第5話復讐の鬼へと

歌保は、その足で市役所に行き離婚届の

書類を貰って帰って来た。

自分の欄を記入して、充の為に豪華な

料理を作って、帰りを待った。


「ただいま」


「おかえりなさい」


充はテーブルに、並んでいる豪華な食事に

違和感を覚えた。


「どうしたんだ?この豪華な料理は?」


「まぁ、食べて」


「いただきます」


美味しく食べる充を、歌保は見詰めていた。


「歌保は?」


「あ~私は、味見してたら、お腹一杯に

なっちゃって」


「そう言わずに、少し食べないと、又

痩せたんじゃ無いか?」


「そんな事、無いよ」


そして、食事が終わると歌保は充に

離婚届を渡した。


「何だ?これは?」


驚きの隠せない充。


「私、このまま充さんの奥さんで、居る訳

には、いかないの」


「歌保、それだけでは、理由が分からないよ

ちゃんと話してくれないと」


「…愛奈は、やっぱり殺されたの、犯人も

分かったし、目撃証人も見付かったの」


「えっ!やっぱり殺されたのか!それで

どうして離婚なんだ?」


「……」


「歌保は、何をしようとしてるんだ?」


「言えない、言うと充さんに迷惑が掛かる

から」


「何を言ってんだよ!家族だろう?愛奈の

事だろう?」


「……」


「もしかして、歌保は復讐する気か?」


歌保の顔色が変わった。

充は確信して、天を仰いで歌保に視線を

戻した。


「そうか、本当は止めるべきだろうけど

俺も協力するよ」


「駄目よ!充さんは仕事して、普通に生きて

お願い」


「愛奈も歌保も、居なくなったら俺には

生きる意味が無いよ」


「充さん…」


「で、どうする気なんだ?」


歌保は、今日美弥ちゃんに聞いた事を充に

話した。


「私は、愛奈と同じ思いを、あいつ達に

させてやるわ!」


「じゃあ、それは俺がやるよ!」


「充さん、男の人は変装しにくいけど

私ならウィッグも有るし、化粧で変わる

から私がするわ!だから充さんは終わる迄

普通に仕事に行ってて、お願い」


「う~ん、分かったよ」


ここから、歌保の復讐への道が始まる。

三人の行動パターンを、尾行して調べる

その他に黒田の両親、木村家の祖父母を

始め両親、矢田の両親の行動パターンも

調べ上げる。

歌保では、正体がバレ易いので、警察に

足が着かない様に、県外から探偵を雇った。

念入りに3か月の期間を費やした。

みんなの行動パターンは分かった。

まず、あの三人をどう、呼び出すかが問題

だった。

一人ずつでは無く、三人一緒に飛び降り

させたい、歌保は考えぬいていた。


(もう、ここは美弥ちゃんに頼むしか無いな

私が呼んでも、来ないだろうし)


そして歌保は、美弥の家を訪ねた。

美弥の母に


「もう、これが最後です!ここに来る事は

有りませんから、少し美弥ちゃんに、お願い

が有りまして」


「美弥~」


美弥が降りて来た。


「おばさん、こんにちは」


「こんにちは、美弥ちゃん、今日は美弥ちゃんに、お願いが有るの」


「何ですか?私で良ければ!」


「あの三人を、電話で呼び出して欲しいの

私が呼んでも、来ないだろうから」


「何て言って、呼び出せばいいんですか?」


「そうね、先輩の見方の振りをして、あの日

見た事は、一生黙っておきますって言う

誓約書を書いたんで、渡したいんですけど

って、どうして、そんな物をって聞かれたら

普通に学校に行きたいから、先輩達に着いて

行こうと決めたんでって、言って欲しいの」


「分かりました、じゃあ何処に何時に呼び出せばいいですか?」


三人の行動パターンは、分かってる明日の

夜三人は会う筈だから


「明日の8時に、私の家は監視が厳しいから

学校の近くの〇〇〇マンションに、来て

くださいって、それと家の電話じゃ無くて

公衆電話から掛けて欲しいの」


「はい!愛奈の為にも、私やります!」


「ありがとう美弥ちゃん、これで会うのは

最後だと思うけど、愛奈の為にも元気で

居てね!」


「おばさん?」


「高井さん?」


違和感を覚える、美弥と美弥の母。


「すみません!迷惑掛けて、もし電話の事を

誰かに聞かれたら、おばさんに脅されて

掛けたって言ってね」


「高井さん、何をする気ですか?」


「いえ何も、会ってあの子達に、気持ちを

聞いて見たいんです!」


「それは、そうですけど…無理は、しないで

くださいね」


「じゃあ、お邪魔しました」


美弥には分かった。

歌保が、しようとしている事が、でも母には

黙っていた。

その夜、美弥は公衆電話から、三人の先輩に

電話した。

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