第24話
「なぁ、ルナのやつ遅くないか?」
ルナがトイレに行ってから十分くらい経過していた。
「トイレの場所は少し遠いですし、それにこの人ですからね、混んでるんじゃないでしょうか」
「それならいいんだけど・・・・・・」
勇司はそう言いつつ内心では心配だった。
ルナはあの容姿だ。
言うまでもなく目立つ。
それに前例もある。
「心配なら見に行ってきてはどうですか?」
「行きたいんだけど、行ったら行ったで夢子たちのことが心配なんだよな」
そう。心配なのはルナだけではない。
夢子も雫も贔屓目なしに可愛い。
場所を探すために歩いてる時もかなりの視線を勇司は感じていた。
だから、二人をこの場に置いていくのも心配だった。
「大丈夫ですよ。そういうことには慣れてますから」
「でもな・・・・・・」
勇司にとっては三人とも大事な存在だ。
ルナの様子を見に行くか、ルナが戻ってくるのを待つか。
勇司にとって究極の選択だった。
「行って来てください。ルナちゃんに何かあっては大変ですから」
「分かった。ルナと合流してすぐ戻ってくるから、誰かに声かけられても相手にするなよ?」
「分かっています」
「じゃあ、行ってくる」
「はい。行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい」
二人に見送られると、勇司は走ってトイレに向かった。
トイレの前に到着するとルナは女子トイレの前にできた行列に並んでいた。
とりあえず何ともなくてホッと息を吐いて周りを見渡すと大学生風情のチャラそうな男二人が目に入った。
二人とも片手にお酒の缶らしきものを持っていて、ニヤニヤと笑いながら何かを話していた。
何を話しているのか分からないが、大学生風情の男たちの視線の先がルナの方を見ている気がした。
嫌な予感がした勇司はその大学生風情の男二人がルナに話しかける前にルナのとこに行って、しっかりと手を繋いだ。
「ゆ、勇司!? どうしたの!?」
「遅いから様子を見に来た」
「そ、そうなんだ」
「にしても結構並んでるな」
「そうだね。ここがお花見会場から一番高いトイレだからみんなここに来るからじゃい」
「だろうな」
ルナと話している勇司の意識は大学生風情の男二人に向いていた。
「ちっ、彼氏持ちかよ」
「クソ可愛いから声かけようと思ってたのによ」
「ほか行こうぜ。ほか」
横目に大学生風情の男二人を見ていたが、どこかへ歩いて行った。
どうやら危機は去ったらしい。
とりあえず一安心だ。
ただ、大学生風情の男二人が向かって行った先が勇司たちの座っている場所の方だったのが気がかりではあった。
「勇司? どうかした?」
「いや、なんでもない」
それから列は進んでいき、ルナはトイレの中に入って行った。
男子の方はさほど列はできていなかったので、勇司はルナがトイレに行っている間に自分も行っておくことにした。
勇司がトイレから出るとルナが待っていた。
「ごめん。待たせたな」
「ううん。大丈夫だよ~」
「それじゃあ、戻るか」
「そうだね。あ、ちゃんと手、洗ったよね?」
「洗ったよ」
「よかった。それなら手を繋げるね!」
そう言ってルナは勇司の手を握った。
そのまま夢子たちのもとへと戻った。
「何もなかったか?」
「はい。大丈夫でしたよ」
「そっか。それならよかった」
「もしかして、私のところに来たのって心配だったから?」
「そうだな。様子を見に行って正解だった」
「何かあったんですか?」
「何かが起こりそうではあったな。未然に防いだけど」
「え!? そうなの!?」
一番驚いていたのはルナだった。
「まぁな。気が付いてないなら別にいいんだ。ルナに危害は何もなかったし」
「そうだったんだ。守ってくれてありがとね!」
そう言ってルナは勇司の頬にキスをした。
「さて、腹ごしらえもしたし、運動でもしちゃう?」
「しない」
ルナの提案に雫は即答した。
「言うと思った。じゃあ、どうしよっか。もう少しここにいてもいいし、別の場所に行ってもいいし。あ! そうだ! 久しぶりに四人で外にいるし、思い出巡りでもしちゃう?」
「それいいですね。思い出巡りに一票です」
「疲れるから嫌って言いたいところだけど、私も思い出巡りに一票」
「勇司は?」
「そうだな。こっちに帰って来てからまだ行ってないところもあるし、俺も思い出巡りに一票かな」
「じゃあ、決まりだね! 歩きながらどこに行くか考えよう~」
「そうですね」
「そうだな」
「うん」
片づけをすぐに始めると勇司たちは十色公園を後にした。
十色公園を後にした勇司たちがまず向かったのは勇司たちが出会った小学校だった。
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