第8話 第1回クラン会議:『不壊』スキルと攻略ダンジョン

 クランのメンバーが揃い、ついに活動が始まる。


 昨日は、パーティーメンバー全員が顔を合わせ、親睦を深めた。


 そして、今日からクラン始動日だ。


 いつもの冒険者支部会議場にメンバーが集結しており、和やかな雰囲気が漂っている。


 「それじゃあ第1回クラン会議を始めるぞ」


 俺がそう切り出して今後のスケジュールを発表していく。


 とは言っても、この前奏と相談して決めたことに加えて、公式Twittonを開設して情報発信することも付け足した。


 女性ばかりなので仮にファンができたとしても、アイドルではないので特段日常生活に気をつける必要もないことなどを説明していく。


 「……という訳なんだが、みんなの意見はどうだ?」


 おさらいしておくと……

 ①非戦闘スキル持ち専用掲示板作成

 ②ダンジョン探索(レベル上げ+スキル検証)

 ③動画配信

 ④公式Twittonでの情報発信


 このような感じだ。


 「ちなみに、動画配信についてだが、人気が出てくるともちろん収入が増える。スキルレベルが上がるまで基本的には武器を使うことになるから、お金はあって困らないし、自分達の戦う姿を後から見れるという点においても最適だと思うぞ」


 「な、なるほど。でも見てくれますかね?」


 「それは大丈夫だ。掲示板で今俺たち騒がれているの知らないか?」


 「え!本当ですか!?」


 「ああ。非戦闘スキル限定クランは世界中探しても俺らだけだ。今は絶好のチャンスだよ」


 「……さすが」


 「へ〜私たちが有名人ね〜」


 穂乃果だけ捉え方が違うが、流石若き自分に変身しているだけあって変な感性を持っている。


 「奏。非戦闘スキル専用掲示板の方はどうだ?」


 「ええ。サイト自体は完成しているから、動画配信が軌道に乗ってある程度知名度が上がってからにしようかと思うの」


 確かに、いきなり立ち上げてもこっちも何すればいいかわからないし、他の人も戸惑うだろう。


 奏曰く、専用掲示板に入るには、冒険者カードを受付に提示して非戦闘スキルであることを証明し、掲示板パスワードを受け取って掲示板に参加する仕組みだそうだ。


 結構面倒くさい気もするが、荒らされても嫌なので仕方がないと割り切る。


 「それで、みんなが1番頑張らないといけないダンジョン攻略についてだが……」


 スキルレベルを上げるにはダンジョンに入る必要がある。


 新たにスキルを手に入れるにも、ダンジョンに入ってスキル書を手に入れる必要がある。


 俺は、スキル書を結構な数所有しているが、この子らにあげる気はない。


 自分たちで考え、自分たちで苦労して、達成感を得て、自分たちの手で強くなってほしいと願っているからだ。


 「しかし、手助けなしでは現状厳しいのは承知している。そこで、クラン加入祝いでこれらを贈呈しよう」


 俺はマジックバックから、ある物を取り出した。


 それは……


 「『不壊』スキルが付与されている剣、槍、ナイフだ」


 『不壊』スキルとは、文字通り1度付与すると壊れなくなる冒険者が喉から手が出るほど欲しいスキルだ。


 「美咲もいずれこのスキルが使えるようになるぞ」


 「え、本当ですか!使えれば金儲けが……」


 口に手を当てウフフと笑みを浮かべている美咲を横目にそれぞれ武器を選んでもらう。


 とりあえず、身体の小さい友美はナイフ、美咲が剣、穂乃果が槍を持つことになった。


 「それで、初めてのダンジョンだが、どこがいいだろうか?」


 まだ高校生が2人もいるのであまり遠出もできない。


 転移スキルも複数人転移できるレベルまで辿り着いていないこともあり、移動手段は徒歩か電車だ。


 すると穂乃果が


 「あの〜ここじゃダメなんですか〜?」


 と、言い出した。


 新宿ダンジョンは初心者〜中級者向けとはいえ、この子達は初心者中の初心者だ。しかし家が近いのもまた事実……。


 「う〜ん。1、2層なら大丈夫かな?」


 受付嬢の奏に相談する。


 「そうね。武器も壊れないし、最悪雅人もいるから大丈夫なんじゃない?」


 受付嬢の許可も降りたところで、新宿ダンジョンへ探索することが決定した。


 「それじゃあ、来週の土曜に新宿ダンジョンに潜るってことでいいかな?」


 「「「はーい」」」


 意見もまとまった所で良い時間になった。せっかくなのでみんなで夕食を食べ、解散することにした。


 来週からようやくダンジョン探索。


 5年前は未知なる世界にわくわくしたけど、今回は別の意味でわくわくしている。


 自分の手で他人を強くする。そして世界の常識を変えていこうとする。これからのことが楽しみでその日は珍しく就寝時間が遅くなったことはご愛嬌だ。

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