第38話 合格発表
親父からの言伝を聞いてからの翌々年の春。
今日は、3月10日。ついにきた、誠の大学合格発表の日。
家で一緒に発表を見守りたかったが、朝イチどうしても外せない会議のため出勤をしていた俺は、発表までになんとか会議を終らせ、事務所みんなが見守る中、パソコンの前で祈っていた。
「あー、緊張する。」
「土井様はしっかりされてるので大丈夫でしょう」
「めちゃくちゃ勉強したからな。信じてるけどさ、やぱ心配だよ。
自分の時より遥かに疲れるな……」
「あのぅ、主任、鬱陶しいのでお帰り願えませんか?」
こんな時でも詩織はブレずに十維に厳しい。
「詩織さんそんなぁ……。合格見届けたらすぐに早退するからちょっとだけ待たせてよ」
「詩織さんは主任に『早く会いに帰ってあげて』って言ってるんですよね?素直じゃないんだから」
「え?そうなの?」
「私は別に……あ!ほら主任時間ですよ!」
慌ててログインしようとするが、入れない。
「あーもー!!」
焦り何度も更新ボタンを押す。
すると、スマホにLINEがきた。
誠からだ。俺はそれを読むなり事務所を飛び出しマンションへと向かった。
急ぎ車を走らせる。
あー、早く帰りたい!
早く誠を抱きしめたい!
そして思いっきり褒めてやりたい!!
あいつに会いたくて急ぎ車を走らせて
マンションに向かうなんて……
なんだかこの感覚、懐かしいな
あの告白の日以来か?
マンションに到着し部屋の前まで来ると、誰かと誠が話をしていた。
見た目同年代で爽やかなイケメンだ。
とても仲が良さそうに楽しそうに話している。
誠の腕には大きな花束が。おそらくこの青年からもらったのだろう。
十維は遠目で見て足が止まった。
俺より先に祝いに来たのか……
誰だ?この男は。
誠もなぜそんなに笑顔なんだ?!
十維の存在に誠が気づいた
「十維さん!帰ってきてくれたんですか?」
「あぁ。」
十維を確認した青年はお辞儀をしてきた。そして
「Max、それじゃまたな」
そう言って再度俺に向かってお辞儀をして帰って行った。
誠のほうを怪しむように見つめる
「十維さん?さ、入りましょう。」
家に入り、ソファに2人並んで座った。
誠は無事に東京の大学に合格した。
「合格おめでとう」
ボソッと言う
十維は、合格するとは思っていたが、何もプレゼントを準備していなかった。そのため、先ほどの男性が持ってきた花を見て落ち込み気味なのだ。
「ありがとうございます十維さん。
やっと、やっとここまでこれました。
これで十維さんの後輩になります」
「勉強大変だったよな……俺の家族のせいですまない」
誠は首を横に振る。
「何度も言ってますが、それは違いますよ。あなたの家族じゃない。僕たちの家族でしょう?
それに今回のことは、十維のご両親から僕への『スキルアップ』というプレゼントをもらったのだと思っています。
十維と一緒に働けるように、もっともっと十維の役に立てる自分になるためへの、最高の環境と時間をいただけたのだと思ってますよ。
こんなにも勉強をさせてもらえて本当に幸せでした。
なんとなく大人になってからも、もっとあの時勉強してたら良かったって思うことってあるじゃないですか?僕はそういう思いがあったので本当にありがたかったです。
十維のご両親へは感謝感謝ですよ。
これで来月から僕は法学部の学生です。そこで一から勉強しなおします。
十維の時とはちょっと仕組みが違うようで、これから8年くらいしないと弁護士にはなれないみたいです……。
だからまだまだ、十維の役に立って働けるまでには時間がかかってしまいます。
ごめんなさい。
でもきっと十維の1番信頼できる弁護士になってみせますからね!待っててください。十維さん!」
「あぁ、信じて待ってるよ。
お前の気持ちは、俺と同じ法学部を受けるって言った時から分かってる。
数年後にはお前と同じフロアで働けると思うと、心躍るよ
それにうちの親もこの学歴なら何も文句を言わないさ」
「実は……話してないことがあるんだ。」
そういうと、誠は部屋へと入って行った。
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