SKILL×BREAKER

桜狼 殻

Chapter of Beginnings

第1話 Reboot




 ―――託したぞ…

       世界を旅し

           神話を紡げ―――





 不快な金属音で夢の世界から意識を引き戻す。

 その後はお決まりの覚醒と入眠を行ったり来たりする。

 所謂いわゆる、朝という奴だ。


「…眠い…」

 欠伸を一つ出し、上半身を起こす。

 今日は約束があるので眠い目を擦って起床した。


 こう見えても私は赤眼・黒髪ロングで評判の美少女中学生!

 どこ界隈で評判かは聞くなっ!

 スタイルもそこそこいいし、勉強も…ゴホンゴホン!

 でも今日は学校じゃないので比較的寝覚めが良い!


「月花起きたー?ご飯食べなさーい!」

「はーい!ママのご飯は最近美味しくなったね…昔は酷かったけど」


「にゃにおー!パパは美味しいって言ってくれるんだからー!」

「はいはい、ラブラブですねー」

「ううっ…愛娘が反抗期なう」

「もー褒めてんじゃんー!ママよしよし♡」

「おおお、我が教育に一片の悔いなし!」

 ハグハグされた。


 うちのママは愛情過多だけど愛情を毎日感じる!

 私もママが大好きだけどね!


「行ってきまーす!おいで!」

 頭に子猫のコロちゃんが乗ってくる。




 某所に併設された建物…と言ってもワンルーム二つ分位の大きさしかない。

 その秘密基地にこっそりと入る。


「式部おはよー!」

「月花おはよーにゃ!♪」


 中にいた…二人目の美少女は私の相方、駒鳥鵙式部こまどりしきぶだ!

 蒼髪・ボブにパッチリなブルーの瞳、今日は動きやすいパーカーにハーフ丈のパンツを履いている。

 大体服の上から揃いの防刃・防弾コートを羽織るのが私達のスタイルだ。



「今日はどこへ行くー?」

「最近漸く調達依頼が減った事だし、行ったことない場所を無闇矢鱈むやみやたら彷徨さまようより…行った事のあるいつもの世界の攻略を進めていこう!」


「そーだにゃー!ゲームみたいにどこかにクリアマークとかついたら楽なのににゃー!」

「本当それねー…よし、いつもの場所に今日も行こう!昨日あれだけ戦ったのに何も獲れなかったのは実に悔しい!」

「了解だにゃ!♪」



 部屋の端には特殊な転送装置のフレームがあり、足元には三本足のカラスのマークが入っている。

 フレームの中に入り、タッチパネルで座標を入力する。


『ダイヴ・イン!』


 そう唱えると私達は、地球の内側に広がる世界・アナザーバースへダイヴする。


 ダイヴした先は数字の星海の中を漂う多次元世界…世界はウインドウの様に見え、私達はその世界を自由に行き来する事が出来る。




 ―――あまねく世界は広大無辺に広がっている。


 かつて、奈良で凄惨極まりない大戦が繰り広げられ、この世界は未曾有の危機に瀕し大勢の人が亡くなった。


 誰が信じるであろう、何十万もの怪物で埋め尽くされた地を僅か数人で制圧した事を。

 誰が信じるであろう…怪物が異世界アナザーバースに逃げ延び、まだ息を潜めている事に。


 これは、そんな事変を経て少し平和になった後の世の物語。





 今回のダイヴは一度行った場所なので紐付けが行われており、数字の海の中を探す必要がない。



 目を開くとそこは中世ヨーロッパの佇まいを感じさせる……空!?

「にゃ――――!真っ逆さま自由落下中―――!」


 私がピッと彼女に指を差すと二人とも自由落下を止め、空中に浮いた。

 私の家に伝わる結晶術は攻防飛行と何でも出来るのです!


 空からゆっくり降りてきて、真下にあった街の中に降り立つ。



「ありがとー!ヒヤッとした!」

「こんな事もあるんだねー、用心しないと!」


 ここはとても賑やかな街で上から見た処、古い城と城下町が一緒にあり、塀で周囲を囲われている。

 何となく街名を聞きそびれていて、最初の街とか雑に言っている。

 王様もいそうなのに城は常に門を固く閉ざしており王族や関係者を見た事が一度も無かった。


 街中には人間とは違うエルフや獣人みたいな種族も歩いていて、殆どが武装して歩いている。

 マーケットも多種多様な物が置いてありいつも賑やかだ!



 そう、ここは所謂いわゆる剣と魔法で例えられるファンタジーの世界!


 多種多様な世界で構成されたアナザーバースで一番大きい世界で、昨日は大型モンスターを倒して街の人に感謝された!

 で、戦果に反してアイテムやスキルのドロップが無くて少し悔しかったのだ。


「ねね!とりあえず、ご当地のご飯かスイーツ食べに行かない?」

「やったー!スイーツ行くにゃ!!!♪」

式部しきぶの今日の気分はスイーツか!」


「うん、肉!!!」

「どっちだよ!」

「肉はスイーツ!」

「次世代パワーワード!!!」





 スイーツという単語とは無縁の、お肉の美味しい店でスイーツも食べたし、今日はこれからどうしようかな…

 とりあえず近かったのでフォースアイテムのお店を覗きに来た。


月花つきかー!これ買おうよー!」

「何々?どんなアイテム?」


「ツッコミ速度+50%・なんでやねん声量+80%の魔法の帽子!」

「…こんなに心から要らないアイテム久々にみたわー」


「えー珍しくない?関西人なら誰もが欲しがる謎のアイテム!」

「何で異世界のファンタジー世界に、関西のコテコテ感がするアイテムが転がっているの…」

「関西が世界の中心だから…?♪」

「ほら、もっとあるじゃん!分身とかスピードアップとか時を止めるとか!そんなコテコテのアイテム買って行ったら式部のママが欲しがるよ?」

「ホントだ!ママめっちゃ欲しがりそう!」


「あ、久々にスキルショップも行こうか?ラインナップが更新されているかも知れないよ?」

「オッケー!♪」




 裏路地に入ると少し大きい衛兵付きの店の店があった。

 スキルショップには必ず屈強な衛兵がいる。

 ショップの性質上襲撃に逢いやすいからだ。





 ―――過去に日本、神居と神聖視された地・奈良を舞台に凄惨な大戦があり、世界は変革した。


 私の世界の神は大戦時に死んだとまことしやかに言われている。


 その際に神は遍く人々の幸福を願い


 全ての世界に『スキル』という、様々な苦境から脱出する切っ掛けを与えたと言われている。


 入手条件は不明とされているが、スキルは誰でも手に入る可能性がある。

 苦手な事に挑戦する、困難に立ち向かうと、それを克服出来るスキルが入手しやすい傾向にある。


 持って生まれたアビリティに加え、生まれた環境だけで左右されない、後付出来る『スキル』は瞬く間に広がって研究対象となり、発生条件の解明を進めたが未だ殆ど解明されず分かった事は、悪意の高いスキルは生まれにくく、一対一で交換が可能という二点のみ。



 それを管理しているのが国が直轄のスキルショップで、レア度に応じて様々な値段が付けられている。

 勿論犯罪の種になるので、ショップは国が厳重に管理、店も襲撃されない様にガードを固くしている。





 ♪カランコロンカラン

 どこか懐かしいドアベルの音を聞きながら入店する。


 店内にはショーウインドウ等勿論無く陳列が出来ないので、カタログ販売みたいな形式となる。

ゆっくり見られる様にとカフェ風にテーブルと椅子が幾つも置いてあるのが特徴だ。



「見て見て月花!ボケ速度80%あったよ!さっきのと合わせれば…」

「絶対ダーメっ!ここでセットで買っちゃうと式部ママがお笑いデビューしちゃうよ?」

「むむむ、それは駄目にゃっ!」



「あ…!!あったー!腎臓再生のスキルだ!!!」

「これで依頼が一個減るね!」

「買われる前に買っちゃおう!」


 少し値が張るが、向こうで報酬も出るし何より人助けになる!



 表示されてる金額を支払い、店主の女性と両手を重ねる。


受け渡しtransfer:腎臓再生」

受け取りacceptance:腎臓再生」


「…はい、受け渡し完了、お代も確かに頂きました。有難う御座いました!」


 自分の保有するスキルはパソコンのダイアログの様に目に投影され目視で確認出来る。



「式部お待たせー!何かいいのあった?」

「いやー億単位のスキルは強いの多いよねー目の保養になるにゃー♪」

「場を制圧出来るスキルが多いもんねー」

「私達でもヤバいのは数個位しか持ってないもんね…医療系はどれもなかなか飛んでもない額…♪」


『…式部、今スキルのやり取りを見てた男が一人、先に出て行った』

『りょ♪』





 店を出て、態々わざわざ街の外まで出ていくとガラの悪い連中が十人程出てきた。



「よぉ、チビッ子共!さっきお前が買ってたスキル…高くて良さそうじゃねーか?こっちによこしな!」


「やだぴょーんっ♪」

「式部、煽るな。ソロで行くから後ろにいて」

「はーい!」





「…ひざまずけ!!」

 スキル竜の威圧ドラゴンアイを発動!

 竜の如き威圧で、相手を無力化するスキルだ!


 ボスっぽいの以外全員が竜の威圧に負け、泡を吹いて膝から崩れた。

 竜の威圧に耐えたボスっぽい男やるな。


「ちっ、面倒なスキルを…痛い目を見せてやるぜ!」


 下衆い笑みを浮かべながら、凄い速さで間合いを詰め、強烈なパンチを繰り出すボスっぽい人!

 拳が光ってるから恐らくバフスキルも乗せてるんだろうが…

 私は、抜かずにさやで受け止める。


「…うーん、スキルを乗せて…この程度?」

「くっ、両手さえ残れば受け渡し出来るんだ!まず両足から切り落としてやるぜ!!!」

 背中の偃月刀えんげつとうを抜き、高速で回転斬りを放つ!

 私は前方にジャンプし、相手の頭を支点に背後に回る。


 え、あいつの頭を触った手が脂ぎってる!!!やだ―――キモい!!!


 背後から抜刀していない刀で脇を思いっきり横薙ぎに叩く!

 あ、しゃがみ込んだ!痛そう!



「ぐっ…ふっ…ざっけんなぁぁぁぁぁ!!!!」

 偃月刀に強化系スキルを付与して襲って来た。


 私の刀はそんな物に負けない!

 ギィィィン!!!

 抜刀した私の刀が相手の偃月刀を火花を散らして真っ二つに斬る!


「実力差を感じ取れ!格上はこちらだ。次の一撃でお前は終わりだ!」

 少し脅してみると怯んだ様子を見せるが、指笛を高らかに鳴らすとニヤリと笑う!



 遠くから地響きが聞こえる…

 地鳴りを立てて現れたのは巨大な怪物!


 ウォーカーだ!



 私達の世界に昔からいた、人が転じた怪物、逢禍おうか

 大戦の時、残った逢禍は数字の海に逃げ込み、アナザーバースへ散らばった。

 こちらの世界ではウォーカーと呼ばれているが、元が人間だと知っていると倒すのに心が痛む。



 その姿は胸の穴から溢れ出る黒い何かが全身を走る生物!

 どこかで引っこ抜いた様な大木を携えている。

 もしかしてスキルで無理矢理飼い慣テイムらしたのか!



「月花ー、若い肉体を持て余して暇だからやっていいー?♪」

「言い方!!じゃー任せた!」



「街の傍にこんな凶悪な…悪いけど成敗するにゃ!♪」

 式部が跳ねる様にウォーカーへ飛びかかる!

 ウォーカーも猛烈な速度で大木を振るう!


「ひょいっと!♪」


 大木を難なく避け、空中から両膝に目にも止まらない速度で一撃ずつ入れる!

 ウォーカーが膝から崩れ落ち、奇声を発した!!


 一瞬で式部の独壇場だ!


 天に向けて声を上げているウォーカーの喉元を槍で深く抉る!



名も無き一撃ネームレス・スラスト!」

 私の【名も無き刀】の数ある強力な固有技の一つでウォーカーの腹を突き破った!

 致命傷を負い、ウォーカーは倒れながら灰の様に…塵の様になって消えていった。



「……おい、強盗」

 ウォーカーを軽く倒されてビビりまくってるな。


「…こんな汚いやり方で、何人の命を摘んだ?次はお前ら摘まれる側だ」

「いっ…いひぃぃぃっ!!!」


 ボスっぽいのに指を差して叫ぶ!


「撃滅せよ!技術破壊スキルブラスト!!!」

 私の持つ激レアスキル!

 相手の所有するスキルを全破壊する、問答無用のスキル!


 おっさんと盗賊たちのスキルが全損した音で全員起き上がり逃走する!



「ににっ!」


 うちの猫が特大火球を出現させ、盗賊たちの存在を消滅させようとしている!


「コロちゃ―――ん!!その大きさは死んじゃうからっ!その半分で充分だから!可哀想だし!ね?ね?」

「にっ♪」


 シュッと滞空していた特大炎球が半分の大きさになり前方に発射された!

「はーいコロちゃん、世界一いい子!」

痛い目を見て少し会心してねー!


 でも、まぁスキルに頼って戦うのは成長に繋がらないから精進しなきゃ!

 そして、みだりに命も奪わない!

 ちょっとだけ焦げたのは許してっ!


 念の為、街の自警団を呼んで現場に戻ろうとすると何か…様子がおかしい!

 街がざわついている!



「皆逃げろー!ドラゴンがこっちに来るぞー!」

 城壁の上の見張りが鐘を鳴らして危機を街に知らせている!


「ドラゴン!マジか!行く?」

「勿論行くぅー!♪」



 大きな街の端まで移動し、周囲の空を確認する。

 そして、私達が出たと同時に街の入り口の門が降りて閉鎖された!

 塀の上ではバリスタや魔法を使う方々が戦いに備えている。



「飛ぶよ!」

「はーい!」


 ふわっと身体が浮き、スケートボードの姿勢で滑空する!

 青い光の帯を引くのがこの技のお気に入りポイントだ!

 うちの一族に伝わるアビリティ、結晶術の応用の一つである飛行結晶だ。


 突然、危険察知のスキルが自動で反応した!

 慌てて相方の足を引っ張って止めると、目前を巨大な火球が通過していく!

「ひ―――!」

「見えた!アイツだ!」


 よくアニメなんかで見る、大型火竜にしてモンスターの王・レッドドラゴン!

 頭から生えている巨大で威厳の象徴たる二本の角、そして空を覆う程の大きな翼を羽ばたかせている。



「おーい!ドラゴンさん言葉が分かるー?街を襲ってほしく無いのー!」

 竜は非常に知性の高い生物なので交渉を試みてみる。



先に人が我が子を持ち去った。People have taken my children before me.


「ああ…人間がごめんね…でもこちらも狩られる訳には行かないんだ!」


我が子を盗られて憤怒しない親がいようか?Aren't all my children important?

 ドラゴンが無慈悲に火球を繰り出す!

抹消キャンセル!」

 私が叫ぶと目の前で火球が掻き消える!



「ごめんねードラゴンさん!」

 相方が高速で懐に飛び込んで左側の羽根を半分槍で切り裂いた!


 滞空中だったのでバランスを崩し、ドラゴンが森の中へ落ちていく!


 落下の体制から火球を六発も放つのは流石火竜だが、軌道がブレていたので難なくかわす!

 私と相方が、落下した地点に向かうとドラゴンは既に体制を整えていた!



火竜の二つ名は伊達では無いと知れThe name of the fire dragon is invincible!』

 竜の代名詞・ドラゴンブレスが野に放たれた!!

 業火が辺り一面を紅蓮に染め上げる!



人間共…塵も残らず燃えた…か?Humans... burned to the dust...?


 火が徐々に消えていき、炭化した森の中…

 だが、ドラゴンが周囲をよく見ると箱のような結界で囲まれているのに気付いた!



 勿論私達は結界の外にいる。

何だこれは…?What is this...?


 結界外は消化済だが、ドラゴンの箱の中は不完全燃焼状態だ。


「とーどめーっ!!!」

 相方が横回転しながら飛び上がり、魔槍を投げて結界を一撃で破壊する!


 その刹那、魔槍で破壊された箇所から大爆発が起きる!

 不完全燃焼により一酸化炭素が溜まった状態で酸素を突然送ると化学反応で大爆発を起こす!

 所謂バックドラフトって奴ね!


 相方の手元に槍が自動で戻ってくる。

 私の結界障壁は頑丈なので、それを破壊出来るのはこの魔槍の威力ありきの連携技なのだ!


 ドラゴンは自らの炎で焼かれ爆発の衝撃で崩れるが、まだ体を起こし戦闘体勢を取る!


規格外に強き者よoff-spec.火竜の子を見かけたら山に返してはくれぬか If you see my child, ?』


「勿論約束する。けど…もう、止めないか?生きて命を育むよりも、戦いの誇りを取るのか?」


聞くまでも無かろうI don't need to ask!竜の誇りを捨て、惨めに敗走して何が竜か!needn't be asked What is a dragon without pride?



 刀を鞘に納め、誇り高き火竜に畏敬の念を込めて居合の構えを取る。

「…名も無き切り札ネームレス・ジョーカー!」

 火竜が獄炎を口から放った瞬間、懐に入り獄炎ごと首を斬り落とす!!

斬撃が振るった先の雲をも両断した!


見…事だ…Excellent work.

大きな地響きと共に、斬り落とした竜の首と胴体が大地に沈んだ…



「…終わり、ごめんなさい。強かったよ火竜さん」


 私の刀【名も無き刀】はある人から授かった、使命を持っている刀だ。

 容易に竜の首を断つ威力は尋常ではない。


 でも…生き物を殺める刹那はいつも胸が痛い。




「よし、竜の素材を換金するか。少し森は焼けちゃったけど」

「ほーい!」


「スキルは何か出たー?」

「出た出たー!竜族攻防+15%!」


「私も出たよー!竜族攻防+10%と…火竜の吐息…」

「いーなー!二個も!」


 まずは街の人を呼んできて冒険者ギルドに換金してもらおう!




「お前達すげぇなぁ!二日連続で大型モンスターを退治してくれて助かるよ!しかも火竜を倒しちまうなんて!」

 昨日ギルドに取り次いでくれたおじさんが偶然今日もギルドへ手配をしてくれた。


「ごめんねー森を少し焦がしちゃって…」

「ドラゴンが街で暴れてたらもっと被害はもっと大きかったし、人が大勢死んでたかもしれねぇ…君達はよくやってくれたよ…有難うよ!ほら、ギルドから報酬貰ってきたぞー!」


『わーい!ありがとー!』


 ここは違う世界だから円ではなくルギーという通貨がいるのでモンスターを倒して現地で稼いでいるのだ。


「おじさん、つかぬ事を聞くけど竜の子供って高いの?」

手名付けテイムも難しいし、小さいと素材も余り取れないし…研究用としてたまに取引されてるらしいが、大体は親が取り返しに来るらしい」

「そう…有難う!」

 勿論おじさんにも少しお礼をした。







「ママ、ただいまー」

「月花おかえりー!今日はどうだった?」


「へへー今日はばっちり!レッドドラゴンを倒して、竜の息吹と竜攻防+10%、あと《社》の依頼を一個見つけてきた!」


「収穫すごーい!!あ、前に手に入れた竜の威圧ドラゴンアイって奴…一回だけやってみてー!」


「え。ママ!これも本物の竜から手に入れた竜の威圧だよ?」

「いいからいいからー!」


「もー倒れても知らないからね!」

 竜の威圧ドラゴンアイを発動する!



 ……何故だ…ママに微塵も効いてない…


「んー!圧が凄いねー!人を傷つけない良いスキルだねー!」

 ママ、平然としてるんだけど最近の専業主婦ってどうなってるの?

「さーすがパパとママの子だねー!つおいっ♡」

 ママに頭を撫で撫でされた。


 極希ごくまれにしか帰らないパパと、専業主婦のママが謎だらけすぎる!!!





 食事の時間になると上のカフェに向かう。


 式部のママが晩御飯を作ってくれて、皆で食べるのが昔からの習慣になっている。


「お姉ちゃんやっほー!」

「今晩はー!」


「六花、月花ちゃんいらっしゃーい!♪今日は大活躍したんだって?」



 この方は小町ちゃんはママの血の繋がらない姉妹…お姉ちゃんらしい。

 そして式部のママ!

 つまり叔母にあたり、式部と私は従姉妹同士!


 横で調理サポートしてる三つ編みの美少女がママと小町ちゃんの妹の小花ちゃん!

 小花ちゃんは姉二人と歳が離れてる妹で、私達と同じ中学校だ!

 そして全員、私の大事な家族だ。



「バタバタした一日だったよー小町ちゃん!あと式部がボケとツッコミのスキルを欲しがって困った」

「何それ!私、超欲しい!!♪」


「ほらね?」

「だよねー♪」


「お姉ちゃんにそんなの渡したら、お笑い芸人デビューして、年内に冠番組持っちゃうから駄目よー」

 小花ちゃんは分かってらっしゃる!


「じゃー頑張ったご褒美に今晩は肉にしようか♪」


『わーい!!!』

「ににっ!」


 さっき特大の火球を作ったこの仔猫・コロちゃんは私のお姉ちゃん!


 私が生まれる前から家にいて、一緒に育った、もはや私の一部!

 外に出るとついてきて大体私の頭の上に、お供物の様に生息している。


 成長して大きくならなかったり、猫の寿命を無視してたり、火球を生成したりと、色々と謎の仔猫だ。

 好物は猫のおやつの定番ちょーるだが、猫が大丈夫な物は大体食べる。


 サーロインステーキが美味そうに焼き上がったので皆で頂きますして、コロちゃんにふーふーしてから少しあげる。

 家族だから、皆一緒に食べるのだ!



「そういえばママ…うちのパパって…生きてるんだっけ?」

「勝手に殺しちゃダーメ!…パパは忙しいからねー」


「六花お姉ちゃんの旦那様、一度も見たこと無い…もしや妄想?」

 小花ちゃんが怪訝な顔をする。



「本当暫く見てないもんねー…あの人は優しいからきっと世界を飛び回って何かを解決してる…帰ってきたらパパ頂戴♪」


「お姉ちゃんは地上からたんぽぽの綿毛の様にふわっと消滅すべし!」

「やぁるかー?六花の顔に油性マジックでほうれい線強めに書いてやんよー♪」


 ほぼ毎日、ママと小町ちゃんが姉妹で痴話喧嘩するのがこの店の名物です。

 そういや、小町ちゃんはシングルマザーで旦那さんが居なかったな…別れたんだろうか?



 あ、食べ終わったら《社》に連絡してスキルの受け渡ししなきゃな。


 それと…さっきの竜で本当はスキルを三つ貰っていたのだが、見てもスキル名や説明がバグってて見えないのだ。



 このスキルは一体何なんだろう…

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