第17話 料理会とサヨナラと
京介以外みな、取り皿を手に持ち、ビュッフェ形式で用意されている料理を一つ一つ食べていく。
康太は料理ひとつひとつに意見を出す。それを聞き逃さまいと料理人3人がメモをとりながら張り付く。
が、それ以上に康太に張り付いているのは、もちろん京介だ。これでもかと言わんばかりに京介は、康太の背後にぴったりとくっついている。もう二人羽織状態だ。
料理には目もくれず、康太の頭をスリスリしたり、食べている康太の顔を見て笑顔になったりしている。
とても幸せそうだ。
十維はというと、ある程度食べてお腹も良くなったので、テーブル席の椅子に腰掛けた。
そこに康太がおちついて料理人と話せるようになったので、若林社長がやってきた
「高柳兄、聞いたよ。
今度お見合いするんだって?相手はとても可愛らしいお嬢さんだってな。
なんでも高柳兄が惚れたとか?」
「そんな…… 惚れてないよ。ったくどこから情報が流れてるんだ?選ばないといけないと強く言われたから選んだだけだよ」
「俺、お前はコッチ側の人間かと思ってたけど、違ったのか?女性となんて大丈夫なのか?」
「コッチって……俺は別に。
相手がしっかりしてて、こんな俺でも良いっていう人なら俺はどんな人でも良いと思ってるよ。
女性を愛そうとは思ってるよ……
ていうか、若林社長と土井さんて、単なる家主と住人の関係には見えないけど、知り合いだったのか?」
「あー、言いたくないが高校の同級生だ」
「高校の?その頃の土井さんってどんな人だった?」
「高校の時も今も変わってないよ、あいつは妙に色気があるから男女問わず近寄ってきててさ、来るもの拒まずで、来たものなーんでも喰ってしまう、どうしようもない奴なんだよ。昔っから。
そんな奴の手伝いをうちの康太が……
高柳兄!ほんっとにお前が言うから来たんだからな!これは貸しだぞ!わかってるな!康太に何かあったら俺は……。はぁー……。
今以上に康太の行動を把握しておかないとな。
んで、いつなの?お見合い」
「あー、たしか来週の土曜だったと思う。
あそこのカルチャーホテルで会うんだよね。そういえば服とか選ばないと!すっかり忘れてた」
もう……お見合いするんだ。
もう……彼のことは忘れるんだ。
もう……好きでいても仕方ないんだ……
Maxをみる。
従業員と一緒に康太の話を聞いている。
彼を見るだけで、せつなさが込み上げてくる
泣きそうになってきた。
試食会は無事に終わった。
「今日は本当にありがとうございました。
是非参考にさせてもらいます。
あのぅ、康太さんさえよければ、アドバイザーとして契約をしたいと思いますがいかがでしょうか?」
「はぁ?アドバイザー?テメェ、これ以上康太にちか……」
「僕でよければ喜んで!
家政夫の仕事も今はほとんどないので。うれしいです!」
京介が反対意見を言っているのに、康太は被せて引き受けた。
「康太、本気か?やりたいのか?」
「京介さん、僕いますっごく楽しかったんだ。こういうのも仕事になるんだったらやってみたい!
ダメェ?京介さん」
康太さんが甘えている。可愛い。子犬のようだ。
「まぁ、康太がそんなにやりたいなら……。
けど康太のスケジュールは俺が決めるからな。
店からの連絡は全て俺にしてくるように!康太の連絡先は絶対に教えんぞ!
もちろん!鉄則は、康太に触れるな!恋するな!だ。それ、守れるのか?土井!」
「お前、どれだけ王様なんだよ。いやーあのドライなお前がここまでなるとはね。俺は感慨深いよ。お前の過去の女たちが知ったら嘆くだろな。こんなにやきもち焼いてくれて心配してくれるなら、みんなお前との別れを選ばなかったんじゃないのか?
康太さん、幸せだねぇ。
若林、安心しろ。
こんな良い方と巡り会えたんだ。俺たちは康太さんの無事を保証する。
それに、人の恋路を邪魔したいと思うほど、うちの従業員は恋に飢えてないよ」
「アドバイザーかぁ……。
ま、それならもう康太の手も荒れないしな、いいかもな。そういうのを仕事にするのも。」
そういうと、京介は康太の手をとり、甲にキスをする。
みな、見てられないという表情。
「寧々さんも来てくださりありがとうございます。
どうです?初めてのクラブシルキーは?
よろしければいつでもいらして下さいね。お待ちしてますから」
Maxは、一人一人に礼を言っている。
「若林もありがとうな」
そして、俺の前にきた
「高柳先生……もありがとうございます。
先生のおかげで本当に有意義な時間になりました。
また明日事務所に伺いますね。そこで改めてお礼を言わせてください」
そういうとMaxは握手を求めてきた。
俺はその手を取らなかった。そして
「あ、そうそう、言いそびれてたけど実はこの店の担当弁護士は俺からうちの真下に代わることになりましたので、今後は真下と宜しくお願いします。
もちろん引き継ぎはしっかりしてますし、真下からも状況を聞いていきますのでご安心ください」
「え……」
Maxの担当弁護人を真下に代わるように頼んでいた。ちょうどその決定が昨日あった。
これは伝えたくなかった……
俺は……
担当が変わることを伝えたくなくて、
会えなくなるということを、
その事実を
伝えたくなくて
Maxに会いたくなかったのだ……
もう、これでMaxとの関係は
終わりなのだ
京介の運転する帰りの車の中で、俺は、人知れず、一雫の涙を流したのだった。
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