第13話 見切りをつけた勝利宣言

 自宅で夜ご飯を食べていると――ピンポーン、とチャイムが鳴った


「先輩!」


「白……その傷、どうしたんだ!?」


「助けてください……!!」


 玄関を開けると傷だらけの白と泣いている彰がいた為、とりあえず家に入れて三人でテーブルに座わった



「で、誰にやられたんだ?」


「母親です……今日、久しぶりに家に来たと思ったら……機嫌が悪くて暴力を振るわれました」


「何だと……その母親は今、どこにいるんだ?」


「今はまだ家にいると思います」


「そのことを祖父母は知っているのか?」


「いえ、言いたくなくて言えていません」


「どうして頼らないんだ?」


「母親は祖父母の前だといい母親を演じているので……このことを知ったら、きっと悲しみます……祖父母の助けがなければ彰も私も今まで生きてこられなかった……お世話になっている祖父母を悲しませたくなくて……」



「……」


「だから、知られたくないんです。それに、こんな事を隠していたことがばれたら……きっと嫌われてしまうから」



「白、俺は会ったことはねぇが……話を聞く限りじゃ絶対にそんなことで祖父母は白を嫌いにならないと思うし、むしろ……このことを知らずにいるほうが後々辛いだろう」



「でも、祖父母は母親がいい母親だと信じていて」


「だとしても、今の二人の状態をみれば必ず考えは変わる……それに、俺に母親から二人を引き離す策がある」



「本当ですか?、でも……警察に行ったら私と彰は離れ離れにされるかも」


「大丈夫だ、また一緒に暮らせるようにしてやる」


「そんなことが出来るんですか?」


「ああ、俺を信じて任せろ……必ず二人を助けてみせる」


「先輩……」


「だから母親のことは俺に任せてここにいろ」


 白と彰に応急処置をした俺は家を出た






 ◆◆


 白のアパート――


 俺がドアチャイムを押すと程なくして、ぼさぼさの髪の女性が缶ビールを片手に出てきた



「ん……ああ、アンタが彼氏?」


「そうです、あなたが白と彰に暴力をふるったと聞いて来ました」


「だったら何?」


「虐待をしたことを認めるんですね」


「虐待?人聞きが悪いなぁ……私はただ聞き分けの悪い子供にしつけをしただけだよ」


「あれは明らかにしつけの範疇を超えていた、明らかな虐待だ」


「んー、で?ムカついて殴って何が悪いの?」


「それ……本気で言ってます?」


「大体、子供なんて親の所有物でしょ?私のものをどう扱おうが私の勝手でしょ」


「……」


「それにたった一回でそんな大袈裟な」


「回数なんて関係ない、やったことの重みがわかっていないんですか!」


「重み?わかりませーん」


「なら……もうあなたと話すことは何もありません」


「あっそ、邪魔だからさっさと消えて」



 俺はその後、白の母親とのやり取りを録音していたスマホと傷ついた二人を連れて白の祖父母の家に行った






 ◆◆


 白の祖父母の家――


「貴方の子供が貴方の孫にしたことを話しに来ました」



 白の話によると、祖父母は母親が良い母親だと信じているとのことなので先に決定的な証拠を掴みに行った


 ちなみに真っ先に警察に行かなかったのは二人が別々な場所に引き取られる可能性があったからだ



「すまなかった……」


 証拠も合わせてすべて話すと白の爺さんは頭を下げた


「頭を上げたください」


「知らなかったで済まされる話じゃない、これからは私たちが二人の事を必ず守り、育てると誓う……あの大バカ娘のことも合わせて、後のことは任せてくれ」



「はい、特に二人のことをお願いします……」



 白の爺さんは白の母親の親とは思えないくらいにまともだった


 白も彰も信用しているし後のことは全部任せてしまっても問題ないだろう






 ◆◆


 数日後――


 最近俺と白は昼休みに一緒に学校の中庭のベンチで昼食を食べている


 今日は白が弁当を作ってきてくれると言っていたので手ぶらできた



「先輩、お弁当を作ってきました!」


「おう、ありがとな」


「ハンバーグ弁当です、どうぞ」


 俺は差し出された弁当を受け取り箱を開ける


 中にはハンバーグのほかにつけ合わせに相性のいいポテトと彩りの良い野菜のトマトやブロッコリーも添えてあり、バランスのいい弁当だった



「いただきます」


「味は……どうですか?」


「最高においしい」


「本当ですか?」


「ああ、完璧だ」


「やったぁ……!」


 隣に座る白はにっこりと笑った。そのあまりの可憐さに俺の目は釘付けになる



「あれからまた、先輩の好みの味を研究してみたんです」


「凄いな、俺の好みぴったりの味だ」


「改善点があれば言ってくださいね」


「この料理に口出しできるほどの実力は俺にはない」


「そんなことはありませんっ、先輩の料理は……えっ、と……素敵です!」


「……無理に褒めようとしなくていい」


「あの、一つお願いを聞いて貰っていいですか?」


「ああ、」


「……もう少しだけ、近くに座ってもいいですか?」


「いいぞ」


「ありがとうございます……!」


 白がさらに近くに移動して座った、距離が近すぎて互いの体がほとんど密着している……


 俺はいいが、この近さを白はどう思っているんだろうか



「狭くはないか?」


「むしろ、このくらいくっついていた方がいいです……!!」


「ならいいが」


「……先輩の体あったかくて好きぃ……」


「俺も白の体が好きだぞ」


「先輩の今の言葉……普通にセクハラみたい、……です」


「お前が言うんかい……それで、あの後はどうなったんだ?」


「彰と祖父母の家に引っ越すことになりました」


「母親は?」


「祖父母がもう二度と近づけないようにしてくれました」


「そうか」


「これも全部先輩のおかげです……もう何回助けてもらったことか」


「俺は約束を守っただけだ、男に二言はねぇ」


「私、たまに思うんです……いじめられていてよかったと」


「何故だ?」


「だって、あの日まであそこであんな扱いを受けていたから私は先輩に会うことが出来たんです」


「そう言われても何とも言えないが……まあ、これからもよろしくな」


「はい、これからもよろしくお願いします!先輩……!!」






 ◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


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