また明日 1/2
ホテルの部屋の窓からは、夜の、ネオンに溢れた街並みと、星のない真っ黒な空が見えた。
シャワーを浴びたばかりの体からはほんのりとボディソープの香りがして、髪の先からはまだ、雫が滴っている。
もうすぐ、俺と同じ香りを纏わせて、浴室から彼が出てくる。
そして、俺は彼を置いて、逃げるようにこの部屋から出ていく。
いつから、こんな関係になったんだっけ。
何で、こんな関係にしたんだっけ。
きっかけは全部、俺だった。
浴室から出てきた彼は、ベッドに座ってタバコを吸っている。
その仕草が、たまらなく好きだった。
俺だけのものになればいいと思った。
なるはずがないことは、知っていたのに。
「なぁ」
タバコを吸い終えた彼が、優しい声で俺に話しかける。
勘違いさせるような声。
愛されているような、そんな気がする声。
「なに?」
ベッドに座る彼に近寄り、膝に手を置いて、何を考えているのかわからない瞳を覗き込む。
きっと、俺が考えたくないことを、この瞳の奥で彼はいつも考えているんだろう。
「俺たち…」
その先を、唇で塞ぎ、耳元で俺はいつもの言葉を囁く。
「また明日ね」
そして彼から、この夜から、逃げるように俺はホテルの部屋を出ていく。
追いかけてくるのは、いつも闇だけ。
まとわりつくような、夜の匂いだけだった。
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