第17話

 おれは助かったのか。

 しばらくようそく阻止されていた肺臓でほうはいと呼吸をしているときよしながら微笑する母親がいった。「あんたと『合体人間』になって死ぬかとおもったけれどぎりぎりで爆発が止まってくれてね。あの虹色の球はちいさくなっていってわたしたちの体もはなれていったがあよ」と。たしかにせきだ。べつけんするとせきだ。といえども金城大尉は確信していた。「母さんこれは『なさけ』らよ。ミカエルいやカガワのやつがおれをわざとたすけたんだ。カガワはなんとしてでもおれと決着をつけるつもりらっけん」と。喫驚したがんぼうで母親は沈黙していた。金城大尉が「御免。母さん。おれをささえてくんねえか」というと母親はまんしんそうの金城ひろの上体をおこした。金城大尉はみた。『建物人間』をみた。『合体人間』をみた。『樹木人間』をみた。『ちよう人間』をみた。内臓の団塊をみた。こつかくの団塊をみた。蒸発する極小のブラックホールをみた。目玉と歯の団塊をみた。巨億のぎんばえに喰らわれる死骸をみた。肉体が婆羅婆羅になった殉国者をみた。ようにしてすべての新潟市民のみならず『新潟市すべて』が一個の巨大なる団塊となって破裂したさまをみた。新潟は第三の『ヒバクチ』になったのである。なまぐさい巨大なるはいきよとなった新潟市のうえでミカエルがなおもしていた。

「『最後の審判』は八月十五日に行われるであろう」と。

りすと者はすべて救われ邪宗の信徒はすべて滅びるであろう」と。

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