第13話


ライブ当日。会場はかなりの人で溢れていた。

しっかりサングラスもして帽子も被ってグッズも持ったし準備はOK!

だけど……本当はライブ限定でしか買えないグッズを買いたかったんだけど莉羽という推しのライブの日に寝坊をしてしまった。不甲斐ない。

だから仕方なく諦めて僕が作った団扇で一生懸命、応援することに決めた。


「うお……絶対偉い人じゃん……」


A席に着くとやっぱり周りは大物そうな人しかいないし、場違いなんじゃないかと不安になる。


「あと五分……」


もうすぐライブが開始されるというのに周りの圧のせいで汗が止まらない。


〝〜〜♪♪〟


ライブが始まる合図の音楽が入り会場は一気にシーンとなった。

デーンという音と共にLieNのメンバー達が続々と出てきた。その度に湧き上がる歓声。

僕も叫びたい……!叫びたすぎる……!

そして最後は莉羽。莉羽が出てきた瞬間、今日1の歓声が鳴り響いた。

さすが莉羽……人気ナンバー1なだけあるなあ。


『みんなー!今日は来てくれてありがとう!ライブ楽しんでいってねー!』


「いえーい!」


はっ……!つい興奮のあまり声を出してしまった。

A席に座っている周りは僕に注目していて気まずい空気が流れた。


でもよく考えたらライブは楽しむところじゃないか!そうだ!気にしてちゃ楽しめない!

団扇とペンライトを必死に振ってオタクをした。

なんて気持ちいいんだ……!LieN神!


三曲の歌が終わってトークタイムが始まった。


『いや〜今回もファンがいっぱいだね』

『ほんと!ほんと!嬉しいね〜』


どうしてこの人達はこんな他愛もない会話をしているだけでこんなに尊いのだ!


『最近はなんか楽しいこととかあった?莉羽はどう?』

『俺?毎日楽しい』

『え、なんでなんで』

『ファンレター読み焦ってるからかな』


うう……なんていい子なんだ……!莉羽……!

今日も美しい!尊いぞ……!


『爽良は最近なんか面白い事とかあった?』

『あ、そうそう。この間ねご飯食べてたの。そしたら僕に気付いたLieNのファンの子が僕の名前を大声で呼んだんだけどそんなに興奮してくれるから僕のファンの子だと思うじゃん?そしたら全然、莉羽のファンの子だった』

『可哀想すぎんだろwww』

『www』


え、それ絶対僕の話じゃん。

なんかすごく照れ臭い。嬉しい。爽良最高!


『今日のライブ来てね〜って言ったから来てくれてると思う』

『どんな子か見てみたいわ』

『今日はその子に僕のファンになってもらうんだから!』


ん?なんで爽良は僕の方に目線を向けてんの?

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