『天燃ゆ。地燃ゆ。命燃ゆ。』中篇小説

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

第1話

  シュヴァルツシルト半径のせいひつ。諸行無常のしじあり。

  ホログラフィック膜宇宙の漆黒の色。盛者必衰の虚無をあらはす。


 第一章 壇ノ浦の戦いVersion2.0


「おぬしは神州一のたわけものである。殺してみせよう」

 と源義経は人血にしたキュウビのキツネをあらわしめた。

 げんりやく二年{一一八五年}三月二十三日。あんたんたるたそがれどききゆう窿りゆうのもと翌日の源平決戦にむけて河川上のかいせんにて軍議をひらいていた源氏方に一触即発の危機感がうつぼつたらしめられていた。ろうぜきの闘鶏をもってぼくせんし源氏のがいせんを確信した熊野の湛増および四国より加勢にまいった河野通信らをもってるいじやくであった海戦りよりよくけんじん化させた源氏は田ノ浦・門司の関・壇ノ浦・赤間の関においてめんの平家と宣戦布告の矢合わせをおこなうこととなった。平家水軍にたいしくだんの熊野の湛増および河野通信の海軍力をふくそうさせた源氏水軍の圧倒的戦力差はめいちようである。

 ような千載一遇の時宜においてきゆうていたいりよの源氏側源義経とかじわら景時は「われがせんぽう」「いな。われがせんぽう」と先陣争いを勃発させた。源義経はさいしん鬱勃たらしめる。景時め。こやつはなにをかんがえておる。われをさしおいて武勲をあげるつもりかと。かじわら景時はいう。「殿。貴殿は軍司令官のお立場にあられるぞ」と。めいぼうこうがんぼうつゆいささかもわんきよくさせずに源義経はいう。「軍司令官は鎌倉殿に相違あらず。余は一指揮官ゆえになんじらと平等である」と。かじわら景時はかぎりなく無表情にちかい嘲笑をうかべていう。「殿はおそらく生涯主君にはならざるであろうな」と。である。源義経は激昂をしてほうこうした。

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