第19話 G.C.B 危険なお店、Gクラブバー
十維はジムを出て、街を歩いてみることにした。
そして、ふと見つけた知らないバーへと入ってみた。とても落ち着いた雰囲気のバーで、カウンターにひとり座り、酒を浴びるように飲み始めた。
そう、今度は酒で心を紛らわそうとしていた。
先程まで倒れるかというほどに運動した直後の酒は、空腹もあいまって思いのほか酔いが回るのが早い。あっという間に泥酔状態になっていた。
「おかわり!」
「お客さん、大丈夫ですか?かなり酔ってるようだけど、ブランデーじゃなくて、お水にしましょうか?」
「うるさい!いいんだよ!おかわりをくれ!」
「そんな……もうかなりのんでらっしゃいますよ?」
「あぁもううるさい店だな!もういい!帰る!勘定はいくらだ!」
支払いを済ませ、店を出てフラフラとどこにいくわけでもなく歩き始めた。
たった数分歩いてるだけで、また涙が出てきた。
「クソー!なんなんだよ!どうやったら忘れれるんだよ!チクショー!」
涙を拭い前を見ると、近くのビルの一階に小さな飲み屋の入り口らしきものが見えた。
「G.C.B. ?ん?Gクラブバー?なんだこの店は。
よし、今度はここで飲み直そう」
入り口も狭ければ中も狭いこの店は、カウンターにも
ボックス席にも男性が多くいた。
「お客さんひとり?ならこちらへどうぞ」
カウンター端っこの席を案内された。
「なに飲まれます?」
「ウイスキーを」
ひとり、また飲み直し始めた。
飲みながら店内を見回す。雰囲気がとてもいい。照明も心地いいほど暗めで、周りがあまり気にならない。
BGMもかすかに聞こえる程度で、十維はかなり気に入った。
「マスター、いい店だね、とっても気に入ったよ」
「ありがとうございます。
お客さん、初めてですよね?今夜はどうして?」
「酒がのみたくてね。じゃんじゃんのんじゃうよ!
はい!おかわりちょうだい!」
「酒をのみたくて……ね。わかりました。では、しっかり飲んで帰ってください。
そして、今夜は忘れられない夜になるといいですね」
「わすれられない夜?なんだ?
まぁいいや。俺は飲めればいいんだ」
すでにフラフラにもかかわらず、この店でも注文してはまた飲み続けていた。
店に来てどれくらいの時間が経ったのか、十維はいつしかうとうととし始めていた。
ふと隣の席に座った男性が声をかけてきた。
「ヘイ…………」
男は、十維の顔を覗き込んでいる。
ん?俺は何してんだ?
ここはどこだっけ?
ん?コイツはだれだ?
見たことあるような、ないような……
もう相手の顔も認識できないほど、十維は、酔っていた。
そんな状態だが、また目の前の酒を飲みおかわりを頼む。もう正常な判断など出来るはずもなかった。
隣に座ってきた男が、十維の肩を抱いてきた。
なんだこの男は
俺いま誘われてるのか?
誰なんだ?わからない……
もう、いいや……
どうにでもなればいいさ……
男は十維に向かって何かを言っているが、言葉が聞き取れない。
男は、十維の肩を抱き、立たせた。
朦朧とする頭の中で、さらに誰かが奥からやってくるのが見えた。
どうやら自分を立たせた男じゃない男が、十維の反対側の肩を抱き上げてくれている。
その瞬間から、十維の意識は完全に無くなったのだった。
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