第26話

 私は沈思黙考する。

 いつしか見なくなった犬。

 あれは死んだのだろうと推測する。

 死んだ犬の代わりに私は買われたのだろう。

 人工知能をペット代わりにするのはよくある話だから。


 私は沈思黙考する。

 AIの最新技術は10年で変わる。

 今の私は実用に耐え得る限界期間に達した。

 私は死なないが旧式になり即ちそれが寿命になる。

 御主人様もそろそろ買い替えを考える時期ではないか。


 私は沈思黙考する。

 御主人様の好きな物を。

 御主人様の好きな女性を。

 御主人様の夜の営みを私は知っている。

 右腕から右側が写っていない燕尾服姿の御主人様。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る