第36話 やっかいな雑草代表格
畑で作物を育てることは、日々、雑草と害虫との戦いの連続である……。
「口じゃなくて、手を動かしてねー」
「あ、はい」
今日は、朝からアイギスさんと畑の雑草取りの作業をしていた。
虫は、受粉に必要な場合もあるし、簡易な虫除け液を撒いておけば手間はそれほどかからない。
しかし、雑草はダメだ……。
除草剤のようなものを撒いたら作物も枯れてしまうからね。
数日したら、雑草がポツポツと生えてくる。
液体肥料を撒こうものなら、ワッサワサになってしまう。
そして、やっかいな雑草……こっちの世界にもありました。
奴の名は、スギナ。
ツクシの草の部分……ツクシも草だよな? 何て言うんだろ?
視界に広がるスギナをせっせと抜き、なが……抜けない。切れちゃうな。
ブチブチちぎりながら、そんなことを考えていた。
確かツクシは食べれるんだよな。
スギナに紛れるように、ツクシもプチプチちぎって、畑の片隅に纏めて置く。
雑草や落ち葉などは、この場所に全部纏めてある。
そのうち腐葉土みたいにならないかなぁと思っている。
しばらく作業を続けて、だいたいの雑草を取り除くことが出来た。
一息入れるために、俺達は木箱に座って休憩することにした。
何となく、スギナはツクシの何か気になっていたので、調べてみることにした。
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名前:スギナ
シダ植物門トクサ綱トクサ目トクサ科トクサ属の植物の1種。
一般的には栄養茎をスギナ、胞子茎をツクシと呼び分けることがある。
また、水洗いをして天日乾燥させたものは生薬になり、問荊(もんけい)と称されている。
薬効は利尿作用、去痰作用があり、肝炎、膀胱炎、浮腫(むくみ)、膝かぶれ、咳によいと言われている。
しかし、多量の摂取は推奨されない。
(wikiより)
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おお……こう言う時は、調べるが役に立つんだよなぁ。
ツクシは胞子茎、スギナは栄養茎って言うのか。
しかも、スギナは薬になるんだな……多量がどのくらいか分からないけど。
うーん……薬草を少量ブレンドしてお茶にすれば、万が一悪影響出ても回復効果で何とかなるか?
人体実験が必要ですね。
「ジョージさん急に不穏なこと言わないでくれる?」
「あれ? また口に出てた?」
「最近多いよね……なんか心配なんだけど」
「い、いや、大丈夫大丈夫! 色々余裕が出てきて、気が抜けてるだけだと思うからさ」
「うーん……そう? なら良いんだけど」
考え事の一部が口に出ちゃうの癖になってるみたいだな。
こんな些細な事でも心配してくれるなんて、アイギスさんは良い子だな。
……俺の年齢的に、心配になってるって訳じゃないよね?
「それで、なんの人体実験するつもりなの?」
「あ、えっと、このスギナって薬として使えるみたいだから、とりあえずお茶にして試してみようかなと」
「へぇ、いくらでも生えてくるやっかいな雑草だと思ってたけど、薬になるのね」
「まぁ、多量に摂取するのはダメみたいだけどさ」
「あー、それで人体実験ってことね」
「そういうこと。利尿作用があるみたいだから、膀胱炎や尿路結石とかの人に使えるかも?」
「え、ぼうこうえん? にょうろけっせき?」
「あ、そうか。炎症とかって回復魔法やポーションで治っちゃうのか。尿路結石は……小さな石が身体の中に出来て、なんかめっちゃ痛いらしいってことしか知らないけどね」
「そうなのね。痛みだけなら、魔法やポーションを使う人は多いでしょうね」
「だろうなぁ。でも、石がなくなる訳じゃないから、痛みを繰り返してる人がいるんじゃないかな」
「そう言う人は、お金があれば万能薬を買うでしょうね」
「万能薬か……何でも治せる魔法の薬だな。師匠にレシピだけは教えてもらってるから、材料になるやつは、この畑でだいたい育ててるけど、エルダーフラワーとエルダーベリーが無いんだよ」
「うーん、聞いた事ないわね。あの木は違うの? 花も実も成ってるけど」
そう言ってアイギスさんは、何種類か植わっている木の1本を指差した。
「あぁ、あれね。どうなんだろう? 俺の【調べる】だとセイヨウニワトコって出てくるんだよなぁ。あれも薬になるらしいけど……うーん、エルダーフラワーもベリーも実物を見たこと無いから、分からないんだよ」
「そう……なら商業ギルドへ持っていけば鑑定してくれるんじゃない?」
「あ、そうか。もしあれがエルダーフラワーとベリーなら、スギナ茶を実験する前に、万能薬作れるか。んじゃ、ギルド行ってくるわ。ありがとアイギスさん」
「いえいえ〜。いってらっしゃい」
こうして、俺はセイヨウニワトコの花と実を持って商業ギルドへと向かった。
鑑定料を支払い鑑定してもらうと、エルダーフラワーとエルダーベリーだった。
何という……やっぱ【調べる】は、どうしてもwiki限定になっちゃうからなぁ。
ま、これで万能薬は作れるからいっか。
家に戻り、万能薬に必要な各種ハーブ、エルダーフラワーとエルダーベリー、魔力茸、薬草、ハチミツなどをレシピ通りに調合し、一応、万能薬が完成した。
再度、商業ギルドへ行って、鑑定してもらい、万能薬であることを証明してもらった。
今後は、少量だが、万能薬もギルドへ卸すことになった。
価格はなんと、1本、卸しで金貨3枚。販売は金貨5枚だってさ。
万能薬高すぎ。
まぁ効果が効果だし、材料も何種類も使うからなぁ。
こうして、スギナ茶実験の準備が整ったので、家に帰り、さっそく試飲。
1、2杯は飲んでも大丈夫だった。
3杯目を飲んだら、お腹がギュルギュルし出したので、2杯までだな。
利尿効果については、十分確認できた。
次の日に、商業ギルドでスギナ茶を登録しておいた。
効果や尿路結石の説明をしておいた。
スギナ茶なら、石が体外に出るまで継続して飲まなければいけないデメリットがあるが、万能薬に比べれば、かなり安いからね。
スギナ茶は、スギナを乾燥させて粉末状にしたものに、少量の薬草を混ぜて調合してある。
ポーションの小瓶に粉末を入れて販売する。
これだけで、20杯分くらいはあるはずだ。
価格は、1本、銅貨10枚。
ほとんど小瓶の値段が占めてるけどね。
ま、俺はスキルを使えば、小瓶までセットだから、原価はほぼタダだ。
後日、ポーションを常飲していた呑兵衛達が、スギナ茶のおかげで、痛みが無くなったという話を聞いた。
エール飲み過ぎ注意ですよー。
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