002 狭小マイホーム

「うぉあ……」


 気付いたら森の中にいた。……服装は麻布っぽいシャツに同じ素材のズボン、ちゃんと異世界っぽい。召喚ものだと服装が現代日本すぎて浮く、みたいなことあるからな。ちゃんと小さい剣……いや、大振りのナイフか? それに木の丸盾と装備品もある。取り敢えず……あるあるだが、あれを言ってみるか。


「ステータスオープン」


 ……本当に出やがった。でもまぁ、これで自分の能力を確認できるのか。


名前:タツヤ・イエイリ

職業:無職

レベル:1

HP:100/100

MP:0/0

攻撃力:5(+7)

防御力:3(+5)

素早さ:2

魔法力:0

精神力:4

器用さ:5

アクティブスキル:なし

パッシブスキル:鑑定(序) 言語の加護(微) 即死耐性(小)

ユニークスキル:マイホーム

称号:転移者

装備:粗末なククリ、木の丸盾、麻布の服


 弱いなぁ……おい。弱い上にありきたりかよ。ていうか無職じゃん。いや……それは事実だから仕方ないな。アクティブスキルは戦闘に使う技とか魔法だろうが、パッシブのこれらは……序とか微ってなんだ? ランクなんだろうけど、順番が分からない。そういう時の鑑定スキルか。そもそも鑑定ってパッシブなのか? 能動的に使うからアクティブスキルな気がするが……まぁいいや。

 そうか、パッシブスキルの段階は言語の加護のおかげで分かるぞ。

 序→微→下→小→中→上→正→大→特→真→超→極の十二段階か、いや多いな。

 言語の加護はある程度の基礎知識も加護してくれるのか。流石に女神が最低限のスキルというだけある。……なら即死耐性はもう少し強くしておいてほしいものだ。あとはユニークスキルのマイホームか。ユニークスキルには括弧書きがつかないようだ。まぁ、ユニークっていうくらいだから、そういうものなんだろう。


「使ってみるか……ユニークスキル、マイホーム!!」


 目の前に手のひらをかざすと、光のゲートが現れた。ワープゲートみたいなものか。扉が出てくると思っていたから、若干の飛び込みづらさを感じながらも光のゲートに足を踏み入れる。


「おわ、玄関だ……狭いけど」


 さっきまで異世界の森にいたというのに、急に現代日本だ。靴を二足もおけば埋まるような狭い玄関で靴を脱ぐ。……異世界のブーツ、紐でちゃんと結んでいるから脱ぐのが手間だな。靴箱も小さいながら備え付けられている。靴を脱いで顔を上げれば、そこはありきたりなワンルームアパート風の空間だった。いや、実際に住んだことがないからこの雰囲気がありきたりかどうかの確証はない。広さで言えば三畳くらいだろうか。一口コンロに小さな流し台、布団が一セット、座卓……家電こそないが普通に暮らせそうだし、なによりも嬉しかったのが――。


「この布団、ちゃんと俺のだ。良かったぁ、枕が変わると寝られねんだわ」


 俺が愛用している寝具がそのまま置かれていた。良かった、これならちゃんと寝られる。

 取り敢えずこの家のステータスも見られるか確認してみるか。


「ステータスオープン」


マイホームレベル:1

発動スキル

・自動回復(序)

・食料供給(序)

・次元収納(序)

・内装生成(序)

・浄化(序)

・自動修復(序)

・清掃(序)

・家具作成(序)

・消耗品作成(序)


 ふむ、なかなかいいんじゃないか? 特に次元収納がいわゆるアイテムボックスだとしたら色々と使えそうで便利だな。それに食料供給、これはまさに生命線になるだろう。試しにキッチン上の収納を開けてみると、そこには――


「カップ麺、こりゃありがたいな。ちゃんとヤカンもある。一口コンロは……よし点火した。腹は減ってないからまだいいや」


 水回りが気になるところだ。浄化と清掃という似た感じのスキルがあるが、浄化が人間に対してで清掃はこの部屋が勝手に綺麗になるってことだろう。さてさて、トイレとか風呂はどうなっている? 玄関以外のただ一つの扉を開けてみると、そこには便器が一つあるだけだった。……うーん、風呂なしか。浄化スキルを信じるっきゃないな。

 まぁ、俺が成長すればいつか風呂も出来るだろう。そのためにはレベルアップ……てことは、戦わないといけないってことか。


「いっちょやってやるか」


 玄関の扉を開け、俺は再び異世界に足を踏み出した。

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