地も悪く、なるほど牢獄と呼ぶに相応しい場所で、早々にワタクシはここに繋がれる選択をしたことを後悔し始めておりました。
よく考えたら罪状禁錮何年とかそういう話を聞いておりませんでした。何年くらい繋がれるんでしょうか。もしかして永年?それは流石に止めて頂きたいのですが、はてさて。
牢獄にはワタクシ一人だけ。平和なことです。父母は別の牢獄か、早々に処刑されたかどちらでしょうか。どちらにせよ余り興味はございません。この二日で、あの方々は相当前から国家転覆を計画していることがわかりました。同情の余地はございません。
ヒュゥゥゥゥゥゥゥ……。
「ん?」
遠くから何かが聞こえてきました。何か重いものが落下するような音が、上の方から。
「まさか……」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!
轟音と共に、石造りの壁や天井が落ちてきて――ワタクシの意識はそこでまた薄れました。
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