016 ハンマーボアを討伐

「おぉ、あれがハンマーボアかな」

「そうですね。でも、数が多いです」


 俺たちの目の前にいるの、成人男性くらいの大きさがあるイノシシ型の魔獣。それが5体ほどいる。宿屋の親父が言っていたように、そのおでこは隆々としていて、ハンマーのようだった。


「どうする、マリー。俺がやろうか」

「いえ、私がやります。レックスさんにばっかり頼るわけにもいきませんし」


 マリーは腰に提げていたショートソードを抜き、構える。


「それではいきます!!」

「ブモォオオオオッッ!!!」


 マリーが走り出すと同時に、ハンマーボアたちも動き始めた。


「ブモモォオオオッ!」


 先頭を走っていた一匹が勢いよく突っ込んでくる。マリーはタイミングを見計らい……


「ハッ!」

「グギャアアッ!」


 すれ違いざまに胴体を切りつけ、怯ませた。

 すかさず俺がそのボアを斬りつける。


「せいっ! はぁっ!」

「フゴッ!? ブギィイイッ!」

「うおっ、硬っ……!」


 俺の剣が当たった瞬間、ハンマーボアはその巨体を跳ねさせながら地面を転がった。とはいえまだ絶命はしていないようだ。あまり無暗に斬ってしまうと、食肉部分が減ってしまいそうだ。とはいえ……けっこう強いから贅沢はいってられないけど。


「はああああっ!」

「ゴブッ……ブギュゥウウッ……」

「ふう……」


 マリーの一撃がとどめとなり、ようやくハンマーボアは息絶えた。スキルとしての剣術がある分、マリーの剣はやっぱり冴えている。……が、これでやっと一匹。残り四匹もいるんだからまだまだ油断はできない。

マリーが次のターゲットを探しつつ、俺の方を見る。


「レックスさん、大丈夫ですか?」

「あ、ああ……」


 俺は一瞬、言葉に詰まってしまった。マリーの顔に、ボアの返り血がついていたからだ。……通常、返り血を浴びた女の子なんて見ないからな。


「……? どうかしましたか?」

「いや、なんでもないよ。次、来るよ!」


 突進してくるボアを回避しつつ、頭突きしてくる別のボアは盾で受け止める。拮抗した一瞬の隙に、ボアの首筋に剣を差し込む。吹き出す血にビビりながらも、深く突き刺して二匹目を倒す。


「ブギィイイイ……!!」


 残りは三匹……そのうちの一匹をマリーが倒す。あと、二匹。


「さすがに、疲れてきたな……」


 草原の道中でも戦闘はなんどか経験していることもあり、体力は着実に削られている。HPと疲労度は比例しないっていうのがこの世界らしい。


「レックスさん、あと少しですよ。頑張りましょう」


 マリーは笑顔で励ますが、顔についた返り血のせいで台無しだ。

 そんなマリーのためにも、頑張ってマイホームを育ててせめてシャワールームくらいはつけたいものだ。


「せりゃあ!!」

「はぁあ!!」


 魔物とはいえ生き物である以上、首が弱点らしい。それを理解した上で斬撃を加えると、そこそこ苦戦はするが何とか残り二匹も撃破できた。……にしても、粗鉄の剣ということで大分ボロボロになってしまっている。これはどこかで剣を買いなおすなり、研いでもらうなりしてもらう必要がありそうだ。

 ……異世界ファンタジーといえばチートな剣を使うことが多いから、武器のメンテナンスを気にしないといけないのは大変だなぁ。RPGだったら、こういうのが順当なんだろうけど。銅の剣から鉄の剣そして鋼の剣みたいな。


「ここで解体するのは大変なので、レックスさんのスキルで仕舞ってしまいましょう」

「そうだな。開けマイホーム!」

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