【リメイク版】第9話 宣戦布告

私が気絶してから、一体どれくらい経っただろううか。シエラやラータ達には迷惑をかけてはいないだろうか。


「…ここは?」

「あ!やっと気づいた?もう3日も意識がなかったから心配したんだよ…。」

「それよりラータ、いますぐシエラを離しなさい」


案の定、ラータはシエラに密着していた。


「いいじゃないですか、ユウナさんがいないうちくらいはシエラさんに何しても…」

「私はもう起きましたが」

「ぐ…」


すると、急にシエラは立ち上がって私を抱きしめてきた。


「こうしてほしかったんでしょ?ホント、生きててくれてよかった…」

「シエラ…。ありがとう」


こうして、私は2週間で退院した。



「それで、結局あの戦いはどうなったんですか?」

「それが、『コントーレル』は一部の有能者が死んだことをごまかす為に

野生の影人シャドーを捕らえて擬態させてたみたいで。メノカも本当は戦後にあの病院で死んじゃってたみたいだし…」

「…そうですか。そういえば、ここ最近ギルドの動きがせわしいですね。よく病院の窓から外を眺めているとギルドの役員が大量のポーションや武器、それらの材料になるものを馬車で運んでいるのをよく見るんですが」

「多分、ギルドもそろそろ戦争が起こることを予感してるんじゃない?」

「ギルドが戦争に気づく…?それはおかしいと思います。厄災―—カタストロフィや魔力災害の前兆に気づくならわかりますが」

「だよねぇ。ってことは、大型の魔物でも復活するのかもよ!?例えば、恐怖の大王、アルマゲドンとか」

「そのたとえは少し幼稚な気がしますが…。そんなことはないでしょう。大型の魔物が復活する時は空が紫色になるはずですから…」

「待って、フラグ発言しなかった?本当に大丈夫なの!?」


すると一瞬だけ、空が紫色に見えた…ような気がした。まぁ、ユウナに言われて想像しただけか。


「ゔっ…」

「どうしたの?頭痛いの?」

「はやく、はやく皆さんに知らせてください。何かの力が恐ろしいまでに解放されました。あくまで力の開放であって、封印からの解放ではないのでよっぽど大丈夫だとは思いますが…」


『皆さんごきげんよう、我々ゼッシュトゥルオン帝国は再び全世界に向けて宣戦布告する!今回集中的に攻め落とす都市は…、最大のアサs…げふんげふん、失礼、とにかく、最大の敵が潜む国エンヴェルク!この国の主要戦力は軍隊じゃないらしいが。どの国がどの国と協力しようが自由だ。それでは、各国準備はいいか?終焉戦争キリング・ヴィィエンデン、開始!以上、帝国軍総裁テウフェルの提供でおおくりしました』


人々の混乱や動揺によるざわめきが街中を覆い尽くした。


「ユウナ、私たちは少しでも早く準備してゼッシュトゥルオン帝国に行こう。あの国までの道のりは長いし、ぐずぐずしてる場合じゃないよ」

「待ってください、シエラ。違和感があります。何故、あのテウフェルという男はこの国の主戦力がアサシンであることを知っていたのでしょう?それに、これから起こる戦争のことを終焉戦争キリング・ヴィィエンデンと呼ぶのは私たち4人くらいのはず…。なのに、あの男は確かにあの呼び方をした。ということは、あの男があの戦争の黒幕ではないでしょうか?」

「まあ、その可能性も考えながら気を付けて行こう」


こうして早急さっきゅうに準備を進め、私たち4人は夜逃げするように夜闇にまぎれて国を出たのだった。


「もしかしたら、もうここに帰ってくることはないかもしれませんね」

「ラータ君、何か心残りでもあった?」

「いえ、『ペッシュラーズ』に残ってるお父さんとお母さんに最後に顔を合わせておいた方がよかったかな…って後悔してるんです。僕が弱い上に上層部の人の邪魔をしてしまったばかりに離れることになってしまった親不孝な自分でも最後に少しくらい親孝行したかったんです」

「そっか。でも、最後って決めつけるんじゃなくて、勝って、生き残って帰れるようにしよう。その間、私が親代わりでもいいんだよ」

「お、親代わりじゃなくてお嫁さん代わりで…」


そんな他愛のない会話、これからの大戦争なんて嘘であるかのような会話を私たちはひとしきり続けた。


歩き続けて十数時間、朝日が昇りだした頃。大きな壁に囲まれたとある国の前に来ていた。


「ここが、『世界の食糧庫』の異名を持つ国エッセカマー、ですか…」

「この時間帯なら身分証明無しで国境は突破できると思うし、早く行こっか」


入国すると、まだ早朝というのに街中がにぎわっていた。この国も終焉戦争キリング・ヴィィエンデンに備えようとしているのかもしれない。

どんなお店があるのかと周りを見回していると、道端のベンチにとても見覚えのある顔がいた。イリーベちゃんだ。

何故か周りにパーティーメンバーは見当たらず、1人で黙々と買い込んだとおぼしき色んなパンを頬張っていた。


「イリーベちゃん、どうしてここに?」

「シエラみたいにうちより強い人がおることが証明できたき、思い切って一人旅に出てみろう思うてまずはここに来たんやけんど、まさか今になって大けな戦争が起こるとは思うちょらざったぜよ。おまさんたちも前線に出向くつもりやか?」

「うん。もしかして、イリーベちゃんもそのつもり?」

「まあそうや。やき(訳:だから)、一緒に行ってもえいか?」

「うん。いいよ。でも、今ここで話しておかなきゃいけないことがあるんだけどいい?」

「全然えいぜよ。急いじょらんし」

「今回の戦争を宣戦布告したあの男、テウフェルは、私が3年前に終わったあの戦争で殺したはず、なんだけど…」

「それってどういうこと!?詳しゅう聞かして」

「私が戦うことになったのは、5年前のこと――」


私は、あの日々を思い出した。


続く 次回からシエラの過去~キリング・デス・テレヴォース~篇開幕!!!

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