033 お買い物2

 日用品として必要なのはとにかく食器だ。マイホームで食事を摂る際にこれまではスキルで出てきたものをそのまま使っていたけど、これから先こっちで購入したものを食べる時に食器がなかったら不便だ。そんなわけで食器を買いに雑貨屋に入ったのだが、


「木製のものが多いんだな。てっきり焼き物がメインだと思っていたのに」

「木属性が使える魔術師さんがいると大量生産が出来るんですよ。それに、ここは冒険者向けのお店ですからね。持ち歩くのに割れ物よりは木製の食器が便利です。軽いし丈夫だし。もちろん陶器の食器だってありますけど、そういうのは貴族様くらいしか使わないですね」


 マリーの説明に思わず納得。陶器ってなんだかんだ重いから、よほど高ランクのアイテムボックス持ちじゃないと持ち運ぶ食器としては木製を選ぶわな。


 わりと安価に食器が揃えられそうでなによりだ。食パンが乗るくらいの大きさな平べったい皿や、スープを入れられそうなお椀、飲み物を飲むのにちょうどよさそうなコップなどを選んでいく。コップはどうやら竹みたいな植物でできているようだ。あとはワンプレートの食事もしくは大皿のおかずに使えそうな、大き目で平べったい皿と、ロールパンが一つ乗るくらいの取り皿にちょうど良さそうな小さめの皿もほしい。

 

 それから、フォークやスプーンも必要になってくる。ナイフも含めたカトラリーセットもあったが、ナイフは今のところ必要なさそうだからばら売りのものを選んで買うことにした。


 結局、どれもこれも予備含めて5点ずつ買ってしまった。スプーンとフォークはそれぞれ小銅貨1枚なので合わせて大銅貨1枚、小さい皿とお椀がそれぞれ小銅貨2枚で合わせて大銅貨2枚、中くらいの皿とコップがそれぞれ小銅貨3枚なので合わせて大銅貨3枚、大皿は1枚で小銅貨5枚なので大銅貨2枚と小銅貨5枚だった。


 しめて大銅貨8枚と小銅貨5枚になった。お会計の時に雑貨屋の店主から、子供用の食器はいらないのかと問われたが……やんわりと断ることで難を逃れた。どうしてそんなことを聞くんだと逆に聞きたいくらいだったが、冷静に大人な対応をした。ひょっとしたらまた行くかもしれないお店だし。


 気分を切り替えていこう。……食器が揃ったから、あとは着替えなどの衣類も必要だよな。


「さぁて、次は服だな」

「じゃあ服屋さんに行きましょう。こっちです」


 マリーが先導して案内してくれる。……この世界に来て初めて大きめの街に来たが、やっぱり異世界だ。中世ヨーロッパのような石造りの建物が立ち並び、大通りは馬車がすれ違えるほど広く、人通りも多い。きっと厳密には中世というより近世なのだろうけど、正直なところ違いが分からないから中世ということにしておく。


 しばらく歩いていくと、マリーが一軒の建物の前で立ち止まった。看板を見る限り、どうやらここが目的の場所らしい。


「レックスさん、こちらですよ」


 マリーが扉を開けてくれたのでそのまま入っていく。中には何着かの服が綺麗に並べられていた。奥には仕立て職人らしき男性が座って作業をしていたが、こちらに気付いて挨拶する。


「いらっしゃい。――お、そこにいるのはひょっとしてマリーか? マリーじゃないか!?」

「はい、お久しぶりです」


 どうやらこの店主、マリーと知り合いらしい。聞けばマリーの叔母さまの旦那さんらしい。血縁はないけど、呼び方としては叔父でいいのかな。うちはあまり親戚関係でいい思い出はないが、どうやらマリーはちゃんと親戚付き合いが出来ているようだ。


「今日はどうした? ……というか、そっちの人は?」

「こちらはレックスさん。冒険者です。その、今は私も冒険者をしていて、こちらのセフィリアさんとも一緒にパーティを組んでいます」

「はじめまして。セフィリアよ。見ての通りハーフエルフよ」

「レックスです。よろしく」


 お互い自己紹介をして握手を交わす。マリーの叔父さんの表情が少しだけ和らいだが、すぐに元に戻った。


「マーカスとエリーゼのことは残念だったな……」

「……はい。いつか、冒険者として大成して、両親を買い戻したいと思ってます」


 マーカスさんとエリーゼさんはマリーの両親だ。しんみりとした空気をセフィリアがいったん区切って、本題を伝えてくれた。


「まぁ、そうだよな。多少は協力させてくれ」


 マリーの叔父さんはそう言って、少し値引きしてくれることになった。

 なんだかんだマイホームの浄化スキルに頼ってきたが、複数着あれば着替えることだってできる。トップス、ボトムス、下着、靴下っぽいものまでどんどん選んでいく。女性陣の分はマリーの叔母さん(当然ちゃんと挨拶を交わした)があれこれ世話を焼いて選んでくれていた。


 そんなこんなでけっこうなおまけと値引きをしてくれたにも関わらず、小銀貨2枚分の大きな買い物となってしまった。まぁ、先行投資と考えればいいし、戦闘で汗をかいた時に着替えがあるって思えばけっこう嬉しいものだ。


 二か所で買い物をしてけっこう時間も遅くなってしまったので、マリーの新しい剣とセフィリアの弓矢は明日にすることになった。


 さて、レベルも上がっているだろうし、家に帰ったらスキルポイントやマイホームポイントの割り振りを考えねば。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


レックスたちの所持金


前:小金貨1枚 大銀貨5枚 小銀貨1枚 大銅貨5枚 小銅貨6枚


収入:小銀貨1枚 大銅貨3枚 小銅貨6枚

支出:小銀貨2枚 大銅貨8枚 小銅貨5枚


後:小金貨1枚 大銀貨5枚 小銀貨0枚 大銅貨0枚 小銅貨7枚

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