最終回 最終決戦、残された宝物

私がレゼ子の作ってくれた武装?を着て戻ると、そこでは激戦が繰り広げられていた。

ユウナはダガー、イリーベちゃんは愛用の大剣でテウフェルと攻防を繰り返し、互いに傷まみれになっていた。


「何故、何故人間ごときにここまでできる!?」

「それは、お前を憎む思いと愛だ!」

「愛…、人間の余分な感情で私に勝てると思うな!」

「お前なんかに、私たちは負けない!」


ユウナがそう言うのと同時にイリーベちゃんがテウフェルを魔法陣で覆い尽くして大爆発を起こし、ユウナは精一杯魔力を込めたダガーで切りつけた。


そこに上がった砂埃が収まると、現れたテウフェルは右腕を失くし、腹に穴が開き、体中から出血、吐血している状態だった。


「貴様らはよくやった方だ。だがしかし、遅い」


ヤツがそうつぶやくと、イリーベちゃんはどこからか大量の血しぶきを上げて倒れ込んだ。ユウナは、そこに姿を確認できなかった。だからといって、そこにユウナがいた形跡すらなくなっていた


「お前!ユウナをどこにやった!?」

「さぁ。殺し損ねたと思ったら既に姿はなかった。だから、私が殺して消えたわけではない」

「でも、イリーベちゃんは死んだ、きっと…。お前には、引導を渡してやる!」

「そうか。だがお前も、特殊な武装をしたからといって私に勝てるなどと思うなよ」

「ああ!いっそお前と一緒に冥府まで行ってやるさ!」

「そうか。その覚悟、受け取ったぞ!」


私はさっそく、1つ目の魔導兵器『流鐵刀りゅうてっとうクサリ』を生成した。


「ほう。極東の国でムラマサを名乗る鍛冶師によって作られた伝説の刀。そんなもの、すぐさまへし折ってくれる!」


私はその刀でテウフェルに連撃を与えたけど、体の強度が増していた。それでも、切り傷を幾つか与えるに至った。それでも、すぐにそれは消滅してしまった。

次は『流星機械乱流銃スクリームガトリング』を生成した。


「そ、それは…。まさか…。」


それだけ言うと、テウフェルはこっちに走ってきた。私がそれのレバーを前に倒すと、数え切れない量の青白い弾丸が物凄い速さで連射された。

弾丸は逃げるテウフェルの後を追い、何十発も胴体を貫いた。


「くっ…。やはりそれだったか。しかし、その状態じゃこの攻撃は受け止められまい」


テウフェルは左手に魔力を宿してどす黒い紫色を放つと、猪突猛進してきた。

私の3つ目は、『英雄の盾』。構えるだけでどんな攻撃も防げる。


「くそっ…。何故だ、何故だぁぁぁぁ!!!」


テウフェルは発狂しながら何発も殴ってきたが、それも虚しく盾が防ぎきっていた。


「はぁ、はぁ…。流石に私も限界が近い。ならば、この身を魔力に還元してでも最大の魔法を放ってやる!」


そう言ってテウフェルは体よりも大きな魔法陣を展開して、チャージを始めた。

私も、そろそろ最後といくか。

4つ目兼5つ目…2つ分の力を使って最強の武器を作った。

『黒き流星の大砲』、大砲というより装着するタイプのビーム砲だけど


「さぁ、共に冥府まで行こうかライバル!これで終わりだ、【終焉の災禍ウェルトンタガンスカタストロフィ】!!!」

「止めてやるぅぅぅ!!!」


私も魔力をこの最終兵器に込め、ぶっ放した。思った以上太いビームが高出力、恐ろしいスピードで放たれた。


互いの間で青白いビームと紫色の魔法がぶつかり合った。


「貴様は確かに誇り高き英雄だったかもしれない。しかし、私の戦争を2度も失敗させはしない、貴様はここで殺す!」

「お前は悪だ!今ここで、私がお前に裁きの鉄槌を下してやる!!あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ば、馬鹿な!?私がホムンクルスごときに負けるなど…」

「私をそこらのホムンクルスと一緒にしないでもらえる?私は、愛を持った誇り高きホムンクルスだよ。わかったら、地獄で長々とお灸をすえられることだな!!」

「く、くそがぁぁぁぁぁ…!!」


ビームに押し負かされた魔法はテウフェルの方に逆流し、ヤツは飲み込まれた。

ビームが消え去る頃には、テウフェルの姿は1ミリの欠片も見られなかった。


私は、また多くの大切なものを奪われた。ラータ君、イリーベちゃん、そしてユウナ。私はホムンクルス。半永久的な生命。きっと、またレゼ子と2人だけの生活に戻るのだろう。ああ、もしもユウナが冥府で待っているのなら、いっそ私はここで死んで…。


「シエラ、ありがとう」

「あれ…?空耳…?まぁ、体が疲れてるし仕方ないのかな…。…ユウナ、会いたい、会いたいのに、もう、この世には…」

「勝手に殺さないでください」

「…え?ユ、ユウナ!?何で、生きてるの?」

「私、シエラとお揃いになりました」

「え?お、お揃いって?」

「私もホムンクルスになりました」

「…え?」


私は状況理解に苦しんだ。これって、もう私も冥府にいるの?


「シエラちゃん…。ごめんッス、これくらいしかできなくて…」

「え!?レ、レゼ子、何で体が透けてるの!?何で!?」

「シエラちゃんにはこの方がいいかな…、って思ったんッス。ラータ君とイリーベちゃんは手遅れだったッス。けど、何とかシエラと同じ構造のホムンクルスの作り方がやっと分かったから、瀕死だったユウナちゃんを…、肉体から魂だけ取り出して、新しく作った肉体に移植したんッス」

「もしかしてそれって、ユウナは生きられるけど、レゼ子は消えちゃうってこと!?」

「シエラちゃんの為に選んだ最善策だったんッス。…どうか、許してほしいッス」

「…分かったよ。その代わり、そのホムンクルスの作り方を私たちに教えて。じゃないと、現代に私が来れなくて、どっかの平行世界でユウナたちが苦しむことになるから」

「それはもう、ユウナちゃんの体に埋め込んだッス。アタシがこうしていられるのも、もう3分も満たないと思うッス」

「レゼ子、ユウナを助けてくれてありがとう。いつか、会いに行くから、それまで、それまで…、向こうの2人をよろしくね」

「任せ…る…ッス…」


レゼ子は、魔力になって散っていった。私とユウナは、大粒の涙が溢れかえっていた。


「ユウナ、私の為に戦ってくれてありがとう」

「いえ、それは私の台詞セリフです」

「死んじゃったみんなの為にも、早くこの世界に平和を取り戻そう」

「はい。シエラ、私たちはもう、ずっと一緒ですよ」

「うん。これからもよろしくね」


夕日の照らす地平線へ向かって、私たちは再び走り出した。


終わり ご愛読ありがとうございました!!!

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