第3話

 いんぎんれいなるかじわら景時はぜんたるふうぼうのままみずからも『やじり』でてのひらを傷付ける。景時はせんじようの文字列から降臨したもうたかいなる三本の脚をもつヤタガラスに搭乗してはんばくした。「われも鎌倉殿のほかに主君はなしともうしたまでである」と。ないてつ急をさとったかじわら景時の十五人はみずからの白銀の太刀やなまぐさい日本刀をぬいて景時をじようするかたちでヤタガラスをぼうぎよした。へんぽんとしてキュウビのキツネを操縦した源義経は弁慶らそういくばくかのたちにヤタガラスの陣営を包囲させた。キュウビのキツネとヤタガラスは眼球を血走らせおのおののそうぼうへいげいしながら虚空をゆうする。やがて時宜をみはからったヤタガラスがキュウビのキツネの前肢にみついた。ないに肉をきらせたキュウビのキツネはヤタガラスの首許にらいつく。キュウビのキツネの前脚は筋肉が露呈されりんたる血潮がながれる。ヤタガラスの首許はがいされほうはいたる鮮血がほとばしる。双方ともに絶体絶命の状態でなお二柱のかみがみはにらみあいつづける。ようなるくりの異常事態にこくそくうつぼつとした三浦義澄が義経のキュウビのキツネの足許にまた土肥実平が景時のヤタガラスのあしもとはいしてけいれんする両手をあわせていった。「いまは平家打倒およびみかどと『第四の神器』奪還が天命にござり申す。ここでおふたかたが同士討ちなされば万一源氏はいじくの凶兆にもなり申す。かててくわえて鎌倉殿がそくぶんなされればただではすみませぬ」と。きよくてんせき。まさにみずからの生命もかえりみぬせいちゆうにそれぞれの微衷をざんさんしたらしい源義経とかじわら景時は造次てんぱいもなくおのおののかみがみを消滅させてかいせんてきちよくした。かいわいの河川のとうしんいんひようびようとしてそくめつしてゆきこんとんとゆらめいていたかいせんも全体をきしませながら静止してゆく。きやしやなる右腕でそうした左腕の血潮をぬぐった義経はいう。「よかろう。平家方に『第四の神器』をもちいられれば源氏せんめついなとよあしはら潰滅なる結句も危惧されるも当然」と。景時はつづける。「いまこのときは平家がくさなぎつるぎと『第四の神器』を実戦配備するまえに帝と神器を源氏のものとし天下の陰陽をしようするが肝要なり」と。

 ようにして義経と景時はそれぞれのかいせんにわかれた。

 決戦予定日時は翌日のれいめい時とされた。

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