✪ ストーリーライン ✪

▪ 新車のBMW・650iカブリオレに乗り、チェコ西部の温泉保養地であるカルロヴィ・ヴァリに向かうルカ、テディ、ユーリの三人。

 まだ寒いというのに、せっかくのカブリオレだからオープンにして走ろうと聞かないテディとユーリに呆れるルカ。

 プラハを発つ前に大きなショッピングセンターで買い物をし、ルカはダウンコートやニット帽、マフラーで完璧な防寒対策をする。

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▪ 走行中、いきなりテディがリアシートへ移動。危ないだろと怒るルカに、テディはユーリと一緒にブランケットに包まり、見せつける。

 どうした、運転替わってやろうかとからかうユーリに、ルカはしょうがなく新車の運転席を譲ってやる。

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▪ 予約したホテルに到着。部屋へと案内される途中、階段のほうから走ってきた男に、ルカはエレベーター前でぶつかられる。帽子を深々と被り黒いサングラスをかけた男は謝りもせずに去っていき、ルカはさらに不機嫌さを増す。

 案内された部屋は二階で、ルカは見晴らしのいい最上階の部屋に変えてくれと無理を云う。ちょうどそのとき通りかかったサーラというコンシェルジュはジー・デヴィールのファンらしく、すぐにスイートルームを手配してくれる。

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▪ ダウンコートをベッドの上に脱ぎ棄て、ルカたち三人は早速カルロヴィ・ヴァリの街を散策に。コロナーダと呼ばれる飲泉所を巡り、スパ・ワッフルなどを買って食べながらメインの通りを往復する。

 夕食にはまだ早い時刻にホテルに戻った三人は、ホテル内のスパへ行くことに。

 部屋を出る前に荷物や上着を片付けようと、テディにコートを取ってくれと頼んだルカ。テディはダウンコートを抱えたままじっとベッドを見つめ、どこか怪我でもしたかと尋ねる。してないと答え、なんのことかと聞き返すルカに、テディはなんだか乾いた血のように見える、と、ベッドのシーツについた赤茶色の汚れを指さした。

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▪ サーラの心遣いにより、スパは三人の貸し切りに。子供のように泳いだり潜ったりして燥ぐ三人。

 そして夕食。なんだかレストラン内がざわざわしているように感じ、自分たちがいることに気づかれているのか、それともスパが使えなかったと不満に思われているのかと気を揉む三人。

 部屋に戻ると、程無く刑事が訪ねてきた。警察がなんの用だろうと驚くルカ。なにかあったのかと尋ねると、その刑事は「殺しだよ」と答える。

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▪ ホテル内で殺人事件があったと知って驚愕する三人。自分たちの行動を訊かれ、観光して戻ってからスパへ行き、レストランで食事をして戻ったばかりだと説明する。

 怪しい奴を見なかったと訊かれ、いや見なかったと答えるルカをちらりと見るテディ。ボロフスキーと名乗ったその刑事は、なにか思いだしたことがあったら連絡をくれとメモを渡して去る。

 どうしてぶつかった男のことを云わなかったのかと尋ねるテディ。ルカは、忘れていた、面倒臭いからいいじゃないかと云う。呆れるテディはユーリに云ったほうがよくないかと話を振るが、ユーリも警察は嫌いだと宣う始末。

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▪ まだ宵の口だからどこかへ飲みに行こうとユーリが提案。外は寒いし、またコートを出すのが面倒だからホテル内のバーでいいとルカが云う。すると、テディがなにかに気がついたようにバスルームへ。

 濡らしたタオルを手に、ワードローブからルカの黒いダウンコートを取りだしたテディ。それをベッドに持っていき着いたときにルカが置いた状態を再現し、シーツの汚れと重なる袖のあたりを湿らせたタオルで拭う。

 ルカにぶつかったあの男、やっぱり殺人犯だよ、とテディが掲げてみせたタオルには、血痕らしきあかい染みがついていた。

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▪ バーでベヘロフカとヴェプショヴェー・コレノやタタラークを楽しむ三人。テディは名探偵よろしく推論を披露*し、ルカも納得はしたものの、ボロフスキーに連絡をしようとまではしない。むすっと不機嫌になったテディが飲み潰れて眠ってしまうと、ルカは今から警察なんて来たら眠れなくなる、ボロフスキーには明日の朝連絡しようとユーリに話す。

 僅かではあるが、血痕かもしれないものが付着したシーツで眠るわけにもいかず、その晩はせっかく変更してもらったスイートルームではなく、ユーリの部屋で眠ることに。

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▪ そして翌日。朝食を摂ったあと、部屋で帰る準備をしていた三人。もうボロフスキーに連絡はしたのかとユーリに訊かれ、あの刑事じゃなくてもいいよな、と云うルカ。ボロフスキーにもらった連絡先のメモを失くしたと聞き、呆れるユーリとテディ。

 知らせるだけならホテル内にいる警官でもいいだろうと、部屋を出ようとドアを開けたそのとき。怪しい人影が隠れたように感じてテディが立ち止まる。ファンが隠れて待ち構えているのかもと、ルカは部屋の奥へ戻り、フロントをコールする。

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▪ サーラの手回しで非常階段を下り、裏口へと向かうことに。

 二階まで下りてきたとき、事件が起こったのは二階だったことをテディが確認する。怪訝な表情のサーラに、ルカは自分はどうやら事件の証人らしいのだと、簡単に事情を説明する。

 非常口から中へ入り、現場の前にいた警官にもぶつかった男と血痕について話をし、ダウンコートを預けることに。

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▪ 帰り道。一杯だけ飲みたいとユーリが云いだし、クルショヴィツェというビールの醸造所があるところで休憩することに。テディもめずらしく黒ビールと、早めのランチには多すぎる注文をするが、案の定半分も飲めずに残してしまう。しょうがないなとテディのビアマグを空け、さらにおかわりも注文して残したポテトなども平らげるユーリ。

 無事にプラハに着き、ユーリを降ろしてからルカとテディは帰宅した。

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▪ 帰ってくるなり、荷物の片付けもせずに事件のことを気にしてタブレットを弄り始めるテディに、ルカは不満を爆発させる。ユーリに対してはいろいろ気遣いができるのに、自分にはどうしてそれがないのかとルカ。テディは、ルカは家族だから気を遣わないでいいのだと思ってる、ユーリとは違う、と答える。

 懐かしい台詞とともに抱きしめあい、寝室に傾れ込むふたり。リビングのテーブルに置いたスマートフォンが鳴っていたが、もうふたりには聞こえなかった。

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 カルロヴィ・ヴァリの殺人 [Rewrite 「K」 edition]

https://kakuyomu.jp/works/16816410413929863220

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  ⚠  以下、ネタバレ注意!  ⚠

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▪ 真っ昼間から愛しあって少し眠りこんだあと。テディが起きだすと、ルカはPCの前にいた。大画面のTVは音を絞り、ニュースがつけられている。どっちかにしたらとテディが云うと、おまえが気にしていたからとルカ。

 ホテルであった事件のニュースを探している画面を、テディもルカの後ろから覗きこむ。ようやくみつけた記事には『ホテル殺人で現職警察官逮捕』とあった。

 警察官が犯人という見出しに驚いているところへ、ユーリから電話が。TVのニュースをつけろと云われチャンネルを変えると、その画面にはボロフスキー刑事の顔が映しだされていた。

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▪ あの刑事が実は犯人だったと知って驚くルカ。しかし、テディはルカ以上に真っ青になっていた。

 玄関のブザーが鳴り、インターコムのモニターを視るとロニーの顔が。ドアを開けるとロニーは無事でよかったと云い、一緒に来た制服姿の警官とスーツを着た刑事は、証人は無事などとどこかへ報告する。どういうことなのかと途惑うルカに、テディはもしルカが面倒がらずにボロフスキーに話をしていたら、口封じをされていたかもと云う。

 まさかと首を振るルカに頷いてみせ、刑事は詳しい説明を始める。

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▪ 警察が帰ったあと。ニュースにボロフスキーの警官時代の写真が映しだされ、ルカはその顔を見てはっとする。顎のあたりには、特徴的な大きな黒痣ほくろがあった。エレベーター前でぶつかった男にも、あんな黒痣があった。そう話すルカに、テディはボロフスキーは同じ場所に絆創膏を貼っていたと云う。

 ルカは絆創膏には気づいていなかったが、もしもそれを怪しんだ目で見たり、なにも気づかないままダウンコートの血痕のことを話したりしていたら――どこかに連れていかれて殺されたりしたんじゃないかと思う、というテディの言葉に、ルカはようやく危なかったのだという事実を実感し、へたへたと床に坐りこんだのだった。





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❐ カルロヴィ・ヴァリの殺人 [Rewrite 「K」 edition] ≫ https://kakuyomu.jp/works/16816410413929863220

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※ テディは古典ミステリーの愛読者。

〈THE LAST TIME〉では、テディの読んでいる、または購入したペイパーバックのタイトルがいくつか登場する。

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