第16話 クエスト終了
俺は工場内に居たゴブリンの死骸を袋に回収する。これで倒したゴブリンの数は30体、ホブゴブリンは3体となった。
「やっと終わったか」
その場で座り込み、今回の戦いを振り返りながら休憩する。流石に運動不足の体に鞭を打ち過ぎた。
最後なんて運が低くて転んだのに、結果良いというわけのわからない状況だった。
「もっと体力はつけないといけないな」
一番実感したことは体力の無さだった。
インデックスファンドでステータスは増加しているがそれでも限度はある。
むしろ投資してステータスを上げるのもいいが、上げすぎて急に対応ができないのも問題だろう。
ステータスが上がるのは庭にできた異世界に入った瞬間のため、入るまでどれだけ体力がついたのかわからない。一種の賭けみたいなものだ。
「とりあえず、あの女性を探しながら戻るか」
クエストを終えたがカウントダウンは進んでいる。クエストの制限時間だと思っていたカウントダウンも違う仕組みなんだろう。
急いで帰る必要性もないが、ゴブリンを倒す体力もないため、襲われていても助けられるかわからない。
残酷な話だが諦めなきゃいけないこともあると俺は割り切ることにした。
俺は立ち上がり異世界の入り口に向かって戻ることにした。
♢
穴に戻る最中、やはり女性の姿はなかった。それどころかゴブリン自体も見なくなっていた。クエスト終了が何か関係しているのだろうか。
俺はトンネルの前に立ち止まり手を伸ばした。ここが通過できたらクエストをしっかりと終えたことになっている。
「本当にハイリスクな副業だよな」
俺は穴に手を伸ばすと問題なく通ることができた。クエストがちゃんと終了している証拠だ。
あのカウントダウンは制限時間内に討伐対象を倒して、戻ってくるまでの時間なんだろう。
【ホブゴブリンの討伐お疲れ様でした。今回の報酬を計算します】
前回と同様にクエストの終了を知らせるアナウンスが流れた。俺はこの報告を心待ちにしていた。
【ゴブリン討伐数30体、ホブゴブリン3体、民間人死亡0人です】
どうやらあの女性は死なずに生き延びられたらしい。逃げ切れたからこそ戻ってくる時にはみつけられなかったのだろう。
俺は心の中でホッと息をついた。流石に俺のせいで助けようとした命が亡くなったと思ったら、助けた意味も無くなってしまう。
俺の行動が無駄にならなくてよかった。
【それでは報酬の発表です。ホブゴブリン1体につき50万円で計150万円になります】
討伐報酬は前回と比べられないほど、増えたがゴブリンは討伐報酬に入っていないらしい。
「ゴブリン……3万円……」
命懸けで討伐した30体が無駄になってしまった。討伐対象ではない魔物だと、討伐報酬として貰えないことをここで初めて知る。クエストの中で説明はしていなかったし、今回の討伐対象はホブゴブリンだから仕方ないと言い聞かせるしかなかった。
【時間は1時間1万円で買い取ります。制限時間は残り8時間のため8万円となります】
前回は時間を使い果たしたが、時間が余ればお金に換金できる仕組みになっていた。これが今回一番の朗報だ。なるべく早く討伐対象を倒して、ここに戻って来れば良いということだ。
【マジックバックの中身は売却しますか?】
今回も袋の中身を売ることにした。基本的には今回もゴブリンから手に入れた耳や心臓、魔石などだった。ただ、ホブゴブリンから手に入れた3つの物を残すことにした。
見た目からして高そうな素材って後々何かしらどこかで使う可能性もある。ゲームの中でも武器を作るのに必要な素材だったりする。
僕は入り口に置いてきたスコップを見る。今後武器を作れるようになるかもしれない。その時が来たらスコップは卒業しよう。
【合計金額は228万円です】
討伐で手に入れたゴブリンのアイテムは70万円で売ることができた。ゴブリンを30体程度倒しているため2.3万円とコスパは良かった。
ゴブリンを倒して無駄にならずに済んだのだ。
魔物を倒してコスパが良いっていうのもどうかと思うが、お金を貯めることを考えるとゴブリン退治で得る素材を売るのが一番稼ぎやすい。
【お疲れ様でした。またのご利用をお待ちしております】
気づいたらいつのまにか右手に麻の袋を持っていた。
今回は前回よりもたくさんお金を稼ぐつもりだったが、袋の重さはあまり変わらない。
実際に100万円近く増えただけだから、数百グラムしか変わらないだろう。
「はぁー、しばらく異世界は休みでいいわ」
俺はトンネルを潜り現実世界に戻った。帰ってきた俺はすぐにスマホの時間を確認するとやはり数時間しか経っていなかった。
それなのに何日も異世界に行っていたように感じていた。それだけ今回はギリギリだった。
右手に持っている袋の中身のことを考えると、命懸けの副業も悪くない。これで夢のニートに近づいただろう。
俺は家に着くと汚れた体を綺麗にするためにシャワーを浴び、残りの俺の休みはいつも通りの日課である昼寝をするのだった。
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