第7話 歪

「知らない天井だ……」


 目が覚めると俺は覚えのない部屋にいた


 起き上がろうとしたが両手両足が布で縛られているため全く身動きが取れない


「確か……俺は白の家で飯を食っていて……」


 で、意識を失って今……か、最後に見た白が笑っていたように見えたが――



「ふっふふん、ふっふふん、ふっふふん、ふふっふー」


 部屋の外からやけに上機嫌な鼻歌が聞えてきた


 声色からして間違いなく白の声だ


 その声に注意深く耳を傾けている――と、



「起きました?先輩」


 白がドアを開けて入ってきた、何故か体にバスタオル一枚だけをまとった状態で



「ああ、こんなに厳しい寝起きは初めてだ」


 今の白の目には光が無い、無感情とはまた違う何かを秘めたかのような暗い目だ……


 状況から考えて白が俺を眠らせて縛ったのは確定として、その狙いは何だ?


「先輩……ごめんなさいっ」


「謝るくらいなら早く外せ」


「私を受け入れてください」


 こいつ、話をきかない!


「ねぇ……しよ?先輩」


 白が一歩、また一歩と近づいてくる……そしてついに吐息がかかる距離まで来た


「いきなりどうした、物事には順序があるだろ」


 姿と匂いからしてシャワーを浴びた後みたいだ


 ただでさえ寝起きで頭回んねーのに甘い香りでさらに思考を奪い取られる


「いくね、先輩」


「――っう、」


 引くほど話を聞かない白は俺の服の隙間に手を伸ばしてくる


 程よい熱を帯びた白の手が肌に触れるとその場所から全身に興奮が広がっていく



「……おい!なんで俺を襲おうとする!」


「先輩と私が幸せになるために必要なことだからですよ」


「俺と白の幸せに必要なことがこれ?こんなことしたって、誰も幸せになんねぇよ」


「なりますよ!!」


 急に白が声を荒げる、こんなに大きな声を出す白なんて初めて見た……


 それだけで今の白がどれだけ精神的に不安定なのかが伝わってくる


「先輩は優しいからっ、無理にでも既成事実を作れば!私とずっと一緒にいてくれますよね?私だけの先輩で居てくれますよね?」


 一緒にいて欲しいって理由と独占欲でこんな事をしてるって言うなら……



「作んなくてもいてやるよ」


「???」


「既成事実なんか無くても一緒にいてやる」


「えっ、そっ、それって……え?」


 白は動揺し始めた、白が俺に対してそこまで重い感情を寄せているのなら逆にそれを利用すればいい


 レイプ魔には屈しない!


「白が俺と同じ気持ちみたいで嬉しいよ」


「同じって!……先輩、がっ、私を……好き?」


 白は顔に手を当てて赤面している


 意外とちょろいな、このまま主導権を握れそうだ



「ああ、だからあの日助けた……それより今はお前を抱きしめたい」


「わっ、わたっ、し、を……だ、抱きしめたい!?」


「そうだ……でも布が邪魔で動けない、困ったな」


「すっすぐに外します!」


 白が一つずつ布を外していく――


「これで最後です、跡とかは大丈夫ですか?」


「ああ、ありがとう助かった」


 なんで俺はレイプ魔に礼を言っているんだろう……



「先輩!」


「うぉ!?」


 白が抱き着いてきた、凄い勢いだ……闘牛かよ


「……何で手を回してくれないんですか?」


「何でってさっきまでの話はなぁ、全部」


「まさか……噓だ何て言いませんよね??」


 本心を打ち明けようとした瞬間――背中に冷たい何かが当たる



「もし、私と結婚を前提に付き合っているということを冗談でも噓だなんて言ったら……刺し殺します、そして私も死にます」


 刺すって、この感覚は……ナイフ!?


 ヤバイ!とにかくこいつを落ち着かせないと!殺される!


「そっ、そんな訳ないだろっ、俺たちは付き合ってるよ」


、お付き合いですよ……言質、取りましたからね」


 白がニンマリと笑った、最後のほうが聞き取れなかったが……


「白は笑った顔が一番可愛いな」


「えっ、私が……可愛い!?」


「そうだが、自覚なかったのか?」


「そんなこと……初めて言われました、噓だと分かっていても喜んでしまいます……!!」


 白は恥じらいを見せて赤くなった顔を小さな手で覆った


 多少歪んでいるが結構中身も可愛い所あるし付き合うのもそこまで悪い話じゃないか……


 こうして俺に初めて彼女ができた

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