✪ ストーリーライン ✪

【TR-01 - Come Together】


▪ 舞台はチェコ、プラハ。ホスポダと呼ばれるパブで働いているユーリは、ランチタイムも終わる頃にやってきた二人組の客に興味を惹かれる。

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▪ ふたりのうち、くすんだ金髪を無雑作に跳ねさせた華奢なほうの顔は見えなかったが、肩のあたりまで伸ばしたソフトブラウンの髪と、意志の強そうな太めの眉が印象的な男はとてもハンサムな好青年だった。

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▪ その好青年が歌を口遊んでいるのを耳にし、ユーリはオーダーを間違ったふりをして近づくと、バンドで歌う気はないかと声をかける*¹。





【TR-02 - The Kids are Alright [take 1]】


▪ レノン・ウォールで寄り道をしたあと、少し遅れてバンドの練習場所にやってきたドリュー。一斉にこっちを向いた仲間の顔に、ドリューはバンドを結成したばかりの頃のことを思いだす。

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▪ バンドが練習場所に使用しているその空き店舗は、ドリューの間借りしている建物の半地下にあった。ユーリがバンドを始めると云ったとき、ドリューの口利きで使わせてもらうことになったそこの家主、オルガ婆さんはぺらぺらと流れるように罵詈雑言を捲したてる人だった。

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▪ いくら云っても吸い殻や缶をその辺に散らかしたままのルネは、しょっちゅうオルガを怒らせていた。オルガが箒を振りかざしてルネを追いかけまわすのを、ドリューやユーリは必死に止める。

 掃除やちょっとした物の修理など、オルガはバンドの皆にいろいろ用を言い付ける。バンドは格安で練習場所を借りているため文句も云えず、ちょくちょく手を貸す。

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▪ あるとき、キーボードを担当しているルネが遊びで〝 Highway Starハイウェイ スター 〟を弾いていると、そこへ遅れてきたルカが現れた。ルカはちょっと替わってと云い、キーボードソロを弾き熟してみせる。皆は驚き感心していたが、ルネは臍を曲げ、それ以来キーボードには触りもしなくなる。

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▪ ベースを担当することになったテディは黙々と練習に励み、着々と上達していた。そして穴が空いてしまったキーボードは空席のまま、ルカが来年の八月くらいに鍵盤弾きキーボーディストが来るかも、とジェシのことを話す。

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▪ だが、バンドの演奏スキルはなかなか上がらなかった。練習方法に問題があると考えたドリューは、メンバーたちにある提案をする。

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【TR-03 - The Kids are Alright [take 2]】


▪ 演奏スキルがばらばらな、まだ始めたばかりのバンドである自分たちは、先ずもっと簡単な曲から練習して呼吸を合わせていくべきだ。そうドリューが提案し、チャック・ベリーやバディ・ホリーの名前を挙げると、ルカとテディが息の合ったテンポの良い会話で意外な音楽知識を披露。皆、呆気にとられながらも感心し、レパートリーに五〇年代、六〇年代のロックンロールやR&Bリズム アンド ブルース、オールディーズなどの曲を増やしていくことに。

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▪ ガキ向けかじじい向けかわからないもんなんかと莫迦にしていたルネも、ドリューに巧く乗せられリードギターを担当することになると、真面目に練習に参加するようになる。

 そしてひたすら練習を重ね、演奏力を上げてレパートリーも広く増やしたバンドは、ナイトクラブでオーディションを受ける。見事合格し、週に二度クラブで演奏できることに。

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▪ お祝いだと買いこんできた酒やつまみを楽しみながら、契約書に書くバンド名をまだ決めていないことに気づく。あれやこれやと候補がでるが、どれもピンとこず、とりあえず『ハニーシロップ&ヴァニラクリームトライフル』というよくわからないものにいったん決まる。

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▪ が、後日、ルカが好きなバンドの曲名だと云って『ジー・デヴィールZee Deveel』というバンド名を提案。特徴的で響きもいいことから、全員一致で採用することに。





【TR-04 - Elephant Stone [take 1]】


▪ プロデビューしたはいいがまったく売れていないバンド、ジー・デヴィール。プロモーションのためロンドンにやってきたが、なかなか思ったように事が運ばずマンチェスターへ。

 宿泊しているホテルで夢に魘され、目を覚ましたテディ。辺りを散歩してビールでも買って戻ろうとホテルを出ると、先に出ていたユーリに声をかけられる。

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▪ 飲みに行くのなら付き合うと云うユーリと一緒に、テディはノーザンクォーターへ向かう。

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▪ ほとんどの店が早仕舞いしているなか、やっと営業しているクラブをみつけ、ふたりはその店でビールとカクテルを注文。そこへぺらぺらと調子のいい男が話しかけてくる。男は麻薬の売人だった。

 滅多にない上物だとヘロインを勧めてくる男を無視し、ユーリは帰ろうとしたが、ちょっと試してみたいと云うテディに、内心で渋りながらも流される。

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【TR-05 - Elephant Stone [take 2]】


▪ 買ったヘロインをトイレで鼻から吸いこむふたり。ホールに戻ろうとしたタイミングで立っていられないほど気分が悪くなり、テディが嘔吐。吐き気が治まらず、ユーリはテディの腕を引き、またトイレに戻る。

 ユーリは頭をすっきりさせようと冷たい水で顔を洗う。そのとき、鏡の中に過剰摂取オーヴァードーズで死んだルネの幻覚を見る。

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▪ 外の空気を吸わなければと、ユーリはテディの腕を掴んで外に出る。

 階段に腰掛けて水を飲み、風にあたりながら、ユーリはルネのことを思いだす。テディのふとした一言から、テディも自分やルネと同じように、人に云えないなにかを抱えているのだと察するユーリ。

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▪ 翌朝。皆で朝食を摂りながら、ルカにどこへ行っていたのかと訊かれ、動じることもなく適当に答えるテディ。意外と嘘が巧いなと、ユーリは笑みを浮かべる*²。





【TR-06 - But Not for Me】


▪ ブリットアワード*³のあと。ロンドン、メイフェアの五つ星ホテルに宿泊していたバンドのメンバーたちはそれぞれ思い思いに過ごしていた。

 ひとり、つまらなそうにホテル内のバーで飲んでいるロニー。ふと、仕事仕事で四年以上も恋愛をしていないことに気づいて、自棄気味に高いウィスキーをロックで飲み干す。

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▪ すると隣に、スーツ姿もパーフェクトな超弩級にハンサムな男が坐り、声をかけてきた。思わずこのチャンスを逃す手はないと気合を入れるロニー。

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▪ 聞き上手な男についつい身の上話をするロニー。誰にも云われたことのない、労をねぎらう言葉に、つい目頭が熱くなる。ロニーは感激するばかりで、バーで偶々会った、少し話しただけの男が何故そこまで云えるのかという不自然さに気づかない。

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▪ そうして何杯めかを空けたとき。そろそろ酔ったふりをしてどっちかの部屋に……! と、を実行しようと、ロニーは男に甘える。が、そのとき男のスマートフォンに着信が。

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▪ 画面に『 My Luv愛しい人 』とあるのを見て、この男前を落とすぞという気合もほろ酔い気分も一気に冷めてしまうロニー。仕事が恋人でいいわと開き直り、ロニーは酔ったふりも忘れ、確かな足取りでひとり部屋に戻る。

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▪ ロニーが去ったあと。バーテンダーは男を「ブランデンブルクさま」と呼び、どうするつもりかと思いましたと話しかける。

 そんなことをするつもりならこんな常宿は選ばないさ、と答え、クリスティアン*⁴はにやりと笑みを浮かべた。





【TR-07 - There's a Kind of Hush】


▪ ウェブ担当のエリーとメッセンジャーで話をしているジェシ。子供の頃からカメラが趣味で今もメンバーの写真をよく撮っているジェシは、バンドのオフィシャルサイトに載せるのに、なにかいい写真がないかと頼まれる。

 ジェシは最近のものがいいだろうと思い、そう云うが、エリーは学生の頃に撮った写真があると聞いて、それを全部見たいと云いだす。

  ⬇

▪ 全部というのがジェシの撮った写真全部、ではなく、ルカとテディの学生の頃の写真全部、という意味だと察したジェシは、エリーがどちらかに恋しているのだと気づく。

 しかし、ふたりの後輩でハウスも同じだったジェシは、ルカとテディが離れることはないと知っている。望みのない恋だと同情したジェシは、せめて写真だけでも見せてあげたいと、エリーを食事に誘う。

  ⬇

▪ ハードロックカフェにラップトップを持ちこみ、写真を見せながら想い出話を語るジェシ。エリーは、楽しそうに笑いあうふたりの写真を見て、綺麗だと涙を流す。

  ⬇

▪ 店を出て、なんとなくふたりでぶらぶらと歩く。もっと昔の話を聞かせてというエリーに、ジェシは微笑ましい話ばかりじゃないし、イメージが壊れるかもと答える。わかってる、というエリーが好きだったのは、実はテディのほうだった。

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▪ ふたりは車に乗り、夜景を見に行くことに。そしてジェシは、隣に坐ったエリーの横顔の可憐さに、初めて気づく。





【TR-08 - You'd Be So Nice to Come Home To [take 1]】


▪ ツアーも終わり、テディはオフを利用してバーミンガムの祖父の屋敷に来ていた。が、祖父のアレックスは病床に伏していて、テディは部屋から出てきた医師が「どうしようもない、あれはなおせない」と話しているのを聞いてしまう。

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▪ すっかり気が弱ってしまっているアレックスは、ベッドに横たわったまま、まるで懺悔のように侘びや後悔の言葉ばかりを口にする。

 居た堪れず、テディは煙草を口実に部屋を出る。ところが数日しか過ごしたことがない、改築を重ね入り組んだ屋敷の廊下で、テディは迷ってしまう。

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▪ 執事のグレアムに声をかけられ、あちらですと案内されるとき初めてグレアムの笑顔を見て、テディは自分のことを好く思ってなかったのでは? と訊く。

 グレアムは、長い話になりますと云い、廊下にある椅子をテディに勧め、隣に腰掛け話し始める。

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  ⬇

【TR-09 - You'd Be So Nice to Come Home To [take 2]】


▪ 母と父のこと、母と祖父の関係について話し、母を喪ったばかりのテディに冷たい態度だったことを詫びるグレアム*⁵。グレアムの本心を聞き、テディは納得して一緒にテラスへと向かう。

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▪ テラスでお茶を飲んでいた医師に、話をしなければと待っていたと云われ、テディはアレックスの余命のことだと思い覚悟をする。

 だがそれは誤解で、アレックスはただの風邪と夏バテだった。「なおらない」のは、ちょっと具合が悪くなるたびに気が弱って、昔の反省ばかりをする厄介な癖の話だった。

 体調を崩すたびにああなるのかと大笑いするテディに、「被害者の会へようこそ」と紅茶を差しだすグレアム。

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▪ アレックスも復調したある日。テディは嘗て母が歌っていたというホテルのラウンジに、アレックスとグレアムと一緒に来ていた。バーミンガムで人気のカレー料理を注文し、バンドの演奏を聴く三人。

  ⬇

▪ 途中で中座するテディ。再び現れたのは、バンドが捌けたあとのステージだった。しかも、テディだけではなくジー・デヴィールの全員が揃い、客席がざわめく。

 テディはジョークを雑えての挨拶のあと、リードヴォーカルをとって演奏を始める。

 ジャズを歌うテディに在りし日の娘の姿を重ね、アレックスは涙しながらバンドに拍手を送った。





【TR-10 - Sittin' on a Fence [take 1]】


▪ ジー・デヴィールのドキュメンタリー映画を制作するため、ツアーに同行しバックステージ含む貴重な映像を撮りためたニール。マンチェスターの自宅に戻り、映像の編集に取りかかるところだったニールは、食事に入ったパブで嘗ての映画仲間、ジェイクと久しぶりに会う。

  ⬇

▪ ぜひ手伝わせてくれと頼まれ、ニールは映像編集担当だったジェイクの手を借りることに。

 作業を開始する前にニールは、実際に公開するバージョンと、とても公開などできない問題のあるシーンを含んだ〈アンカットバージョン〉のふたとおりを作成するつもりだとジェイクに話す。

  ⬇

▪ 編集の終わったディスクを二枚持ち、ニールはプラハへと飛ぶ。

 ロニーや主要スタッフとバンドメンバーだけの試写。〈アンカットバージョン〉のショッキングな内容に、皆しんとしてしまう。

 ずっと秘密にしていたことを自ら話しているシーンを視て、テディは動揺し退席、ニールは激怒したユーリに殴られる。そのため、公開できるバージョンもあるということや、自分の考えについても話しそびれてしまい、試写は散々な結果に。

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  ⬇

【TR-11 - Sittin' on a Fence [take 2]】


▪ ロニーと連絡が取れないうちに、試写に持っていったディスクが見当たらなくなる。同時に姿を見せなくなったジェイクの仕業だと思い、ニールはジェイクを捜すが行方はわからず、連絡も取れない。

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▪ そして恐れていたことが起こった。動画サイトに〈アンカットバージョン〉の映像がアップされた。瞬く間に動画の再生回数は増え、ジー・デヴィールのスキャンダラスなニュースが世界中を駆け巡る*⁶。

 元妻、エマから電話がかかってきて、ニールはロンドンで会う約束をする。

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  ⬇

【TR-12 - Sittin' on a Fence [take 3]】


▪ 金を貸してくれと頼むニールに、エマはまた一緒に暮らそうと云う。だがニールは頑なに首を縦に振らない。実はニールは、一本だけでいいから映画をヒットさせて富と名声を手にし、ファンション業界で成功しているエマの隣に堂々と肩を並べる存在になってから夫婦に戻りたかったのだ。

 好きなことをしていていい、ただ傍にいてほしいと泣くエマに、ニールは背を向け立ち去る。

  ⬇

▪ 煙草を買い、駅に向かって歩いていると偶然ジェイクを見かける。追いかけ、捕まえて話をするが、ジェイクは動画をアップしたのは自分ではないと云う。

 ジェイクは、家賃を払うためにニールからもらった金は女房に持って逃げられ、女房と子供を連れ戻そうにも家賃を払わなきゃ家がなくなると、焦ってディスクを売ったと云った。しかし大家は滞納分だけ受け取って結局家は追いだされ、動画をアップした奴もアカウントが停止され、儲かってなどいないだろうと云う。

 ニールは、こんな莫迦莫迦しいことのために歴史に残るはずの自分の作品が踏みにじられたのかと、怒りに震える。





【TR-13 - Dead Flowers】


▪ ブリットアワード*³のあと。ルネの墓に受賞の報告にやってきたロニーとバンドの一行。

 ロニーはふと足許に、かさかさとコラーチの入った透明な袋をみつける。家族連れで来た子供が落としたのだろうと気にも留めなかったが、テディはそれをルネのためのものだと云う。

 皆、どういう意味かまったくわからない。が、ラッピングするようにコラーチをこんなふうにひとつひとつ包む店などないというテディの言葉に、ドリューがやっと持ってきた人物に思い至る。

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▪ 何年かぶりにオルガに会いにきた五人。部屋にあるものも家賃も放ったらかしであったことから、ドリューも皆も、もう処分されてしまっているだろうと話す。が、ちょうどそこへ現れたオルガに声をかけられる。

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▪ グラーシュがあるから食べていけというオルガ。しみじみとルネの想い出話を聞きながら、ユーリは昔のままのその様子に、懐かしそうに目を細める。





【TR-14 - Start Me Up [Hidden track]】


▪ テディを挟み、ユーリも交えてベッドに横になっているルカ。テディの寝顔を見つめながら、なんだか妙な気分でユーリと話をしていると、ユーリはルカにとんでもない指摘をする。

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▪ 淡泊すぎると云われ、つい大きな声で云い返すルカ。テディが身動ぎ、ルカは小声でそんなに淡泊かと真面目に尋ねる。もうそうならば問題だと、ルカはユーリが帰ったあと、スキルアップを目指そうと決意する。

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▪ だが、そっと頬に口吻けようとすると、テディが寝ぼけた様子でユーリの名を呼んだ。すっかり臍を曲げ、機嫌を急降下させたルカに、テディはわけがわからず、また喧嘩になるのであった。





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❐ THE DEVIL [Extra edition] ≫ https://kakuyomu.jp/works/1177354054922467423

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※1〈グッバイ、イエロー・ブリック・ロード〉のラストシーンと重なっている。

※2〈THE DEVIL [Remastered]〉、《TR-04 - Dancing in the Street》の一部のシーンと重なっている。

※3〈THE DEVIL [Remastered]〉、《Outro - I Guess That's Why They Call It the Blues》。

※4 ルカの父、クリスティアンは〈THE LAST TIME〉、〈STARTING OVER〉にも登場。

※5 グレアムがテディに対しどんな態度をとっていたのかは〈THE LAST TIME〉、《§ Year 9 / Summer Term 「ターゲット」》のなかで話題にされている。

※6〈THE DEVIL [Remastered]〉、《TR-22 - Where Have All The Good Times Gone》。

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