　爾（じ）時（じ）金城大尉たちは最後の作戦を進捗させていた。

　九（く）頭（ず）龍（りゆう）大明神を守護するがための『計画』であった。

　麾（き）下（か）を嚮（きよう）導（どう）していた金城大尉は玉（たま）響（ゆら）蒼（そう）穹（きゆう）を仰視する。かあさんも祖（ば）母（あ）ちゃんもなんとかできたかな。こんな訣（けつ）別（べつ）になったがおれたちは神となって天上天下をまもるんだ。神州日本列島九箇所にて嘉（か）卉（き）なる『ハラキリ』が遂行されるなか神軍大本営を中枢とする帝都東京にて極秘計画は進捗していった。今回は『特別』なる『ハレ』の時宜である。古（こ）色（しよく）蒼（そう）然（ぜん）たる鳥居をくぐり巍（ぎ）峨（が）たる南授与所をけみした金城大尉たちは鬱（うつ）蒼（そう）たる樹冠のゆらめく外拝殿をへて赫（かく）奕（やく）たる巨億の白砂のなかに白（はく）堊（あ）の敷石がつらなっている神聖冒（ぼう）瀆（とく）すべからざる明治神宮は内拝殿の境内にて正座した。金城浩（ひろ）樹（き）は一点の塵（じん）芥（かい）もゆるさぬ清（せい）穆（ぼく）なる裃（かみしも）でまさに『最後のハラキリ』に臨まんとする。金城大尉を前列として後列に臚（ろ）列（れつ）した『撃墜王』の三軍人による『親衛隊』候補たちは純白の裃（かみしも）をはだけて上体を露呈させた。神性エネルギーの逓（てい）減（げん）も計算してまず金城大尉が優先的に電極を接続機関に挿入して『ハラキリ』をする。東雲（しののめ）のたゆたう明治神宮の穹（きゆう）窿（りゆう）にて神性エネルギーが粒子化されて熾（し）天（てん）使（し）ミカエルとの闘（とう）諍（じよう）で満（まん）腔（こう）に火傷（やけど）をしながらも分霊の御（み）稜（い）威（つ）により陰（おん）陽（みよう）を燮（しよう）理（り）されて無事に恢（かい）復（ふく）されたスサノオノミコトがあらわれる。つづけて後列の『撃墜王』たちが『ハラキリ』をすると月と夜の神とされ巨大なる人間の肉体に凸（でく）間（ま）凹（ひく）間（ま）の『月面』状の頭（とう）顱（ろ）をもたれ白銀の装束を纏（まと）われて背中に月（げつ）魄（ぱく）の後光が射（さ）していらっしゃるツクヨミノミコト・雷（らい）霆（てい）の神であり躬（み）自（みずか）らの剱（つるぎ）が神武天皇陛下を御（お）護（まも）りなさったといわれておなじく巨大なる肉体に靉（あい）靆（たい）たる『密雲』の頭（とう）顱（ろ）をなされ純白の裃（かみしも）に瑠璃色の装束を纏（まと）われたタケミカヅチノミコト・天岩戸において磊（らい）嵬（かい）たる巌（いわお）をうごかされたといい魁（かい）偉（い）なる肉体に『巌（いわお）』状の頭（とう）顱（ろ）をもたれ紅（ぐ）蓮（れん）色の袴（はかま）に純白の装束を纏（てん）繞（じよう）されたアメノタヂカラオが御（お）姿（すがた）をあらわされた。四柱の神（かみ）神（がみ）のうち血気盛んなるタヂカラオが四人の軍人に尋問される。のたまわく『爾（なんじ）等日の元の國の民たちよ。なにゆゑに朕等を招（しよう）聘（へい）したるや』と。代表して金城大尉がこたえる。「神州日本国民の一致団結により現前したまう九（く）頭（ず）龍（りゆう）大明神を守護し恙（つつが）無（な）く亜（あ）米（め）利（り）加（か）教国に天（てん）誅（ちゆう）をくだすためであります」と。タヂカラオがさらに尋問せんとされると莞（かん）爾（じ）としてスサノオノミコトが壅（よう）塞（そく）阻止し御（お）答（こた）えなされた。『よかろう。金城浩（ひろ）樹（き）よ。ただし朕等の宿敵は亜（あ）米（め）利（り）加（か）そのものにあらず。朕等はおそらく亜（あ）米（め）利（り）加（か）の天使たちと闘（とう）諍（じよう）する運命にあり。それでもよからむや』と。金城大尉以下四人の軍人は同時にこたえた。「恐縮ながらよろしくおねがいいたします」と。斯（か）様（よう）にして四人の軍人は『古事記』の文字列へと豹（ひよう）変（へん）し四柱の神（かみ）神（がみ）の『肚（はら）』の裡（うち）に嘯（しよう）聚（しゆ）されていった。四人の軍人は神（かみ）神（がみ）の精神世界にて覚醒する。四人は四柱の神（かみ）神（がみ）を『操縦』して太平洋へと飛（ひ）翔（しよう）していった。