020 スタル村に帰還

 翌朝、ばっちり回復した俺たちは無事にスタル村まで戻ってくることができた。セフィリアの風魔術のおかげで戦闘もものすごくやりやすかった。風魔術には対象の敏捷力を上げるバフがあるらしく、相手よりも一歩素早く行動できるおかげで危なげなく魔物を撃破することができた。

 なにはともあれスタル村で受託したハンマーボアの討伐を報告せねばと思い、宿までやってきた。


「おう、戻りが遅いから心配していたぜ。なんか一人増えてるな」


 マリーが宿の親父にハンマーボアの牙を提出する。これが討伐した証になるらしい。討伐報告やそもそも素材にもなるし、冒険者にとって解体の心得ってのは本当に基礎の基礎として求められるらしい。ハンマーボアの討伐報酬として銀貨3枚を受け取ったところで本題だ。


「森の中でエッグベアーに遭遇した。ここにいるセフィリアが実際に襲われていたから証人になる」

「え、エッグベアーだと!? おいおい、三級魔物じゃないか。こりゃ三級冒険者なり四級パーティを招集しないとならないな。ってことはフレッサの街まで伝令がいるな……」

「あの、それなら私たちがその伝令になります。どのみちフレッサに行くつもりでしたし」


 マリーが提案すると、親父は腕組みをして考える素振りを見せる。


「うむ……なら頼んだぞ」


 ギルドに届ける書状を宿の親父が書いている間に、二人に尋ねる。


「三級魔物って……どういうことだ?」

「えっと、その……基本的なことなんですけど、ご存知ないのですか? ……まぁいいです。冒険者や魔物、それからギルドから出される依頼には、一から七まで級が割り振られているんです。中には特三級とか準三級とか細かい分類があるんですけど、ざっくり七段階です。ちなみに私は六級で、五から七級までの依頼が受けられます」

「なるほど。自分の級より一つ上まで受けられるってことか。じゃあ、六級冒険者が討伐可能なのは五級まで、エッグベアーとは戦ったらダメってことだな」

「基本的にはそうですね。ただ、三級以上は単騎での討伐は同級じゃないと……難しいです。個人では五級程度でも人数が集まればパーティとしては四級ってことにもなり得ますから」


 ふぅむ。よく読むようなファンタジー小説だとS級とかA級とか表現するような部分がシンプルに数字で割り振られているだけのことか。

 そう納得していると、奥から親父が羊皮紙のような雰囲気の茶色い紙を丸めたものを持ってきた。


「……っと、出来たぞ。あとはこいつを持ってギルドに行ってくれ。俺たちはここで待っているぞ。エッグベアーか……村に近づかなければいいのだが」

「すぐにでも出立したいのはやまやまなんだが、装備を整えたい。店は……」

「あ、私が案内するから大丈夫です。行きましょう」


 マリーは早速案内してくれるようだ。


「ありがとう。頼むよ。セフィリアはどうする?」

「私も行くわ。装備を新調したいし。というか、服を繕ってほしいわね」


 セフィリアにいたっては未だシーツをマント状態にしているし、確かに繕ってもらったほうがいいだろう。とはいえ、村でどれくらいの装備が整えられるのだろうか。


「セフィリア……お金ある?」


 そうだった。今、われわれの所持金はさっきの報酬である小銀貨3枚に大銅貨2枚に小銅貨4枚。これで買いそろえなければならないのは俺の剣と盾、マリーの剣、そしてセフィリアの服と杖か弓矢だな。


「そうねぇ……逃げ出す時に革袋を一つ落としたみたいで。あるのは大銅貨が7枚ってところね」


 おぉぅ、かなり心許ない気がする。もう少しまとまった額が欲しいなぁ。


「まずは武器屋かな」

「そうね、レックスさんの装備はしっかりしたものにしないと」


 なんだかんだ盾持ちの俺がちゃんとしないと、この二人を守らないといけないもんな。ひとまず俺たち三人は武器屋を目指すことにした。

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