三二階層の探索
ゆうがおダンジョンの三二階層は探索と同時に討伐も頼まれました。まあどっちも出来るもんね。依頼料が増えるので二つ返事で了承。丁寧に処理していけば大丈夫でしょう。
「三十二階は、海かあ」
見回す限りの海水、ぷかぷか泳ぐサメ。どう見ても海です。偽太陽も宙に浮かんどる。
「これじゃあ調査も何もないニャ。移動すらおぼつかないニャ」
「タツキを海中に沈めて浮き袋に」
「しんじゃうニャ」
タツキ浮きそうなんだけどなあ。ぷかぷか。
「最悪タツキを浮き袋にして私が泳ぐとして、木材加工してカッター船を作りましょ。動力は魔導具で作るよ」
「頑丈な船でお願いしますニャ」
そんなわけで海マップだということを報告して途中報奨金と経費を貰い、ゆうがお市場へ。撥水性のある木材と魔導具の材料を購入。
「この材料をこねこねして水力の出る機械にしていきまぁす。こねこねこね」
初めて自分の道具以外のものを作ったかもしれない。そんな推力発生器くんに魔素タンクを取り付けて、これを船の後ろにくっつけてお船は完成!
「問題はこれをどうやって三十二階層に持ち運ぶかだ……」
自宅の外で全部組み立てちゃったのよね。
「君たちなら、私の大事なこれ、触っても、いいよ」
「うおおおおお!!」
ということでまだ残っていた討伐者さん達の協力を仰いで担いでいってもらいました。いやー捗る捗る。
「ありがとー無事に船も浮かんだし満点満点。じゃあお好きなだけ触っていいですよー」
「うおおおおお!!」
「ギニャー!」
やっぱ猫できつねな妖精のタツキことニャー助太郎って人気よね。しかもふくよかで触り心地がアップしている。もみくちゃにされてニャー助太郎も嬉しそうだ。
「ハニャー! ギニャー! ワニャー!」
「もふもふもふもふ、もみもみもみもみ!」
「ニャアアアア!」
満足してお帰りになられた討伐者さん達と魂が抜けているねこきつねを尻目に、船に乗って意気揚々と三十二階層を探索する私であった。
「お、置いていくなニャ……」
「運命のマナい糸を引っ張って、そぉい!」
私たちは運命共同体なのでうっすらと繋がりがあるんです。それに世界一のマナを注ぎ込んで太くして、引っ張る!
強固になった繋がりで引っ張られるタツキ。その後ろにはタツキを飲み込まんとする大きな海のモンスターが!
「ギニャーぶくぶくぶく! 早く引っ張ぶくぶくぶく!」
「えいさ、ほいさ、えいさ、ほいさ」
「お、お尻噛まれたぶくぶくぶく!」
「めんどいからタツキごと吹き飛ばそう。魔導弾『ハープーンショット』!」
「ニャアアアアア」
タツキごと貫いて海のモンスターを処分。魔導銛みたいな魔導弾なので海のモンスターに銛が刺さる。それを引き上げていく私。タツキってなんだっけ。
海のモンスターを引き上げたと同時に船の上に再出現するタツキ。妖精はそう簡単には死にません。
「しねニャナツカー!」
再出現するやいなやドロップキックを私にかますタツキ。もんどり打って海に落ちる私。
タツキは船の速度を最大にすると今度は私を餌に海のモンスターを釣ろうとする。
「まってぶくぶくぶく、私はしぬ、普通にしぶくぶくぶく」
「ニャーの怒りはこれくらいじゃとどまることを知らないニャ!」
ちょっとすると私の姿を見て海のモンスターがやってくる。やべえ、飲み込まれたら死ぬ。
私は妖精じゃないんだぞ!
魔導銃に弾丸を込めようとする。そこでタツキが船ドリフトをかます。こぼれ落ちる弾丸達。
「あー! せっかく作った弾丸ぶくぶくぶく」
「ぶんぶんぶん、ぶんぶんぶん」
タツキ、調子に乗って我を忘れてるな……。
なんとか一発装填し、衝撃系の魔導弾『ハイブラスト』を発射して反動で船の上に乗り難を逃れる。
「たーつーきー」
「な、何のことかニャー?」
「マナ断食ね。私の怒りはとどまることを知らないのだ」
「ニャーン!」
「ふん、いい気味だ。さて、ハイブラストの衝撃で海のモンスターが釣れたっぽいけどなんだろね」
ハープーンショットを撃ち込んで引っ張り船に乗せる。さっきのと言い魚ってコトしかわからないな。専門家じゃないしな。
一度帰還して魚のモンスターを引きずりダンジョン管理組合の元へ。腐っても最強の体を持っているだけあって持ち運ぶのに苦労はしなかった。船とタツキの時はどうしたんだって? うふふ。
「これは近代マグロと温泉フグじゃの、かなりの価値があるぞい」
「ほへー、家一軒買えますか?」
「単体では無理じゃが、一年くらい漁に出ればすぐに買えるぞい」
「うひゃー」
鑑定士さんがそう発言する。
かなり豊かな海みたいだね。
この後は時間帯を変えてどんな魚が釣れるか調べたり、タツキを囮にして出現するモンスターを調べたりした。モンスターも多いけど豊かな漁場って感じだね。
「モンスターは処理しきればいなくなる。そうすれば豊かな漁場だけが残るね」
「海は広大だから処理しきれるのかニャ?」
「それは確かに。どうやるんだろう?」
管理組合に聞いてみよう!
三十二階層が豊かな海だと聞いて、自分も価値のある海のモンスターを手に入れたり、早速漁場の使用を申請しようとする人たちで活況な管理組合に赴く。
「へい管理組合の受付員、海みたいな階層の時ってどうやってモンスターを討伐するの?」
「えっと、モンスターだけ攻撃する魔法があるのでそれを何度も唱えるんですよ。三日も唱えれば大体の階層で駆逐されますね」
さすが魔法、何でもありよる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます