第5話
会いたい……?僕に……?
僕にとって莉羽は本当にかけがえのない存在で。
画面越しに映る莉羽を見るたびに『今日も綺麗だ』『尊い』ずっとそう思っていた。
画面越しに映る莉羽ももちろん仏様以上の存在だけど実際目の前にして莉羽を見た時、『あーやっぱ僕のかけがえのない存在だ』そう思った。
だから僕が莉羽とプライベートで会うなんて許されることじゃない。
〈今から行きたいから住所送ってくれない?〉
それなのに莉羽と会えるのが嬉しくてオタクとしてしちゃいけないことを僕はしてしまった。
住所まで送っちゃって僕は莉羽のファンなのに。ファンでいたくて仕方ないはずなのにもう1度だけあの美しさを見たいと願ってしまった。
〝ピンポーン〟
「はい……」
「よ、お邪魔します」
やっぱり莉羽は美しくて触れてしまえば消えてしまいそうなくらい本当に綺麗だ。
「急にごめんね」
「あ、うん……大丈夫」
「あれ僕のファンだと言うわりにはあんま嬉しくなさそうだよね」
「……今はアイドルの顔しなくていいよ」
「え?」
だから僕の前では無理してほしくなくて素の莉羽でも僕はちゃんとファンでいるから、
「じゃあそうするわ。喉乾いた。いちごミルク」
「ん?え?え?え!?」
「は?お前がアイドルの顔しなくていいって言ったんだろ?いちごミルクねえの?」
いや待て待て。
莉羽ってこういうタイプだったの?えー!?
驚きすぎてよくわかんないんだけど。
「ごめん、いちごミルクはないや……」
「で?」
「で?え?」
「ねえなら買ってくるのが筋だろ」
「え!?えええ……わ、わかりました……」
神様仏様閻魔様。僕が知っている莉羽が今目の前にいません。
寧ろ、全く別人が……
なんなら今いちごミルクを買いに行かされてます……
僕は莉羽のファンです。
ファンだけど……初めて少しだけ辞めてやろうかと思ってしまった僕をどうかお許し下さい。
「はい、いちごミルク」
「おー、さんきゅ。コンビニのいちごミルクが1番美味いんだよなあ」
「ああ……そうですか」
あーあー!莉羽がどんな姿でも僕は一生オタクでいてやるさ!
僕の知っている莉羽じゃなさすぎてそりゃ驚いたけど……
けどやっぱり……どんな莉羽も……尊い!美しい!
いちごミルクをごくごくと飲む度に動く喉仏も、もうもはやその喉仏になりたいよ!
「なあ」
「は、はい!」
「引いた?」
「な、なにがでしょうか?」
「俺がこんなんで引いたか聞いてんだよ、わかるだろ」
「ひ、引いておりません!」
「へえ、相当俺のこと好きなんだな」
好きなんてもんじゃありませんとも。
もう尊すぎて仕方ないでありますとも。
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