オーガキングの怨霊

 通常のオーガより三倍はあるかという身長。

 ペチャルメゾウより太い手足。

 でっぷりと太った胴体。


「これがオーガキングの怨霊か」


 今いる城の跡地。城があったんだからその内部に住んでいたオーガはかなりの数に違いない。もう跡地にはなっているけどそのオーガ達とスカルスの間で血みどろの戦いが繰り広げられたのであろう。地面が真っ赤に染まっている。全部オーガの血液だろうけど。城はボコボコになってるけど。

 これだけの血液が流されたのであれば幽霊になったオーガも数多くいるわけよ。それらが集まってオーガキングを形成しているって寸法よ。


「しかしあれだけ巨大なオーガキングの怨霊をどうやって浄化しよう。確実に今の弾数では浄化しきれないよ」

「何度か補充しないといけないわけなのニャね」

「そうなんだコン。ちなみに最初のころ使っていた古い弾薬に補充しても十二発しか弾数がない」


 最新の弾薬を補充する際にかかる時間は、大体一分。

 ボコボコになった城を駆け巡りながらならこの時間は取れそうだ。全弾補充するのはちょっと無理そう。削りながら動いて、止めに全弾発射をする感じかな。


 ハンドガンである強化魔導銃の射程距離ってそんなにない。大木の背丈の距離で狙って、当たればかなり良い方。至近距離で撃ちまくるか、範囲攻撃で巻き込む用にして戦わないといけないんだよね。

 今回は範囲攻撃に巻き込む。相手が巨大だしね。


 よし、戦闘開始だ。


 うおおお!

 とは叫ばないけど巨大な怨霊オーガキングに向かって突進する。一気に詰めるぞ。

 怨霊オーガキングは警戒はしていても気がついている様子は見受けられない。

 怨霊オーガキングは城の中庭にいるみたいなんだけどその図体とボコボコになった城のおかげで遠くからでもよく見える。見失う心配はなさそうだ。


 大体大股二〇歩くらいのところまで接近できた。もう一〇歩近づいて撃ち始めよう。


 一、二、三――


「グオォォ!!」


 !?


 サッとその場を飛び退く!

 そこに怨霊オーガキングから放たれたすさまじい勢いの怨霊の塊が飛んでくる! 怨霊弾か!?


 バゴォォォン!!


 その怨霊弾は桁違いな破壊力を有していて、着地した地面を抉るほどの力を見せた。崩れ落ちる城の残骸。当たったら、死ぬ、かも……。


「射線を通してくれてありがとね! 爆発除霊弾!」


 除霊弾を一発、怨霊オーガキングの至近で爆発させる。


「グオォォ!!」


 うん、かなり効いているみたいだ。一〇発一五発も当てれば除霊できるかな、多分。


「コンサタデハイル、コンサタデハイル」


 怨霊オーガキングは何かオーガ語でつぶやくとこちらに向かって怨霊弾を発射する。

 ひらりとかわす私。凄い破壊力だけど集中すれば当たるものでもないな。怨霊弾がぶつかり崩れ落ちる城の残骸。

 この怨霊弾も怨霊オーガキングを構成する幽霊や怨霊で出来ていると思う。さすがに周辺の霊を集めてこの破壊力は出ないでしょう。

 つまり回避し続ければ怨霊オーガキングも怨霊弾も弱体化していくってわけ。回避できるならね。


 とりあえずいったん引いて弾薬に除霊弾を装填しないと。

 ということで一度城から離れて補充道具で装填をする。

 怨霊オーガキングは何かつぶやいているだけで追撃はしてこなかった。


「装填完了っと。もう一度当てに行きますか」


 そんなわけで怨霊オーガキングの元に舞い戻る。するとそこには元気な状態の怨霊オーガキングが立っていたのだ。


「うっそ、傷が治ってる。周辺の霊気を吸うスピードがとんでもないのか。これは一度逃げて――」


 退却して戦略を練り直そうとしたその時、頭上に降りかかるものがあった。

 完全にノーマーク。

 完全に出遅れた。


 ガシャーン


「うわわわ!?」


 そう、私は崩れてきた城の残骸に飲まれて押しつぶされてしまったのだ。


 ヤバい、動けない。目の前には怨霊オーガキングがいる。ヤバい。


 その怨霊オーガキングはこちらに狙いを定めて怨霊弾を発射しようとしている。


 逃げ場は、ない。

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