第8話


「あー僕はなんて幸せ者なんだ。このまま死にたい、誰か殺してくれないかなあ」

「お前いよいよただのオタクだな」


凛太郎には莉羽が居候していることは話した。

最初は「やめとけ」って言っていたものの最近はもう呆れているみたいで面倒くさがりながらも僕の話を永遠と聞いてくれる。さすが心の友!


「推しが家にいるんだよ?ねえいるんだよ?」

「はいはい、わかったよ」


莉羽は今日テレビに出演すると言っていた。

当たり前にそのテレビは録画している!


「それにしても人気アイドルがこんなオタクの家に居候って何を考えてんだか」

「確かになんでわざわざ僕の家にいるのか不思議で堪んないよ」

「世の中、不思議なこともあるもんだな」

「それな」


確かにそうだ。そもそもなんで莉羽は僕の家に居候しているんだろうか。

人気アイドルしかもLieNの人気ナンバー1。

インストのフォロワー数350万人。なんで僕なの?

家が無いわけじゃないだろうし、レッスン場までも僕ん家からは30分はかかる。

わざわざそんな遠い所を選ぶ理由は?


「まあいいか。毎日推しを拝めて僕はラッキーだし」

「お前が女だったらファン達に殺されてるな」

「男でよかった……」


そんなことを考えているとスマホの通知がなった。


〈今日ご飯いらない。先寝てて〉


莉羽からのメッセージ。

そっかあ……今日は顔合わせれないのかあ。


「寂しいなあ」

「なにがだよ」

「今日ご飯いらないんだって。しかも先寝とけとか言うんだよ!僕の毎日の日課が……」

「なにお前ら気持ち悪い」

「おい!莉羽を侮辱するな!」

「すみませーん」


今日ご飯いらないなら僕は何を食べよう。

あ、そうか。凛太郎と食べる?いや最近、凛太郎はいい感じの子がいるとかなんとか言ってたような……?

はあ……僕って凛太郎以外、友達いないんだな。

改めてそう思ったらなんか寂しいよ。


「……凛太郎、今日は僕のために時間取らない?」

「取らねーよ。一人で食いに行けよ」

「つれないなあ。わかったよ!行くよ!ふん!」

「今度焼肉でも奢ってやるから元気出せ」

「ラジャー!」


仕方ない。自分のためにご飯作るのも面倒臭いし今日は一人でご飯でも食べに行くか。


〈わかった、仕事頑張ってね〉

〈ああ、さんきゅ〉


LIMEの返信はめちゃくちゃ早いんだよなあ。

しかも文章だからか気持ち優しく感じる。

一緒にいると罵声浴びせられるけど。


「はあ……尊い」

「どこがそんなにいいんだよ」

「言葉じゃ表せれない!もう全てが尊い!」

「はいはい、聞いた俺が悪かったよ」


よし、今日は牛丼にしよ。

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